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「優れたPMは社外での経験から生まれる」FiNC友成琢氏の育成哲学【及川卓也のプロダクトマネジャー探訪】

働き方

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    Increments株式会社 プロダクトマネージャ
    及川卓也氏

    早稲田大学理工学部を卒業後、日本DECに就職。営業サポート、ソフトウエア開発、研究開発に従事し、1997年からはマイクロソフトでWindows製品の開発に携わる。2006年以降は、GoogleにてWeb検索のプロダクトマネジメントやChromeのエンジニアリングマネジメントなどを行う。2015年11月、技術情報共有サービス『Qiita』などを運営するIncrementsに転職して現職に

    【PMの業務範囲は?】 「監督」ではなく「キャプテン」としてチームを率いること

    FiNC友成琢氏とIncrements及川卓也氏

    及川 まずですが、FiNCではPMとディレクターが明確に分かれているんですよね?この2つはどう分かれているんでしょう?

    友成 ディレクターとPMの業務範囲や職責の違いは、幅の違いかなと思っています。

    及川 「幅が違う」?

    友成 はい。例えば、ハンドルやタイヤ、エンジンなどが組み合わさった後の車全体の品質に責任を持つのがPMで、組み合わせる前のハンドルなどの個別の機能に責任を持つのがディレクターです。

    及川 なるほど。そういえばFiNCではPMにあたる職種の事を「PD(=プロダクト・ディベロップメント)」と呼んでいますよね?「マネジメント」という言葉を使わないのはどうしてですか?

    友成 「マネジメント」というとどうしても「管理」のイメージが強いですよね。私がマネジメントより現場重視だったからということもあるかもしれませんが、自分自身が「管理する人」なのではなく、「作っている人」という感覚は持っていたいんです。だから、開発の現場では「監督」ではなくて「キャプテン」の立場でいることを心掛けていますし、PM候補者たちにもそう伝えているんですよ。

    及川 いいじゃないですか! 全体の指揮を執る立場でありながら、軸足はあくまでプレイヤーに置いてということですね?

    友成 ええ。一昔前なら、マネジメントはマネジメント、プレイヤーはプレイヤーでも良かったのかもしれません。でも、今の時代は指示を出しながらもいざという時にスピーディーに対応しなくてはならない場面があります。誰かに指示をしていたのでは遅すぎる場面もあります。だからこそ自らもプレーする「キャプテン」であるべきだと思うんですよね。

    【PMに向いている人とは?】それぞれの専門分野を活かしつつ、新しいことを吸収する“情熱”を持つ人材

    及川 FiNCで今、PM候補として育成中の人たちのバックグラウンドって、かなり違いますか?

    友成 はい。かなりバラエティに富んでいます。もちろんエンジニア出身のスタッフもいますが、栄養士、広告プランナー、研究者出身という人もいます。

    及川 それは興味深いですね、かなりバックグラウンドが多彩。

    FiNC友成琢氏

    友成 ええ。ただ、そんなに出身は関係ないと思っています。栄養士でもコーディングできてもいいと思いますし、営業ができたっていい。私はこのかたちを勝手に「3.0」と呼んでいるんです。専門の仕事だけをするのが「1.0」、専門職とシステムの融合が「2.0」、そしてあらゆる業種の人がエンジニアリングやビジネスなどのあらゆることを身に付けるのが「3.0」のフェーズじゃないかと。

    及川 なるほど。とはいえ、例えば栄養士の方が全く畑違いのコーディングスキルを学んでいくのは簡単じゃないと思うんですが。

    友成 そうですね。栄養士がコーディングできることがPMの要件ということではないです。DeNA時代によく“プロデューサーは育成できない”という話をしていたんです。

    及川 それはなぜでしょう?

    友成 プロデューサー(PM)が示すべきは、「こうであるべき」、「こうしたい」という情熱に基づいた方向性だと思うんですよね。ですから、情熱や興味をもつ分野が全くないとダメです。素養のある人でもそれぞれが興味や関心を持つ分野を大切にして、その周辺領域から学ぶことを広げていくように指導しています。先ほどの栄養士×コーディングは極端な例ですね。ある程度の資質を持っている人が自分で育つというイメージです。

    及川 なるほど。そこであえて、PMを目指すにあたって必要なことは?

    友成 1つ言えるのは、聞くこと、質問することですね。PMに向いている人は、サービスやプロダクトへの責任感を強く持っている人だと思います。目指すサービスやプロダクト実現のために、ここは妥協できない、譲れないという思いがあれば、分からないことをどんどん聞いたり、質問するべきなんですよね。

    Increments及川卓也氏

    及川 それは私も全くの同意見! 知ったかぶりのまま進むのが一番いけない。情熱があればこそ、生半可な知識では判断ができず、エンジニアにGOサインが出せないはずなんですよね。これらの考え方は野村證券、DeNAなどの職歴から身に付いてきたことなんですか?

    友成 そうですね、野村だけではないですが、過去をそれぞれ振り返ると、野村證券ではほとんど外部のベンダーなどへの委託が中心でした。一方、DeNAでは現場で全て開発を進めていたんですが、共通するのは質問することで情報が得られるということ。いろんなことを吸収して自分のものにしていった人ほど“デキる”ようになっていきました。

    【PMの仕事術】新しい出会いから、コミュニケーション力と発想力を磨く

    及川 毎回、PMの立場にある方の活用ツールや発想法を伺っているんですが、友成さんの場合は?

    友成 私は“share by default”なものが好きなので、ステータス管理や受け渡しにはJIRA、プロトタイプ確認にはPrott、全体UIの確認にはCacoo、会社全体では、タスク管理ツールとしてRedmineなどを使っています。また、DeNA在籍時からになりますけど、GitHubも使っていますね。

    FiNC友成琢氏とIncrements及川卓也氏

    及川 30分間ひたすら思いついたことを紙に書き出す時間を持つなんてユニークな発想法をしているPMの方がいましたが、友成さんの発想法は?

    友成 よく若いスタッフに言うのは「外へ行け」ということと、いわゆるゲームで言う所の「嫁レビュー」(奥さんなど、技術に詳しくない人に感想を聞くこと)ですかね(笑)。やっぱり話すのが社内の人間だけだったり、PCのモニターに向かって考えてたり、紙に書くだけ、では出てくるアイデアに限界があると思っています。

    及川 外へ行けっていうのは珍しいですね。

    友成 僕の場合は元同僚と会ったり、プライベートで全くバックグラウンドの違うコミュニティに入っていたり、勉強会に行ったりです。社外のコミュニティでレビューをやってもらうと、本当に多様な感想をもらえるんです。FiNCの若手にも勧めています。僕がやっていたわけでないですが、DeNAでは、若手の育成で「バー巡り」をやっていました。山手線の駅1つずつで降りてバーに入り、そこにいる誰かと話をするんです。

    及川 変わりますか?

    友成 実際にやると山手線のうち半分くらい進んだところで本当にガラリと変わるそうです。発想ももちろんですが、毎日初対面の人と話すということを繰り返すので、コミュニケーションも大きく変わります。

    及川 なるほど興味深いですね。飲んで帰って妻に怒られても、研修の一環だ、と言い張れば許されるかも(笑)。そういえば、Googleでも毎回違う人たちとランチをするという仕組みがありました。

    友成 あ、それは今FiNCでも「バリューランチ」という名称でやっています。だんだん組織が大きくなって部署や業務も多岐にわたってきたので、企業理念・文化浸透・情報共有などを目的として行っています。

    及川 半ば強制的でも、そうやっていろいろ経験してみることで先ほど友成さんが指摘していた「質問する力」も身に付いてくるのかもしれませんね。

    友成 自分から行動を起こすことが、ものを作る第一歩になると思うので、PMを目指す人は会社がそういう機会を与えなくても自主的にやるのが理想です。

    【PMを目指す人へのアドバイス】コミュニケーションを通じてバランス感覚を身に付けよう

    FiNC友成琢氏とIncrements及川卓也氏

    及川 これからPMを目指そうという方に必要なものって何だと思います?

    友成 まずはバランス感覚だと思いますね。いろんな人と関わって、いろんな意見がある中で、天秤にかけられないものを天秤にかける場面は必ず出てきます。それを判断するためにバランス感覚が必要なんです。

    及川 バランス感覚を身に付けるにはどうしたらいいんでしょう。

    友成 さまざまなジャンルやコミュニティの人との会話を通じて、いろんな視点を持っておくことが一番の近道だと思います。先ほどの「社外に出る」という話もこれにつながってきますが、外からFiNCを見ることで違った視点から自社を見ることができるんです。

    及川 サッカーをドローンで中継するような感じですね。

    友成 はい。また、僕が信念として持っているのは「同じ仕事を2度やるな」です。繰り返しやる同じ仕事は、仕事でなく作業なので、自動化したり、効率化しようという意味合いです。作業をしていても新しいものの見方はできないですし、コミュニケーション能力もバランス感覚も養われないです。うまく技術を使って作業をなくして、空いた時間で多くの人とコミュニケーションをとろうということです。進化するために技術があると思っています。

    及川 なるほど、その点は僕も大賛成ですね。今回はいろいろと有意義なお話をありがとうございました。

    >> 及川氏が作成した、Incrementsにおけるプロダクトマネジャーのジョブディスクリプション(GitHubページ)はこちら

    取材・文/浦野孝嗣 撮影/羽田智行(編集部)

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