日々流れてゆく膨大な情報量の中からおいしいネタを敏感に察知し、ネット界隈を賑わせてくれるWeb業界の異端児・村上福之氏。同氏独自の経験と価値観から、「キャラ立ちエンジニア」の思考回路を紐解いていく。
大経営者たちがプログラミング教育の必要性を唱えることに対して全然喜べない理由【連載:村上福之】
>> 「日本史なんかより、プログラミングを教えるべき」三木谷浩史氏と夏野剛氏が日本の技術者不足を嘆く
こういう考え方、今っぽいし、悪くないとは思うんですけど。個人的に、プログラム教育とか論じてる人が「プログラマーとして飯を食ったことがある経営者」じゃないとちょっとゲンナリするよね。
僕は三木谷さんや夏野さんの発言の真意を直接聞いていないので、三木谷さんや夏野さんに異を唱えたいわけでも、彼ら大経営者の発言の一部分だけを拾って揚げ足を取りたいわけでもありません。
ただ、こういった言説を経営者から聞くと、中には「使える労働者を増やせ」みたく思っているだけの人もいるんじゃ……と思ってしまう僕がいます。
プログラマーは経営者に比べて、精神的にも金銭的にもハッピーライフではない。ITProの調査によると、プログラマーのうつ病発生率は経営者より高かったりもする(http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20100426/347520/)。
これはまぁ、ポジショントークっぽい面があるので、単純な二元論で語るつもりはないです。でも、事実として、日本ではプログラマーの給料があまり高くない。
だから、教養としてプログラミングを勉強するならともかく、「プログラマーを増やせ」と経営側の人に言われるとちょっとゲンナリするんです。
しかも時代はオフショアで。「お前の代わりはインドやベトナムにドブに捨てるほどいる」と言われてもおかしくない時代です。自分でコードを書かないのに、エンジニアが不足しているから困っているステークホルダーの立場にいるような人から、「もっとプログラミング教育するべき」と言われても、ゲンナリします。
そう言えば、よく本屋で、英会話の教材や英会話学校のチラシだのハガキだのを配っている人がいた。チラシを受け取ると、これからは英語だのTOEICだの言っている。そういう人に、「で、おたくはTOEIC何点ですか?」と聞くと、口ごもる。そもそも、英語ペラペラで優秀な人だったら、1日じゅう本屋の前に立ってチラシ配りなんてしてないんじゃないかと思う。
プログラマーが必要なのと富岡製糸場の工員が必要だったのは同じ!?
>> 各国で始まるプログラミング教育必修化の波 遅れている日本の取組み、環境整備は
さっきも書いたように、これからの時代、プログラミングスキルが必須になるという主張は僕も理解できます。でも、「全員」ではないと思う。社会全体ではプログラマーはもっともっと必要ですが、個人「全員」が幸せになるために必要ではないです。
プログラミングが好きで好きでしょうがなくって、職業としてもプログラマーでやっていきたい、という人は別として。もしくは、そういう人を発掘するために教育を提供するなら良しとして。
それ以外の人にとっては、プログラミングなんて、教養レベルで知っていればいいんじゃないの? と思います。かつて、富岡製糸場で糸をつむぐ工員が大量に必要とされた時代があったわけですが、そのスキルを持っていた人全員が必ずしも幸せになれたか? と考えると、僕は疑問に思うんですよ。
そんなことよりも、偏差値の高い私立のマンモス大学の文系に入って、ロクに勉強せずにオラオラ生活を送って、コミュ力を上げて、僕のような気の弱い非コミュ系エンジニアをけしかけて、むちゃな日程で高品質なモノを作らせて、できた実績を丸ごと自分のものとして横取りするような神経の図太さを持った人の方が、よっぽど個人的に幸せな人生を送れると思います。
サラリーマンをやってる限り、プログラマーをやるよりも「大手の広告代理店でざっくりとしたデータだけ用意して勢いで企画を押し込んで、オラオラ系で、偉そうなことを言っているプログラミングを分かってない人」の方が収入は多いです。少なくとも、今の日本ではね。
美しい国ニッポンでは、手を動かさない人の方が収入が多いです。
プログラムなんか覚えなきゃよかった。
俺たちの戦いは、まだ、始まったばかりだぜ!
つづく
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