Vol.630

DeNA×dely×メルカリ×楽天に学ぶ、エンジニア満足度の高い「仕事環境・評価・キャリアパス」の条件【キャリアごはんvol.8レポ】

キャリアごはん第8回

2017年12月14日、エンジニアのキャリアパスを考えるワークショップ型イベント『キャリアごはん』が開催された。第8回目となる今回のテーマは「働き方改革」。

トークセッションでは「エンジニアに本気でモノづくりに集中してもらうための必要条件とは?」をテーマに、DeNA、dely、メルカリ、楽天のCTOやエンジニアリングマネージャーが持論を展開。業界をけん引する各社の話から、エンジニアが理想のキャリアや働き方を手にするために必要なことが見えてきた。

株式会社ディー・エヌ・エー 執行役員 システム&デザイン本部 本部長 木村秀夫氏ISPでエンジニアとしてのキャリアをスタートさせ、通信キャリアや独立起業等を経て2009年にDeNA入社。Mobageオープンプラットフォームの立ち上げやグローバル展開、Mobage全体のマネジメント、オートモーティブ新規事業立ち上げ等を経験した後に、現在は執行役員システム&デザイン本部長に就任。インフラからデザインまで幅広いスペシャリティを提供しながら、DeNAグループ全体の多種多様なモノづくりを支える部署のマネジメントを行っている

dely株式会社 取締役/CTO 大竹雅登氏2012年、慶應大学入学。大学1年生の時にクックパッド創業者・佐野陽光氏の講演を聞き、テクノロジーに興味を持つ。独学でプログラミングを学び、同年夏よりゲームアプリ開発のアルバイトを行う。大学2年生の時にバンガロールやシリコンバレーに訪れ、テクノロジーの世界基準に触れる。14年に現dely ・CEOの堀江裕介氏と出会い、delyを創業。CTOとして参画し、レシピ動画『クラシル』の開発を行う。『TechCrunch Tokyo CTO Night』にて、CTOオブ・ザ・イヤー2017に選出

株式会社メルカリ エンジニアリング マネージャ エンジニア 高山征大氏大学卒業後、東芝に入社。Cell REGZAに用いられた並列プログラミング言語『Molatomium』とそのVMを開発。その傍ら、iOSアプリ開発を趣味で行い、モバイル業界に関心を持つ。2010年にディー・エヌ・エーに転職。ゲームエンジン『ngCore』の開発で約3年間USへ赴任。帰国後はR&DプロジェクトやiOSアプリ開発に従事し、16年にメルカリへ転職。Androidアプリエンジニア、育休取得等を経て現在はエンジニアチームとプロジェクトのマネジメントを中心に行っている

楽天株式会社 ECカンパニー ECインキュベーション開発部 ジェネラルマネージャー 絹川達也氏ベンチャー企業2社にて営業、編成、事業開発などを経験の後、楽天大阪支社に入社。サービスプロデューサーとしていくつかのサービスを経験の後、大阪・仙台・名古屋の開発拠点のマネジメントに従事。現在、ECインキュベーション開発部のジェネラルマネージャーとして『ラクマ』『楽びん』『楽天ダイニング』『楽天ビューティ』など、複数のサービスの開発部署のマネジメントを担当

エンジニアが開発に集中できる仕事環境とは?

――エンジニアが開発に集中できる仕事環境を作るために、どのような取り組みをしていますか?

楽天・絹川氏 うちの部署の場合は基本的に技術仕様もプロダクトの仕様もエンジニアが主体で決めています。マネジャーから来たお客さまのリクエストのフィジビリティーチェックをエンジニアが行い、スケジュールを出す。ミーティングの量も、誰が何をやるのかも、自分たちで決めてねっていう感じです。ただ何も把握せずにいるのはまずいので、2週間に1回は進捗の確認をしています。

大竹氏、木村氏、高山氏、絹川氏
左から、dely・大竹氏、DeNA・木村氏、メルカリ・高山氏、楽天・絹川氏

メルカリ・高山氏 僕は最初エンジニアとして入社したんですけど、メルカリでは全然邪魔されることはないというか、そういうことを気にすることもないくらい集中できていました。とはいえ周りの人とのコミュニケーションは多いんですよ。独りよがりで作っても仕方ないですし、作りたいもののイメージを握って確認しながら進めていくスタイル。コミュニケーションを重視しているので、実はリモートワーク制度も基本的にはありません。むしろ、こまめにインタラクションがあることで、より精度の高いアウトプットにつながるため、結果的に集中できる気がします。

dely・大竹氏 うちはサービスを開始して日が浅いので、とにかく事業やプロダクトを伸ばしていかなきゃいけないフェーズ。そこに貢献してほしいという期待があるから、普段からKPIや売上を細かく共有する時間を取っています。事業に対してどう貢献できているのかを知りたい人が多いんですよ。技術や細かい仕様に関しては自由なんですけど、毎朝30分から1時間は「今、何にコミットしているのか」を再確認する時間を設けています。

DeNA・木村氏 エンジニアが集中できるっていう意味だと、自由が重要だと思っていて。裁量もそうだし、時間や場所もそう。障害対応が夜遅くに発生したらリモートワークを認めたり、ツールや言語は現場主導で最適なものを選べたり。ただし、利用者に向き合うっていうのが大前提で、例えば言語を「使いたいから」とか「新しいから」みたいな理由で選ぶのは違う。取締役の川崎(修平氏)が “利用者に向き合う”って観点を持った人なので、そういう文化が根付いているのがいいのかなと思っています。

――DeNAさんはゲームやECから多角化されていますが、エンジニアチームはどうやって作っているんですか?

DeNA・木村氏 開発のエンジニアは全部事業部に付いているんですよ。事業やサービスのタイミングによって、民族大移動的にトップダウンで異動をかけることがあるのですが、そればかりだとサービスへのパッションを維持するのが難しいことがあります。だから今は事業やプロダクトへのパッションを大事にしていて、異動を希望した人と事業部の責任者が合意すれば異動が成立する『シェイクハンズ制度』を2017年7月に始めました。異動される方は何もできないから血も涙もないんですけど(笑)、逆に言うとメンバーが異動してしまうのはマネジメントが良くなかったと振り返ることができるんですよね。

エンジニアのキャリアのポイントは“行ったり来たり”

――続いて評価やキャリアパスについてお聞きしたいんですが、人数が増えつつある中でCTOをやっている大竹さん、他の3名に聞いてみたいことはありますか?

dely・大竹氏 そうですね。自分のスキルを伸ばしたい人と、プロダクト全体を見るマネジメントのキャリアに行きたい人と、だんだん分かれてくるじゃないですか。そこのキャリアパスをどう考えているのか、すごく聞きたいです。

大竹氏、木村氏

DeNA・木村氏 うちはロールモデルとして4軸持っています。企画から入ってより利用者に近いところを考える「サービスエンジニア」、インフラやAIなど特定の分野の「エキスパート」、手は動かさないけどエンジニアとして組織の最大化を考える「マネジメント」、そしてちょっと珍しいですが、「ビジネスリード」という事業提案を行って推進するエンジニア。 ビジネスリードの一番のロールモデルはCEOの守安(功氏)で、サービスエンジニアでいうとMobageを作った取締役の川崎。一つの軸でキャリアを進むだけではなく、例えばマネジャーやったけど向いてないからサービスエンジニアに戻るとか、この4軸のモデルを行ったり来たりする人もいます。

――“行ったり来たり”はポイントかもしれないですね。

DeNA・木村氏 キャリアパスなんて誰も分からない……って言ったら元も子もないんですけど(笑)、行き当たりばったりのところは結構あるんですよね。僕はずっとマネジメントから逃げてきた人間で、前職でマネジメントをやりたくないからDeNAに入ったんですよ。でも2年でマネジメントをやるようになって。だからあまり狭めるのはその人のためにならないのかな、と。

dely・大竹氏 マネジャーは「こっちに適性がある」と思っているけど、本人は別のルートを目指していることはありますか?

DeNA・木村氏 あると思いますよ。まさに僕がそうでしたし(笑)。でもアサインはwillとcanのマッチングだと思うんです。willが欠けてもcanが欠けても駄目で、本人が納得しないと。そこで失敗したとしても本人の責任だから、それでいいんじゃないですかね。

メルカリ・高山氏 僕も最初はマネジャーになろうとは思っていなくて。メルカリはスペシャリストとマネジャーのコースがあって、スペシャリストの方に進もうと思っていたら「あなたは明日からマネジャーです」って言われて。マジか!ってなったんですけど、最近はマネジャーっぽい動きをするようになって、人は変わるもんだなぁと。

DeNA・木村氏 高山さんはメルカリでなんでマネジャーやりたいと思い始めたの? あ、彼と僕は以前一緒にうちで働いていて、その当時は「マネジメントをやる奴はオッサンだ」みたいに僕のことバカにしてたんですよ(笑)。

メルカリ・高山氏 バカにはしてないですよ(笑)。うーん、なぜでしょうね。やってみたら面白かったんですよね。

DeNA・木村氏 あぁ。分かる。

会場 (一同笑)

メルカリ・高山氏 最近ちょうど社内で発表があって。これまではスペシャリストとマネジメントのキャリアが用意されていたんですけど、評価方法をエキスパート一本にするという話になりました。マネジメント的な側面は、あくまでロールとしてアドオンするっていう考え方ですね。スペシャリティーがあって、かつチームの面倒を見たい人はマネジャーになるし、マネジメントをやめたくなったら、ただのエキスパートに戻ってくる。いい流れだと思いますね。

絹川氏

楽天・絹川氏 うちはキャリアについて週に1回、ダイレクトマネジャーが1on1で話す制度があって、今のアサインが合っているのかを確認しています。先ほど皆さんが仰っていた通り、志向はコロコロ変わるものじゃないですか。だから「マネジメントにチャレンジしてみたい」という話が出てきた時は、積極的にチームリーダーにアサインします。「失敗してもすぐに外れてもらえばいいから」って感じで本人と話をして、アサイン時にもチームメンバーたちにも「チャレンジアサインなので、できなくても気にしないでください」って言って(笑)。

DeNA・木村氏 基本はチャレンジアサインですよね。社内でよく話すんですけど、“エンジニアスーパーサイヤ人理論”っていうのがあって。死ぬギリギリまでやって、そこを超えると人間は成長する。死んじゃ駄目なんで、ヤバそうだったら仙豆を与えてあげるのも重要です。

――木村さんの仙豆は何ですか?

DeNA・木村氏 エンジニアは自己承認欲求が高い人種だと思うので、“見てあげる”っていうのが重要。投げっ放しではなく、1on1みたいなこともきちんとやって、場合によってはアサインを変えてあげる。それが仙豆じゃないですかね。そこをちゃんと見るのがマネジャーの仕事だと思っています。

個人と組織が沿わなくなったら、どんどん旅立てばいい

――働き方改革の本質は、個人とチームの生産性を上げることだと思います。個人の生産性を上げるためにはどうしたらいいですか?

dely・大竹氏 サイヤ人理論と近いですが、生産性を上げるためには、ギリギリまで追い詰められるのが一番いい(笑)。あとは「期待する」っていうのがあると思いますね。そして他の部署や周りの人を見られる環境を作ってあげること。期待しているものの、プレッシャーをかけ過ぎて本人が周りを見られない状態になっているのはまずいし、周りがよく見える風通しの良い状態にあったとしても、期待されていなければ「なんで働いているんだろう」と思ってしまう。そのバランスが重要なんじゃないかなと思いますね。

――例えばどんなことをしているんですか?

dely・大竹氏 透明性を高める施策で今やっているのは、2週間に1度の『井戸端会議』。業務上では関わりのない開発のメンバーをあえて集めて「最近どう?」ってところから15分間話してもらう。最初は話すことがないってなるんですけど、最終的には時間が足りなくなるんですよね。それぞれがやっていることを話すから理解が深まるし、インプットにもなります。

――高山さんは、ご自身の経験から個人がアウトプットの生産性を上げるために必要なことは何だと思いますか?

メルカリ・高山氏 いい上司に恵まれることですかね?

DeNA・木村氏 やめなさい(笑)。

高山氏

メルカリ・高山氏 木村さんは私の上司的な人だったんですよ(笑)。具体例はなかなか難しいんですけど、メルカリもDeNAも、経営陣や上司の発言に「本気で言っているんだな」って納得できる瞬間があって。組織を信じられることは大事で、頑張ろうって思えるし、パフォーマンスにも影響します。

DeNA・木村氏 エンジニアの多くは、エンジニアになりたくてなっているんですよね。だから「どういうモノづくりをしたいのか」をかなえて、そこに集中させるのは重要だと思います。最近マネジャー陣と「エンジニアの原体験って何だろう」って話をしたんですよ。いろいろな職種がある中でエンジニアになろうと思うのは、モノを自分で作れて、それが動いて、いろいろな人に使ってもらえるとか、動いているのを見るのが楽しいとか、そういうところだなと。だったら同じような原体験が振り返れるような組織にするのがいいよねって話をしたんです。

だから作ったものに対して、利用者からどんな反応があって、事業がどう儲かったのかっていう話は全部知るべきだし、その後に「僕だったらこうします」って意見がきちんと言えて、それが反映されることは絶対に担保してあげたい。個人がどれだけのインパクトを世の中に与えられるのかって軸で考えてほしいですね。あらゆるものに対して何となくの惰性で考えるのではなく、自分の意思があってここにいるっていうのが実感できるようなフォローをしてあげたいと思っています。

楽天・絹川氏 DeNAさんの『シェイクハンズ制度』での「別の事業部に行ってしまうのは、もともとの組織に魅力がなかった」という話は、会社も一緒だと思っています。その人がどれだけ成長できるのかを見せ続けられる組織であれば、一緒に成長していける。個人と組織が沿っている間は一緒にいればいいし、そうでなければどんどん旅立っていけばいいのかなと思いますね。

取材/伊藤健吾 文/天野夏海 撮影/秋元 祐香里(編集部)

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