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元ホワイトハウス勤務の女性プレジデントが語る、変革期のIT業界で女性エンジニアが大切にすべきもの 【Code Girls:イベントレポート】

働き方

    「今後、IT業界には女性エンジニアの活躍がますます必要になります」

    そう語るのは、ホワイトハウスでの勤務経験を持つビクトリアA. エスピネルさんだ。異例のキャリアを持つ彼女は現在、世界のソフトウェア産業を推進するBSA|BSA|The Software Alliance(以下BSA)という団体のプレジデント兼最高経営責任者として、エンジニアの育成を後援している。

    そしてその活動の一環として、2017年4月11日に来日したエスピネルさんは、プログラミング教室『Life is Tech!』が主催する『Code Girls』イベントに足を運んだ。

    本記事では、アメリカ社会で起こっているエンジニアを取り巻く環境変化や、今後必要とされるエンジニアの特徴について語った、エスピネルさんの講演をレポートする。

    『Code Girls』に参加した女子高生と交流する、元ホワイトハウス勤務の女社長、エスピネルさん

    80年代よりも減っている!? ニーズの高さとは裏腹に減少し続ける女性エンジニア

    同イベントには、オリジナルのiPhoneアプリ開発を体験するため、エンジニアリングに興味を持つ女子高生11名が参加していた。

    若い女性がエンジニアリングに興味を示していることを知り、彼女たちに喜びと感謝の念を伝えるエスピネルさん。そして、自身が代表を務めるBSAがアメリカで行なった調査結果を元に、今後女子高生たちが向き合っていくことになるであろうIT業界を取り巻くジェンダー格差について説明した。

    調査によると、ITに携わる人口は近年増え続けているが、女性エンジニアの数は縮小傾向にあることが分かった。さらに、ITに興味を持ち、これからコードを学ぼうと考えている女性の数も後退傾向だという。

    「1980年代のアメリカでは、コンピューターサイエンスを専攻する学生のうち3分の1は女性でした。 その比率は、弁護士や医師を目指す人たちと同じくらいの比率。エンジニアは女性にとって憧れの職業の一つだったということです。しかし80年以降、変化が起こりました。弁護士や医師を目指す学生は今でも50%が女性という高い割合を維持していますが、コンピューターサイエンスを目指す女性の割合はわずか17%になってしまったのです。私たちBSAでは、この事実を知って早急な対策の必要性を感じています」

    女性エンジニアが減少している背景には、過酷な労働環境というイメージや、障害が起きた際の緊急対応への懸念が挙げられる。また、専門性が高い職種ゆえに、出産などのライフイベントを迎えても休みを取りにくいなど、融通が効かないのでは? という不安もあるという。そして、多くのエンジニアを抱える有名企業も、こういった女性エンジニアの減少に危機感を抱いているという。

    「BSAは、アメリカで『Girls Who Code』というイベントに協賛しています。『Girls Who Code』は今回の『Code Girls』と同じように、コーディングやプログラム、開発をしたことがない女性たちを集めて、Webの開発やアプリの開発、ロボットを踊らせるためのコーディングなどを教えるイベントです。そして、そのイベントには、AdobeやAppleなどの企業が後援しくれています」

    女性エンジニアの割合の変化に対して、さまざまな企業や団体が対策を行っている現状を伝えたエスピネルさん。彼女はIT業界に女性エンジニアの需要がますます高まっていくと確信しているが、その理由とは一体何なんだろうか。

    サービスの作り手に多様性がなければ、グローバルで受け入れられるサービスはつくれない

    前提として、開発においては少しでも多くの視点が反映されることが、今後のソフトウェアの発展には欠かせないないとエスピネルさんは話す。

    エスピネルさんは、未来のソフトウェア業界に、女性ならではの視点が必要だと力説する。

    「現在、ソフトウェアは私たちの社会に大きな影響を及ぼしています。コミュニケーションの取り方やビジネスの方法など、ありとあらゆるものがソフトウェアによって日々変化している。だからこそより多くの視点や意見が取り入れられることで、より可能性に満ちたソフトウェアが誕生してくるはずです」

    そして、とりわけ女性エンジニアの存在がIT業界内で欠かせない理由については、以下のように説明した。

    「今後、女性ユーザーをターゲットにしているアプリやサービスはますます増えていくと予想されます。そこで、女性エンジニアやコーダーが増えることで、女性ならではの視点が加わり、よりクリエイティブかつイノベーションに溢れ、もっと安全なソフトウェアが開発されると考えています」

    女性ならではの感性を開発に活かすことが、ソフトウェアをより質の高いものへと成長させる。その結果として、人々の生活をより豊かにするとエスピネルさんは確信している。

    “男職場”で女性エンジニアが自分の意思を通すコツ

    それでは、現状として男性が大半を占めるIT業界で、女性エンジニアが存在価値を発揮しながら働くために大切なこととは何だろうか?

    「意外に思えるかもしれませんが、まずは自分に自信を持つこと。自分の関心のある技術をどんどん身に付けていき、それを自信に変えることが一番の近道ですね」

    いくら女性ならではの視点を持っていたとして、それを発信できなければ意味がない。そして自身の意見やアイデアを一番効率的に開発へと落とし込むためには、自身の言葉に耳を傾け人を増やすことが大切だという。エスピネルさん自身も、ホワイトハウスでの仕事が始まった当初は、男性の多い職場で肩身の狭さを感じることもあったが、あえて自信に満ち溢れているように振舞うことで、自分の言葉が届きやすい環境をつくっていった。

    また、将来のキャリア選択について悩んでいる来場者に向け、エスピネルさんは自身の経験を踏まえて次のように述べた。

    「コーディングや開発は男性的な仕事だと感じている人もいるかもしれません。また、そういった世界に飛び込んでチャレンジすることを難しいと感じてしまうこともあると思います。しかし、変革の必要に迫られている今、IT業界には近い将来必ず大きな変化が訪れるはずです。その時まで、皆さんには今日のイベントを通じて感じたITへの興味や関心を大事にしてもらいたいと思います」

    今後のIT業界において女性エンジニアの役割が重要になってくる理由を説明したエスピネルさん。そういった未来が実現した時、女性エンジニアが確かな存在価値を見出すために必要なのは小手先の技術や知識を身に付けることではなく、エンジニアリングに対する興味と自信だと締めくくった。“35歳定年説”のように職業寿命の短さを指摘されることも多いエンジニアだが、好きなことややりたいことに向かっていくマインドを持ち続けていれば、この先もエンジニアとして働き続ける上での武器になるはずだ。

    取材・文・撮影/羽田智行(編集部)

    参加者全員で最後に記念撮影

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