Vol.631

LINEが京都に新オフィスを開設! エンジニアファーストな“場”作りへのこだわりとは?

LINE・池邉氏&和田氏

左から、LINE株式会社 上級執行役員 サービス開発担当/池邉智洋氏、京都開発室 室長/和田充史氏

2017年9月、京都オフィス開設の計画を発表したLINE。2018年春のオープンに向け、今まさに立ち上げ準備を進めている。

国内の開発拠点としては、東京、福岡に続いて3つ目となる京都オフィスのメンバーは、全員エンジニアを予定している。そのため、よりクリエーティビティーを刺激する“エンジニアファースト”なオフィスにするべく、工夫をこらしているという。

京都という場所を選択した背景にも、LINEならではのこだわりがある。単なる拠点展開にとどまらない、さまざまな思惑を秘めた京都オフィス立ち上げ背景について、同オフィス開発室長に就任した和田充史氏と、サービス開発分野全体を統括する上級執行役員の池邉智洋氏に話を聞いた。

世界からの目線で見れば、KYOTOはTOKYOに匹敵する知名度を持つ都市

そもそも、なぜ京都なのか? まず第一の理由が、京都のグローバル性だと池邉氏は言う。

「LINEは、そもそもグローバルなメンバーによって動き出した企業ですし、今ではその事業展開もワールドワイドになりました。技術部門を筆頭に、多国籍なメンバーが活躍をしてもいます。

そう考えれば国際的に知名度の高い京都を拠点に選ぶことにも意味があるんです。もともと京都含む関西地方には、技術的にスキルの高い人材は豊富ですし、拠点を持つことで彼らとの交流の場を設け、ひいては採用にもつなげていきたいと思っています。

また、現状約10名を予定している立ち上げメンバーは、東京や福岡で開発に携わっていたエンジニアから選出したのですが、結果として半数が外国籍(英国、台湾、ドイツなど)になりました。働き慣れた環境から移動するとなれば、生活上もさまざまな変化が発生するわけですが、『KYOTOならば喜んで行きたい』という外国人エンジニアが少なくありませんでした。

今後もLINEに参画し、活躍するエンジニアが各国から集まってくることは容易に想像できます。日本のカルチャーを象徴するKYOTOで働くことを、彼らはきっと特別な価値として受けとめてくれると私は考えています」(池邉氏)

一大商圏でもある関西エリアに拠点を構える場合、大阪を選ぶ企業も多い。しかし、京都と大阪は至近距離のロケーション。また、駅を出るとすぐにビジネスエリアが広がっている利便性、また優秀な人材を輩出する大学が密集している点など、京都に拠点を置くメリットは多いと池邉氏。

池邉智洋氏

「新卒採用も強化していく方針ですから、京都に拠点を持つことで、京都を中心にした優秀な学生とのタッチポイントを増やしていく狙いもあります。

また、京都に開発拠点を持つ会社はまだまだ多くはないので、学生にとっても貴重な就業体験の機会を提供していければと思っています。既に他のオフィスで実施しているような就業型の中長期インターンシップも行う予定なので、LINEの開発の現場をたっぷり体験できると思います」(池邉氏)

一方、京都オフィス立ち上げプロジェクトを一任され、同オフィスの開発室長にも就任した和田氏はこう説明する。

「私は2014年からLINE Fukuokaに勤務していますが、福岡はもともとバックオフィス系業務を主体とするオフィスとしてスタートし、そこに後から開発部門を立ち上げ、現在の100名規模の組織にまで成長させてきました。

ところが今回の京都オフィスは違います。立ち上げ時に開発チームのみしかいない拠点を作るのは、LINEとしても初の試み。関西エリアを意識しつつも、同時に世界へ向けて開かれた全く新しい拠点としてスタートします。ですからオフィス空間のあり方や、用意するインフラについてもこだわりを持って準備しているところです」(和田氏)

京都オフィス開発チームがまず担うのはAIアシスタント『Clova』の機能開発から

和田氏が京都オフィスの空間作りでこだわったポイントは2つ。一つは「コミュニケーションが生まれる場」にすることだ。

「LINEというメッセンジャーアプリに示されるように、我々はコミュニケーションを軸に価値を提供する集団ですから、作り手同士のコミュニケーションは最も重視しています。エンジニアが集う新オフィスを開設する以上、この点を第一に考えて内装やレイアウト、設備の検討を進めてきました」(和田氏)

オンライン・コミュニケーション・ツール『LINE』の会社であるからこそ、オフラインでのやりとりにしかないアドバンテージを重要視している。それがLINEという集団の大きな特徴でもあるのだと和田氏。生身のコミュニケーションを通じて熱量の高い議論をしてきたからこそ、これほどにユーザーのハートをつかむサービスを生み出すことができたという自負がある。

では、もう一つのこだわりとは何か? それは、エンジニアのクリエーティビティーを刺激する仕掛け作りだという。

「近い将来、多様な開発プロジェクトが京都で展開されるようになると思います。けれども立ち上げ時には、あえて全員同じプロジェクトに参加する形にしました。共通のミッションを追い、1つのチームとしての認識を高めるため、立ち上げメンバーたちはまずは全員で同じプロジェクトに取り組みます。あとは、自分の手でこのオフィスをより創造的な空間に仕上げていくための“あそび”も用意しています」(和田氏)

京都の立ち上げメンバーがまず初動として参画するのは、AIアシスタント『Clova』プロジェクトだ。2017年にはスマートスピーカー『Clova WAVE』や『Clova Friends』が相次いで発売されており、同社の中でも最も先進的な取り組みを実施しているプロジェクトになる。京都のメンバーはオフィスの立ち上げ時には、このClovaのスキル領域(機能)の開発を他のオフィスとも連携して担うという。

オフィス内の設備の中には、さまざまなものを電子制御できるようインフラだけを整え、後からエンジニアが作り込めるように「あえての余白」も残す予定だ。メンバー自身が創意工夫をこらし、機能的で楽しく、働きやすい空間を作り出すことで、仕事における創造性も増進していければという狙いもある。

「例えば音声で室内の照明を変化させたり、ドアの開閉を行ったり、といったオフィスになるかもしれません。どうなるのかはいずれ判明しますから、楽しみに待っていてください(笑)」(和田氏)

東京一極集中型のエンジニア文化にも一石を投じたい

ところで、立ち上げリーダーの重責を和田氏に託した背景には何があったのか、池邉氏に聞いてみた。「一言でいえば『おかわり』ですよ(笑)」と笑いながら即答する池邉氏に、意味が分からず問い直すとこう説明してくれた。

「要するに、福岡での和田の実績を買って、今度は京都でも皆を導いてくれ、ということになったんです。東京主体であらゆる事業をコントロールしていたLINEが、LINE Fukuokaを正式に設立したのは2013年11月。特に技術部門の組織構築を任せられる人物を探し求めていた時に出会ったのが和田でした。

私たちが人材に常に求めている“自立自走”という資質を彼は持っていた。だから彼に『よし、任せてみよう』と思えたし、任せた結果、ほんの数年でLINE Fukuokaに非常に良い開発チームを作ってくれました。少数のスターがリードする組織ではなく、チームとして機能することを我々は重視しています。このチーム力こそがLINEを形作ってきたと思っていますから」(池邉氏)

「おかわり」の一言に込められた最上級の賞賛。それを耳にして照れ笑いを浮かべた和田氏も、こんなふうに応える。

和田充史氏

「当時の私は、東京での起業に失敗して、故郷の福岡に戻ったところだったんです。『自分の会社でやりきれなかったことをやり尽くすつもりですけど、いいですよね?』と聞いたら、池邉も出澤(剛氏、LINE代表取締役社長)も『いいよ』と。私なんかに重責を担わせてくれるというのだから驚きました。LINEという会社は普通じゃないなと(笑)。

ですから、今回の京都でのチャレンジについても、指名を受けて率直にうれしかったですし、エンジニアのみで拠点を立ち上げるという初の試みと、京都オフィスに託されたミッションに楽しみながら取り組んでいます」(和田氏)

冒頭で、京都オフィス開設の背景には、社内の多様な人材の活用と採用強化の意図があると池邉氏は語った。が、LINEはさらに大きなテーマも見据えている。エンジニアの働き方改革をリードするムーブメントとしての役割も、京都オフィスのミッションとして掲げているという。

「日本ではエンジニアが地方で働く場合、どうしても賃金や待遇面で東京との差が歴然とある。やりがいのある仕事に、納得のいく条件で携わりたい思えば、東京でしかかなえられないケースが大半でしょう。今の時代、U・Iターンを望むエンジニアも決して少なくはないにも関わらず、です。

でもLINEの拠点であれば、何も東京に出て行く必要はない。どこにいようと携われる開発案件も給与テーブルも変わりはありません。そういう環境を用意し、実行することができる、ということをすでにLINE Fukuokaが実証しています。京都オフィスでももちろんそうですし、こうした地方拠点の開設によって、この国のエンジニアの働き方を変えていけたらという思いがあります。

そもそも優秀な人材を東京だけに依存して獲得するなんてナンセンスです。U・Iターンを望む社員が出てきたときも、転職ではなく『異動すれば?』といえる環境でありたいと思っています」(池邉氏)

「グローバルなスケールで開発者同士が連携することなど、すでに当たり前になっているのに、池邉が指摘したように、日本国内では労働環境の地域差などもあって遅れてきたと思います。ですから、収入や待遇が東京と変わらない中で働けることは非常に意義あることだと思います。

ただし、課題もあります。例えばエンジニア同士のオフラインのコミュニティーや勉強会の開催などは、やはり地方よりも東京の方が圧倒的に充実しています。成長意欲の高いエンジニアは、社内での仕事だけでなく、社外での活動を通じて技術をより向上させたり、有効な人脈を形成したりしていますから、今後私たちが目指すべきテーマの一つとしては、そうした学びの機会の東京一極集中も解消していくことです。

そうした思いから、京都オフィスにはイベントスペースも併設しました。どんどんエンジニア向けのイベントを開いたり、またイベントを企画している社内外のエンジニアさんに場所などを提供していき、海外の人材も含め、多くのエンジニアが京都というエリアに注目し、足を運ぶようなムーブメントをLINEが起こしていく。それが成功すれば、一企業の地方拠点開設、という枠を超えて大きな成果につなげていくこともできると思っています」(和田氏)

オフィス開設前ではあるが、すでに2017年の秋から『LINE Developer Meetup in Kyoto』というエンジニア交流イベントを京都市内で次々に開催している。京都は世界的にも特別な都市。だからこそ可能になることがある。LINEが新たに設けるタッチポイントは、想像を超える大きな変化を広い範囲で起こしていくかもしれない。

取材・文/森川直樹 撮影/小林 正(スポック)

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