アイキャッチ

企業は有名エンジニアや有名コミッタを高額報酬で雇うべきか?【連載:村上福之】

働き方

    日々流れてゆく膨大な情報量の中からおいしいネタを敏感に察知し、ネット界隈を賑わせてくれるWeb業界の異端児・村上福之氏。同氏独自の経験と価値観から、「キャラ立ちエンジニア」の思考回路を紐解いていく。

    プロフィール画像

    株式会社クレイジーワークス 代表取締役 総裁
    村上福之(@fukuyuki

    ケータイを中心としたソリューションとシステム開発会社を運営。歯に衣着せぬ物言いで、インターネットというバーチャル空間で注目を集める。時々、マジなのかネタなのかが紙一重な発言でネットの住民たちを驚かせてくれるプログラマーだ

    先日、ソフトウエアエンジニアの中で、この話題がバズってましたね。有名なコミッタさんを雇おうとしたら、会社の偉い人が「プログラマーに年800万円なんてのは馬鹿げてる! プログラマーに出せるのは年400万円までだろう!」と言い放ったという話です。

    >> 著名なOSSコミッタを年収400万円で雇おうとしたら無理だったお話

    この話はプログラマーの言い分も経営者の言い分も、ものすごく同意できます。400万円で雇うとは何事だと思います。ただ、ケースバイケースで経営者の意見も分かります。

    この問題の悩ましいところをまとめてみました。

    有名なエンジニアを入れるべき理由

    OSSのコミッタを務めるような有名なエンジニアは、やはりそれなりに技術力があり、生産性も高いです。プログラマーの生産性は、人によって10倍も100倍も違います。アホな人を採用すると、2倍どころかマイナス10倍になったりするのが普通ですから、生産性の観点から見ると効果は絶大です。

    また、その人の知名度にも大きく左右されますが、非常に採用活動にプラスになります。有名で優秀な人は、優秀な人の知り合いが多いからです。

    Aクラスの人はAクラスの知り合いが多いのです。さらにネームバリューも付きます。過去には、グリーにPHPのコミッタだった藤本氏(藤本真樹・最高技術責任者)が入ったり、はてなにひげぽん氏(蓑輪太郎・現Twitter)が入ったりした時は非常に話題になりました。

    有名なエンジニアを入れるべきでない理由

    ただ、ここで思い出したいのが、日本のソフトウエア産業の多くでは、技術力と売上は関係ないケースが多いということ。日本のソフトウエア産業の半分は受託案件で、人月産業が大多数です。常駐請負も多いです。

    ソース:平成26年情報通信業基本調査報告書

    ソース:平成26年情報通信業基本調査報告

    ですから、すばらしい技術力でさっさと短納期で仕事を終わらせると、売上は下がります。できそうに見えて契約単金を高くして、実際は仕事が遅い人の方が売上が上がります。

    また、請負でなくても、自社製品に対して高度な技術で新規機能の提案をして開発費を上げるよりも、ユーザーに我慢して古い機能をそのまま使ってもらって、営業が力技で顧客を増やした方が利益が上がったりします。悲しいけど事実です。

    最もよくある飼い殺しケース

    コミッタさんにとって、自分がOSSで取り組んでいる活動はある意味仕事より大事だったり、大好きだったりするケースがあります。自分の本業とシナジーがあれば、非常にハッピーです。例えば、DropBoxにGuido Van Rossumさんが入社した時は非常にシナジーがあったと思います。あれで、Pythonのクライアントが非常に進化したと思います。

    しかし、そもそも有名なプロダクトを作っている日本人エンジニアが少ないです。さらに日本の会社において、あまりコミッタさんや有名エンジニアが頑張っているモノと本業が関係なかったりするケースも多いと思います。

    そうなると仕事は楽しくないし、上司はバカだし、チヤホヤしてくれる自分のコミュニティーの活動時間を増やした方がいいですし、仕事もやっつけになってきたりします。何だか飼い殺しになっているケースもなくはないです。

    例を出したいのですが、怒られるのでやめておきます。

    どうすればいいの?

    往々にして9割の会社は無能な組織と無能な上司のゴッタ煮みたいなものです。そこに優秀な人をポイと入れても、そもそも上司が無能なので活用できないケースも多いし、バカの和を乱すだけなので、全員アンハッピーになったりします。無能な人は有能な人が嫌いだからです。

    「仕事に自信のない男は、自信のある部下を嫌う。
    『部下が出来すぎると俺のバカさ加減が目立ち、
    最後にはひっくり返される』と恐れ、その結果と
    して無能な管理職は無能な部下を重用する。
    組織全体の弱さのかげに、みんなが互いの無能さを
    隠し合うのである」
    (『アイアコッカ―わが闘魂の経営』より)

    そんなわけで、有能な会社だとワークしますが、無能な会社だと、ワークしないケースも多いです。

    自分の会社が無能だと思ったら、無理に有能なコミッタさんを入れない方がいい時もあります。もし、あなたがエンジニアならば、そんな無能な会社なんかほっといて、その有能なコミッタさんのいる会社に転職活動をした方がいいんじゃないかと思います。

    >> 村上福之氏の連載一覧はコチラ

    Xをフォローしよう

    この記事をシェア

    RELATED関連記事

    RANKING人気記事ランキング

    JOB BOARD編集部オススメ求人特集





    サイトマップ