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「さようならHTML5」アメリカ人と日本人の標準化に差を感じる【村上福之】

働き方

    日々流れてゆく膨大な情報量の中からおいしいネタを敏感に察知し、ネット界隈を賑わせてくれるWeb業界の異端児・村上福之氏。同氏独自の経験と価値観から、「キャラ立ちエンジニア」の思考回路を紐解いていく。

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    株式会社クレイジーワークス 代表取締役 総裁
    村上福之(@fukuyuki

    ケータイを中心としたソリューションとシステム開発会社を運営。歯に衣着せぬ物言いで、インターネットというバーチャル空間で注目を集める。時々、マジなのかネタなのかが紙一重な発言でネットの住民たちを驚かせてくれるプログラマーだ

    HTML5は巨神兵。「……腐ってやがる。早過ぎたんだ」

    今さら、「これからはHTML5だ!」と言っている人はもう、カッコ悪いかもしれません。

    「ロングブレスダイエット」全盛の今に、「朝バナナダイエット」の素晴らしさを語るくらいカッコ悪いです。

    FacebookのザッカーバーグCEO、「HTML5に賭けたのは失敗」

    ついにザッカーバーグがHTML5をdisり始めました。iOSのfacebookをHTML5ベースからネイティブに書き直してリリースしたのは、皆さんご存知の通りです。Android版も今後、ネイティブに書き直されるようです。

    HTML5は長期的には正しいが、ミスだったと認めているとのことでした。今のスペックではHTML5はクソ遅い上に、Androidは整理されてない上にバージョンがバラバラなので、今ではまだまだ端末互換性も低いです。

    つまり、HTML5は巨神兵なんです。「……腐ってやがる。早過ぎたんだ」

    先日も、同じようなことを聞きました。Android系の方々を中心としたHTML5の勉強会でHTML5賛美のプレゼンが聞けると思いきや、スピーカーの多くが、次々に「HTML5は言うほど素晴らしくも、桃源郷でも、銀の弾丸でもない」というプレゼンを発表し、HTML5の勉強会がHTML5をdisる会になってしまいました。

    もう、笑うしかありませんでした。

    個人的な意見で言いますと、少なくとも「今の」HTML5は限定的には素晴らしいですが、「HTML5だけで、世間のネイティブ並みのユーザーインターフェイスを実装するには厳しい」と思ってます。

    むしろ、どこまでネイティブで作って、どこまでWebViewとHTML5で作り込むかの切り分けをするとスムーズなのか、割り切れるスキルが必要になっていると思います。ぶっちゃけ互換性がアホ過ぎます。

    僕は、多くのHTML5ベースのソリューション(PhoneGap/jQuery Mobile/enchant.jsなど)でテスト的にいろいろ作ってみて今の市場では実用は難しいかなと判断しました。

    いろんなものの実装があいまいですし、動いたり、動かなかったりで、動作がもっさりしてしまうケースもあります。

    特にAndroidのブラウザの互換性はバラバラの上に、今後、Android4.1以降はChromeベースの新しいブラウザが搭載されていくので、HTML5は検証の工数は増えていくように見えます。Googleさまはわれわれにカオスを与え続けることが大好きなようです。

    今後、Windows Phone 8が出てきてサポートを求められると、地獄絵図と化すのが目に見えています。

    乱立するオレオレHTML5

    from vernieman

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    「HTML5で開発できる」という触れ込みで注目されていたWindows Phone 8も、「フタを開けてみると標準化とはかけ離れたものだった」(村上氏)

    Windows Phone 8やTizenやFirefox OSといった今後、新しく登場するスマートフォンのアプリケーションがHTML5ベースで開発できるという話が出ました。

    その話だけで、多くのアプリクリエイターはHTML5を賛美したのはご存知の通りです。

    「これからのスマートフォンはすべてHTML5で開発だ!! HTML5だけやっていれば良いんだ!」

    皆さん、そう思ったに違いありません。もちろん、僕もそう思いました。

    しかし、フタを開けてみると、Windows Phone 8もTizenもHTML5も独自仕様で、標準のHTML5とはかけ離れたものでした。ワンソース・マルチデバイスの夢はあっという間に叩き潰されました。先日、マイクロソフトさまからWindows Phone 8の開発セミナーを受けたのですが、マイクロソフトの講師の方が言われたフレーズが頭から抜けません。

    「標準なんか考えなくて良いんです!動けば良いのです!」

    先日、アメリカのGoogle I/OでGoogleさまに最新のNexus 7上の最新のChromeでぐりぐり動くゲームのデモや3Dゲームのデモを見せていただきました。「このChromeのHTML5のデモはすごいですね! iOSでも動くのですか?」と説明員の方に聞くと、「いつか動くようになるよ!」とシリコンバレー流ポジティブスマイルで返されました。

    僕は、関西エンジニア流ネガティブ愛想笑いで応酬するしかありませんでした。

    AppleはAppleで、最初はSafariで使われているWebkitというHTML5のWebレンダリングソフトウエアを作っていたのですが、その後、オープンソースのコミュニティでGoogleさまがWebKitにコントリビュートし始めた結果、逆にSafariよりもChromeの方が先に、どんどんいろんなものを実装し始めました。

    おかげで、HTML5のデモアプリの多くがChromeでしか動かなくなり始めました。

    何より、HTML5のイニシアチブを取っているApple、Googleの2社が、”例の別件”で殴り合いのケンカをしていて、ついには、iPhone5の地図アプリが残念な結果になるというとばっちりを受けているのは、皆さんもご存知の通りです。

    オープンソースのコミュニティなので”例の別件”と切り離されているとはいえ、HTML5の実装に波及しないか心配です。

    そんなわけで、HTML5がアメリカ人どものエゴでカオスな戦場になりつつあります。

    もちろん、今後、HTML5がメジャーになる可能性も高いです。むしろ、実装工数が低いので、HTML5がメジャーになってほしいです。

    あれほど楽で実装コストが低い開発環境は、今のところ地球上に存在しないと思っていますが、どうにもこうにもさまざまな方々が新しい技術を主張して、互換性に危険な匂いがしています。

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