【特集:SEを辞める日】
1.危機に瀕するSIer業界。SEはどう対処する?
2.元SIer勤務者の転職から、ポスト業務系SEの進む道を探る
3.SIerに残るなら、“問題発掘型人材”になれ
【特集:SEを辞める日】
1.危機に瀕するSIer業界。SEはどう対処する?
2.元SIer勤務者の転職から、ポスト業務系SEの進む道を探る
3.SIerに残るなら、“問題発掘型人材”になれ
わずか2年の間に4000億円の市場が消失――。
それが国内SIサービスの売り上げを指していると気付くSEは、どれだけいるだろう。経済産業省が毎年2月に公表する特定サービス産業動態統計調査によると、情報サービス業の業務種類別売上高のうち、国内SIサービス全体の売上高は、2009年に対前年比5.7%減。続く2010年も4.0%減と2年連続でマイナス成長を続けている。
この原因を景気減速による新規案件の減少や、案件単価の下落に見いだすことはたやすい。しかし、わずか2年の間に約4000億円という巨大な市場を失った理由を、景気だけに求めるのは正しいことなのだろうか。
「この先、景気が回復しても受託型SIerのビジネスモデル崩壊は避けがたい。SIer業界が抱える構造的な課題こそ、真の要因だ」
そう指摘するのは、ITジャーナリストの田中克己氏だ。
「売上高1000億円以上の大手SIerに注目してみるとよく分かるのですが、2008年から2009年にかけての営業利益は、軒並み20%程度減少しています。大手SIerの経営陣にたずねても、”固定費の削減”といった内向きの施策しか聞こえてこないケースが多い。従来のような受託型SIerのビジネスモデルは危機に瀕しています」
新規受注の減少が改善されなければ、SEも社内待機時間の増加や、収入減少、最悪の場合リストラという事態も考えておかなければならない。
「今でこそ約400億円規模とそれほど大きくありませんが、開発や運用案件の多くを人件費の安い海外に移転する『オフショア化』は止めようがありません。そうなれば、受託開発を担うSEは苦境に立たされることになるでしょう」
置き換え可能なSEから脱却し、将来をいかに切り拓いていくか。受託開発に勤しむSEの多くは今正念場を迎えている。ただし明るい兆しもないわけではない。「クラウド・コンピューティング」の台頭による新たな市場の広がりだ。
国内のクラウド市場は、2009年から2014年の年間平均成長率は35.6%、2014年の市場規模は2009年比の4.6倍、1432億円になるという予測が出るなど、SIer業界の期待は日に日に大きくなっている(2010年IDC Japan調べ)。
事実、開発・運用コストの削減、開発から稼働までの期間短縮といった目に見えるメリットを享受できるクラウドは、SIer、ユーザー企業の双方にとって福音をもたらす可能性が高い。さらに開発環境のクラウド化が進展することで、SE自身の仕事も効率化する見立てもある。
しかし今後、あらゆるシステムがクラウド化されれば、クラウドが持つ価値は確実に普遍化していき、競争相手の増加、価格競争の激化を招く。対応の仕方次第では、利幅の薄いサービスが経営資産を食いつぶすという事態も起こりうる。
SIerが越えなければならない壁があるとすれば、それは新たな収益源を確保し、過去のビジネスモデルから脱却することに尽きるだろう。そのカギとなるのがSEなのである。
SIerが、より付加価値の高い領域に収益源をシフトさせようとすれば、おのずと開発の上流工程を担う「コンサルタント」や「アーキテクト」を任せられる人材を増やさなければならない。プログラマとSEの境界線上にいる付加価値の低いエンジニアに残された席は、もはやあまり残されていないのだ。
今後SEには「ITのプロ」たるSEから「IT+ビジネス」、もしくは「IT+α」といった付加価値の高いSEへの進化が求められるようになるだろう。
この進化に応える意志を持つSEには、業種、業界、職種を越えた多様なキャリアの「選択肢」が用意されるはずだ。次回以降は、SEの生き残り戦略を実例とともに考察していこう。
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