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現場エンジニアによる“ゼロからの働き方革命”ストーリー
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エンジニアにとって働きやすい現場作りを、エンジニア自身が実現
2008年9月設立のITベンチャーが、事業と組織の急拡大に伴うユニークな制度作りを急ピッチで進めている。東京に本社を置きながら名古屋・大阪・福岡にも支店を設けて全国規模でウエブサービスの企画・立案から設計・開発までを展開する株式会社Areus(アレス)だ。
14年当時、わずか数人だったスタッフ数は翌2015年に16人、2016年に27人、2017年現在は約75人と倍増以上の勢いで急拡大中。「若手エンジニアを対象に積極採用を進めてきたことが、働き方革命のきっかけになった」と話すのは2015年4月にジョインした瀧花良太氏だ。
「まだ少人数だった頃は勤務時間中にジムへ行くのも自由といった雰囲気でした。しかしそういった働き方を許す制度が明確にあった訳ではなかったので、どうしても中途で入社した社員は同じような働き方をしにくいところがあったみたいです。それで『平等じゃない、不公平だ』という声が新しく入ったエンジニアの中から挙がったのが、きちんと制度化していくきっかけでした」(瀧花氏)
制度を整えていくにあたり中心になったのが、瀧花氏と、現在は組織全体のマネジメントを担う平野真氏の二人だ。当初は二人ともエンジニアだったことから「せっかく制度を作るなら、エンジニアが日本一の働きやすい環境を作る」という目標を掲げていたという。では、二人が考えた“エンジニアにとって働きやすい環境”とはどういったことなのだろうか。
「これは僕の完全な偏見かもしれませんが、エンジニアは働き方に対するこだわりが強いように感じるんです。それぞれが“自分の得意な働き方”を持っている。例えば朝の方が集中できるという理由で、6時や7時に出社して午後3時、4時に帰りたいというエンジニアもいます。そういったこだわりを持ったエンジニアにとって使い易い制度をということで、まずはフルフレックス制度を導入したんです」(瀧花氏)
最初にフレックス制が導入されたのが2016年9月。以降、在宅勤務制度など、エンジニアが自分の得意な働き方を実現できる制度を整えてきた。
「愛犬の近くにいた方が仕事が捗るという理由で、週2~3日は在宅勤務を行っている社員もいますよ。きちんと仕事ができる状態であれば、在宅の理由を限定するはないんです」(平野氏)
いち現場エンジニアからスタートした働き方革命ではあったものの、途中から同社社長の宮澤太郎氏も理解を示し、その動きは加速していったという。
「最初は社長に直談判して一つ一つ制度化を実現していきましたが、そういったことを重ねていくうちに社長も制度作りに積極的になってくれました。実際に、土曜日が祝日だった場合に振替休日が取得できるプレミアムサタデーという制度は、社長からの提案だったんです」(平野氏)
エンジニアの働き易い環境を作るために整えられてきた各種制度ではあったが、その恩恵を受けるのはエンジニアだけに留まらず、現在では執行役員から一般社員まで、役職問わず、理由を問わず利用されている。
意識改革が進むエンジニアにとって働きやすい職場作りはIT企業の責務
この1年あまり、導入予定のものも含めてAreusは計10項目もの制度作りを実現してきた。同社が進める働き方改革は、新しい制度作りだけでなくエンジニアへの評価基準にも及んでいる。
「人数が少ないうちは、創業社長の宮澤がエンジニアを含むすべての社員を査定して報酬を決めていましたが、やはり基準が曖昧、不平等・不公平という声がありました。そこで、働くための制度と人事評価制度も刷新しました」(平野氏)
ITベンチャーに限らず、専門分野や専門領域がそれぞれ違うエンジニアを平等・公平に評価するのは大きな課題だ。Areusではやはり瀧花氏、平野氏が中心になって次のような評価基準を定めたという。
【1】残業や休日出勤など費やした時間だけで評価されない
【2】果たすべき役割と達成した成果で正当に評価される
【3】基礎的・専門的な能力も評価の基準になっている
査定は、GitHubにアップされているソースコードの内容やクオリティー、タスク管理ツールを確認して行っているという。そして、エンジニアの「人柄」を評価基準に加えることはあえてしていないと瀧花氏は語る。
「エンジニアの中には、協調性に自信がないという人もいます。与えられた仕事をきちんとこなし、他部署との連携はしっかり取れているにも関わらず、コミュニケーションの内容など数値化できない部分で評価が上がらないということがあっては、エンジニアにとってモチベーションを下げる原因でしかない。だからAreusではきちんと“成果”を見て査定するようにしているんです」(瀧花氏)
エンジニアの性格や特性を理解している二人だからこそ、エンジニアが本当に望んでいる環境を整えられるのだろう。こうして完成した制度を、実際に使っているエンジニアはどのように感じているのだろうか。
エンジニアとしてキャリアの幅を広げる制度作りを
Areusの名古屋支社でシステム事業部に所属する鵜飼裕二氏は、現在フルフレックス制と在宅勤務制度を組み合わせて活用しているという。
「私の自宅はオフィスから離れていて、通勤するのに片道で1時間半はかかってしまうんです。でも、在宅勤務制度を使えば、一日に3時間の余裕が生まれるからとても助かっていますね。在宅勤務をするとその間の評価はどのように決まるのかなど気になることもあったのですが、GitHubやバックログを基準に評価をするということは分かっていたので、安心して取得することができました」(鵜飼氏)
在宅勤務によって残業時間を減らすことに成功した鵜飼氏は、ジムに通ったり、趣味であるスイーツ探しの時間を作るなどして、プライベートを充実させたという。また、そうして生まれた余裕が、自身のキャリアを広げることにも繋りそうだと語る。
「それまでは目の前の仕事に必要な知識を身に付けることで精一杯でしたが、最近では仕事以外の分野や領域でスキルアップのための勉強に取り組んだりと、エンジニアとしての自分の今後を考える時間が多くなりました」(鵜飼氏)
今、多くの若手エンジニアが設計・開発に取り組んでいるAreus。同社が若手に期待するのは、自社や自社の業務だけでなく一人一人が能力や資質を活かして広く社会に貢献していける人材の育成と輩出だ。
「創業10年目の期を迎える今年、Areusは第2フェーズと位置付けています。働き方改革のための制度や人事評価基準などが整って、今後問われるのは制度を活用するエンジニア一人一人の意識と働き方です。極論を言ってしまえば、出社しなくても成果さえ出せばどこで働いていてもかまいません。働く時間も自由です。その分、個々のエンジニアがさらなるスキルアップやビジョンを目指して少しでも成長していける環境作りをこれからも進めていきたいですね」(平野氏)
文/浦野 孝嗣、羽田智行(編集部) 撮影/小林正(スポック)
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