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「努力が嫌いだった」尾藤正人が4度のCTO就任に至るまで【ばんくし/聴くエンジニアtype Vol.60】

働き方

エンジニアtypeが運営する音声コンテンツ『聴くエンジニアtype』の内容を書き起こし! さまざまな領域で活躍するエンジニアやCTO、テクノロジーに関わる人々へのインタビューを通じて、エンジニアとして成長していくための秘訣を探っていきます。
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今回から全4回にわたって登場するゲストは、物流プラットフォームを開発・運営するオープンロジで執行役員CTOとして活躍している尾藤正人さん。

ウノウ、UUUM、Repro、そしてオープンロジと4回ものCTO経験を持つ尾藤さんだが、学生時代は「そこそこの社会人として一生を過ごそう」と考えていたそう。その人生設計が変わったきっかけとは?

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株式会社オープンロジ
執行役員CTO
尾藤正人さん(@bto

大学在学中にVine Linux SPARC版を開発。卒業後IPA未踏ユースソフトウェアに採択。 ウノウ(Zynga Japan)CTOを勤めた後、UUUMにジョインしCTOとしてIPOを牽引。Reproの執行役員CTOを経て、オープンロジ執行役員CTOに就任

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【MC】
エムスリー株式会社 VPoE
河合俊典(ばんくし)さん(@vaaaaanquish

Sansan株式会社、Yahoo! JAPAN、エムスリー株式会社の機械学習エンジニア、チームリーダーの経験を経てCADDiにジョイン。AI LabにてTech Leadとしてチーム立ち上げ、マネジメント、MLOpsやチームの環境整備、プロダクト開発を行う。2023年5月よりエムスリー株式会社3代目VPoEに就任。業務の傍ら、趣味開発チームBolder’sの企画、運営、開発者としての参加や、XGBoostやLightGBMなど機械学習関連OSSのRust wrapperメンテナ等の活動を行っている

オープンロジ入社のきっかけは「面白そう」という直感

ばんくし:聴くエンジニアtype、今回は記念すべき60回目です! 尾藤さんにゲストに来ていただきました。

尾藤:オープンロジで執行役員CTOをしている尾藤と申します。オープンロジは物流テック系の会社の中でも珍しい、EC事業者、倉庫・配送キャリア事業者に向けた物流プラットフォームを提供している会社です。特長は、75拠点ある倉庫たちをネットワーク化していること。僕らが直接倉庫を保有しているわけではなく、倉庫業者さんとEC事業者さんの間に立って物流を最適化するプロダクトを提供しています。

従来EC事業者は、倉庫のキャパがMAXになった時、新たに倉庫を探す必要があったり、拠点ごとに異なるシステムで運用しなければならなかったりと課題がありました。

オープンロジなら別拠点でも共通のシステムが使えるので、既存のサービスと比較すると非常に拡張性が高いのが特徴です。いわば「物流版AWS」ですね。

ばんくし:物流版AWS、ネーミングがいいですね。尾藤さんはどういった経緯でオープンロジのCTOになったのですか?

尾藤:何社かお話をいただいた中で、「物流版AWS」というのが面白いと思って入社を決めました。僕、正直物流の世界のことをそれまでまったく知らなかったんですよ。でも、話を聞いてみたらこれまでにないサービスで、このビジネスモデルで日本最大の物流ネットワークを作れたら相当大きくなるぞ、と直感で思いました。

ネットワークのイメージ

ばんくし:尾藤さんから直感というワードが出てくるなんて、意外です。

尾藤:もちろん計画を立てることも大切ですが、蓋然性ってコントロールするのが難しいところもあるじゃないですか。実際にやってみないと分からない、みたいな。スタートアップってそこが一番面白い部分なので、ある程度のチャレンジ精神は必要ですよね。

でも、目標は高い方が良いと思う一方で、計画は着実に行う必要がある。でないと、成果が出ないですから。短期的なロジックはしっかり組んで、着実に積み重ねていく。その先にある目標はある程度直感や蓋然性が低くても良いんじゃないかな。

ばんくし:「目標は高く、計画は着実に」なんですね。

尾藤:逆にそれ以外で大きく成功することってあるんですかね。確実にできることを目標に掲げても、つまらないじゃないですか。簡単にできないことにチャレンジするから面白い。ビジネスにおいてそれが良いことか悪いことかというのは価値観によって違うとは思いますが、少なくとも僕はそう考えています。

コンピューターと出会って変わった「最小の努力で最大の結果を得る」というモットー

ばんくし:「今はまだできないことをやりたい」というのが尾藤さんのエンジンになっているのですね。

尾藤:つまらないのが一番嫌なので。刺激が欲しいですね。

ばんくし:実は私と尾藤さんは同郷で、新居浜高専出身の先輩・後輩なんですよね。昔からそういった性格だったのですか?

尾藤:そこに関しては微妙ですね。もともと好奇心は強くて、いろいろなことを知りたいという気持ちは強い方でした。ただ、努力が嫌いだったんです。

ばんくし:ほう……聴くエンジニアtypeのゲストには珍しいタイプですね。

尾藤:例えばテストで70点、80点を取るのって少し頑張ればできると思うんですよ。でも90点、100点を取ろうとするとかなりの努力が必要になりますよね。そう考えると、100点を目指す人生ってすごく効率が悪いと感じてしまって。だったら70点、80点を目指した方が努力の費用対効果が高いなと思っていたんです。

僕が高専に入った時のモットーは「最小の努力で最大の結果を得ること」でした。

ばんくし:その考えはどういう経緯で変わったのですか?

尾藤:コンピューターに出会ったことが一番大きいかもしれません。

僕が高専4年生の時に、新居浜高専に初めてインターネットが接続されたんです。ブラウザがNetscapeとかの時代にインターネットを使い始めて、ものすごく面白いと思いました。先生にインターネットのことを聞いたら、インターネットサーバーがUNIXで動いていることを教えてもらって、「自分のPCにインストールしてみな」って、FreeBSDのディスクをくれたんです。言われた通りインストールしたら、コンピューターの面白さにとりつかれてしまいました。

僕の人生設計では、高専を卒業したらそこそこの社会人として一生を過ごすという計画だったんですけど……。「もっとコンピューターの勉強がしたい」と思って、大学に編入することを決めました。

コンピューターに熱中するイメージ

ばんくし:大学受験をしたくないという理由で高専に入ったのに、ですね。

尾藤:そう。コンピューターに出会って、僕の人生が狂ってしまいました

ばんくし:狂ってはないですよ(笑)。むしろ良い方向に進んだと思います。ただ、それまでは「最小の努力で」がモットーだった尾藤さんにとってはしんどいこともあったのではないですか?

尾藤:エンジニア時代は辛いと思ったことはあんまり無かったんですよね。というのも、勉強というより、趣味を楽しんでいる感覚に近くて。徹夜で開発して体力的にしんどいみたいなのはありましたけど。

ばんくし:そもそもコンピューターの何がそこまで面白いと感じたのですか?

尾藤オープンなところですね。当時のPCってMicrosoftが提供していたMS-DOSというOSが使われているのが一般的だったのですが、これは商用だからソースコードが公開されていなかったんです。MS-DOSはメモリ領域が1MBしか使えなくて、もっと領域を広げたい場合は拡張するデバイスドライバーを使う必要がありました。

対して、FreeBSDやLINUXはソースコードが無料で全部公開されていて、メモリ領域も1MBより大きかった。有料のOSよりも無料のOSのほうが機能が高いということが不思議で、オープンソースの世界ってすごいなと思ったんです。そこからハマっていった感じですね。

ばんくし:世界観にわくわくしたんですね。

尾藤:そうですね。あとはソースコードが全て見られるという点も魅力でした。当時の僕はそこまで深く理解できてはいなかったと思うのですが、仕組みがちゃんと理解できる環境というのが面白くて。

ばんくし:なるほど。尾藤さんにもともと備わっていた好奇心も刺激されたのですね。

尾藤:僕の行動原理は好奇心からきていることが多いですから。オープンロジに入社した理由の一つも、「物流の世界をもっと知りたい」という好奇心からです。実際に入社してみて、本当に知らないことばかりで大変ですが、新しい発見があって毎日すごく面白いです。

次回も尾藤さんのゲスト回をお届けします。お楽しみに!

文/赤池沙希

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