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【IT芸人?】年間30回以上の講演をこなすトレタCTO増井雄一郎が、今React.jsを学ぶ理由ー30分対談Liveモイめし

働き方

    『ツイキャス』を運営するモイの代表取締役で、経験豊富なエンジニア赤松洋介氏が、週替わりで旬なスタートアップのエンジニアや起業家を招いて放談する「モイめし」。『ツイキャス』連動企画として、お昼に30分の生放送&その後のフリートークも含めて記事化したコンテンツをお届けします!

    ツイキャス』を運営するモイのエンジニアがホストを務め、週替わりで旬なスタートアップのエンジニアや起業家を招いて放談する「モイめし」。今回のゲストは、飲食店向け予約台帳アプリの開発・提供を行うトレタCTOの増井雄一郎氏だ。

    年間30回以上の講演をこなすといい、一部では「IT芸人」とも呼ばれる増井氏が、通算4度の起業経験を持つ自身のキャリア、さらには今注目しているという新技術React.jsについて、モイ代表取締役の赤松洋介氏を相手に語った。

    プロフィール画像

    Toreta,Inc. CTO
    増井雄一郎氏(@masuidrive

    大学時代に起業しWebサイト制作などを行う傍ら、PukiWikiなどのオープンソース開発にも積極的に参加。2003年からフリーランスとなり、Webアプリ開発や執筆を行う。中島聡氏と共にアプリ開発会社を起業するために2008年に渡米。iPhone向け写真共有アプリPhotoShareをリリース。2010年に帰国し、アプリSDK『Titanium Mobile』の伝道師として活動。2012年9月に退職、FrogApps, Inc(現 miil Inc)を設立しiOS/Android向けにミイルをリリース。現在は2013年に起業したToreta, Inc. CTO。趣味はお風呂でコーディング

    エンジニアとしてのキャリアは17歳から

    赤松 増井さんのエンジニアキャリアから伺いたいんですが、始まりはいつごろですか?

    増井 実は職歴がすごく長いんですよ。フリーランスとして働き始めたのは17歳のころ。会計事務所のお客さん向けに会計管理とかのシステムを作っていました。

    赤松 17歳とは驚きですね。コンピュータ自体にはいつごろ触り出したんですか?

    増井 高校入学時にMSXを買ってもらい、それからは朝から晩まで触っていました。まだインターネットがなかったので書いたコードを雑誌に投稿したり。大学は文系に進んだんですが、その時もシステムを作るアルバイトは続けていて、個人でやる仕事がだんだん回らなくなってきたので、卒業前に起業しました。

    赤松 そこから中島聡さんのところに行くんですよね?

    増井 はい。社長業より自分でコードを書く方が好きなので、会社をたたんでフリーに戻りました。先のことを考えて英語を勉強したいと考えたんですが、週に1回教室に通うくらいじゃ覚えられないじゃないですか。だったら海外に行った方が速いだろう、と。

    そんな時に中島さんと出会ったんです。ブログの一読者に過ぎなかったんですが、たまたま講演で日本に戻ってくるということだったので、「海外で働きたいんですが話を聞かせてもらえますか」とメールを送りました。

    会社の広報の方からは難しいとのお返事でしたが、中島さん本人はブログなどを通じて自分のことを知っていてくれたらしく、「会って話をしよう」と言ってくれたんです。お昼ごはんを食べながら30分くらい話しただけでしたが意気投合して、一気に一緒に起業しようということになりました。

    赤松 実際に行ってみてどうでした?

    増井 とりあえず一緒にやってみようくらいのニュアンスでノープランだったんですが、向こうへ行ったらちょうどiPhoneが出たので、これをやろう、と。結局英語の学校に行く暇もないくらい缶詰状態で開発していたので、日本もアメリカも分からないくらいの感じでしたね。

    仕事としても楽しかったし、シアトルはMicrosoftや任天堂などがあるため、Tech系のコミュニティも豊富でした。次第にRubyのコミュニティに顔を出すようになって、いろいろな人と交流できたのも良かったですね。

    ブログで求職→十数社から問い合わせが殺到

    対談

    増井 サービスの方はユーザー100万オーバーくらいまで行ったんですが、ちょうどリーマンショックがあり、まだiPhoneの広告市場も今ほど立ち上がっていなかったこともあったので、プロジェクトを譲って日本に帰りました。そのタイミングで今度はAppceleratorから声が掛かったんです。

    赤松 そのころブログに求職の条件をオープンにしていましたよね? 当時は非常に珍しかったと思うんですが。

    増井 無職になったので試しにと思ってブログで求職してみたら、十数社から連絡がありました。ただ、書いたはいいもののすぐにAppceleratorに入ることが決まってしまったので、帰国してからは「ごめんなさい詣で」をすることになりました。

    赤松 ブログで求職して十数社はすごいですね。

    増井 そこそこ活動している人ならば、今でもやれば声が掛かるんじゃないですかね。エンジニアの価値は昔よりだいぶオープンになっていますし、何より売り手市場ですから。

    赤松 確かに退職者ブログが界隈で回りますもんね。増井さんは当時から、自分としてはこれくらい(の条件)というものを明確に持っていたんですね。

    増井 個人事業でやっていた時期もあるので売り上げとかの数字も分かりますし。相場を聞いて回って、それよりちょっと多めに、という基準で決めていました。ただ、公開した後に、いろんな人から「そこが上限だと思われたら困るから、もっと高く設定してくれ」と言われたりもしました。

    「しゃべり」のスキルを活かしてエバンジェリストに

    赤松 Appceleratorではどのようなお仕事を?

    増井 当初はコアのエンジニアリングをという話だったんですが、ビザの関係で日本に一時帰国する際に、しゃべるのが得意なのを活かしてエバンジェリストとしてTitaniumを宣伝するよと本社に提案したんです。

    そうしたら思っていた以上に認知度が上がってしまって。田口(元)さんや(伊藤)直也さんの影響が大きかったと思いますが、一時、DLの1/3が日本という状況にまでなったことで本社が気を良くしてしまい、そのまま日本でやることになりました。

    赤松 じゃあ開発には携わらない立場に?

    増井 デモアプリを作ったり、日本語で動かない部分を修正する程度で、珍しくコードを書かない仕事をしていました。

    赤松 アメリカに行くこともあったんですか?

    増井 入社する際に年6回、自由にビジネストリップができるバジェットをもらえるように交渉してあったので。日本だとあまり例がありませんが、向こうだと年に1回PCを買い換えられる権利とかまで含めて入社時に交渉するケースがよくあります。その辺は、向こうで働いていた時に知り合った人たちから教えてもらいましたね。

    勤怠管理はルールではなくシステムで

    増井氏がCTOを務めるToreta,Inc.の予約台帳アプリ『トレタ』

    増井氏がCTOを務めるToreta,Inc.の予約台帳アプリ『トレタ』

    赤松 その後、ミイル、そしてトレタへと進んでいくわけですが、ベンチャーの立ち上げは大変じゃないですか?

    増井 実は大きい会社で働いたことが一度もなくて。いわゆる会社員的な働き方はしたことがないので、起業よりも毎日会社に行くとか、毎日日報を書くとかの方が難しいですね。

    赤松 トレタではSlackを使って勤怠管理をしているそうですね。

    増井 毎日出社したら「おはようございます」とか退社する前には「さようなら」とかポストするわけだから、それを記録すればいいということにしました。システム化できるところはシステム化することで、変な会社のルールはなるべく作らないようにしています。

    赤松 基本的にエンジニアには自由に働いてほしいというお考えですか?

    増井 サービスの性質上、会社の都合で夜中に急に対応してもらうことがあるので、その逆に個人の都合に合わせた部分があってもいいのでは、と思っています。とはいえ、うちのお客さんはネットの人たちではないので、会わなきゃ話にならないということも多い。11時~16時をコアタイムとして設けていて、僕も珍しく毎日会社に行っています。

    赤松 うちはオフィスを見てもらえば分かる通り、人が出社しない会社でして……(笑)。その人の一番効率の良い時間に働いてもらえばいいという考え方でやっています。

    増井 スタートアップといえば若いイメージがあると思うんですけど、ウチは平均年齢37歳と、真面目に定年退職規定を考えないと、みたいなところまで来ている(笑)。家庭がある人も多いので、比較的ちゃんと出社している面もあると思います。起業してすぐはレビューなどに人を割くのが難しく、どうしても信頼できる経験のある人中心になってしまいますね。

    赤松 とはいえ若いエンジニアを募集していますか?

    増井 そうですね。若ければいいというものではないですが、同じ種類の人たちばかりが集まると、技術も偏りがちです。幅広いことに挑戦したいと考えると、若い人や女性など、多様性のあるチームにしていきたいですね。

    8年目を迎えた“風呂グラミング”生活

    赤松 増井さんご自身はずっとコーディングし続けていたい人ですか?

    増井 そうですけど、一方で今でも週に1、2度はお客さんのところに営業に回ったりしますよ。エバンジェリストをやっていた時期もあったように、しゃべるのが好きなので。最近、「IT芸人」で検索すると1位に表示されます。以前は本職のお笑い芸人の人が1位だったんですが、ついに追い抜きました(笑)。

    赤松 勉強会などでの講演も多いですよね。

    増井 去年は30回くらい、一昨年は45回くらいでした。今年も近々、岐阜、静岡、さらに台湾、ベトナムにも行く予定があります。旅費さえもらえればどこへでも行きますよ。

    赤松 でもコーディングする時間も貴重ですよね?

    増井 朝から晩までコーディングする日々を毎日続けていては疲れてしまうので、講演は気分転換も兼ねています。それに、話すことで理解が深まることだったり、資料を作ってみて別の側面に気付いたりということがたくさんあるんですよ。

    赤松 でも、その資料を作ったり準備をしたりという時間がそもそもないじゃないですか。

    増井 なので、お風呂でコーディングするんです(笑)。週に3回くらいはやっていますよ。8年目を迎えましたが、まだPCを壊したことはありません。もともと長風呂で2時間くらい入っているんですが、その時間は確かにもったいない。それで最初は読書、次にDS、最終的にPCを持ち込むようになりました。家族ももう、そういうものだと思って理解してくれています。

    メンテナンスを劇的に改善するReact.js

    自身のブログなどを通じて積極的な情報発信を行っている

    自身のブログなどを通じて積極的な情報発信を行っている

    赤松 新たな技術の勉強という意味では、最近ブログなどでよくReact.jsについて言及していますね。

    増井 現状のAjaxは非常に高度になっている分、メンテナンスが非常に難しく、整合性を保ったまま書き換えるのが不可能に近い。その点、React.jsは常に画面全体を再生成するため破綻することなくメンテナンスができ、また、現在の画面と更新後の画面の差分だけを更新するので、速度もそれほど気になりません。

    高度になり過ぎた技術を巻き戻す発想で作られており、乱立するJavaScriptのフレームワークの中でも今後、生き残っていくのではないかと思っています。

    去年、アメリカやヨーロッパでかなり流行し、Airbnbでは自社で作っていたフレームワークをすべて捨ててまで、React.jsで作り直しています。僕もニュースでその存在は前から知っていましたが、この年末年始で実際に触ってみて、その良さが分かりました。今後、トレタにもさまざまな形で導入していく予定です。

    赤松 導入するにはそれなりの余力がないと難しいでしょうから、採用にも力を入れていくんですよね?

    増井 そうですね。トレタは飲食店向けのBtoBサービスなので一般の人が触れる機会はあまりないと思うんですが、数十万人が使うWebサービスにはない、「お客さんがすべて見える」という面白さがあります。

    クラッシュの回数をゼロにするためには、お客さんが使っている状況すべてを把握しなければなりません。目の前の人が喜んでくれるという、BtoBならではのやりがいに興味を感じてもらえたら、ぜひトレタに来てほしいですね。

    赤松 モイでも引き続きエンジニアを募集してます。今後は『ツイキャス』に限らず、コミュニケーションの新たなプラットフォーム作りという方向にサービスを拡大していくつもりでいるので、BtoCサービスの方に興味がある人はぜひモイに来てください。

    取材・文/鈴木陸夫(編集部)

    ■「モイめし」は毎週水曜日の12時半から
    配信アカウント:https://twitter.com/moi_engineer
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