Vol.289

ドローンは物流だけでなく表現や広告も変える~日本屈指の「ドロニスト」森正徳氏に聞く可能性とリスク

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昨年話題になったアメリカのロックバンド『OK Go』のミュージックビデオ。その演出にも用いられ、注目を集めたのが「ドローン」だ。

その応用の可能性については、広告、アートなどあらゆるクリエイティブな領域でクリエイターが模索を行っている。そんなドローンを巧みに操るプロフェッショナル「ドロニスト」を肩書きに、大手クライアントの案件を手掛ける人物と出会った。

イメージソースの森正徳氏、その人に、ドローンを操る上で求められる専門性、今後ドローンによって起こる「発明」について話を聞いた。

株式会社イメージソース  ドロニスト 森 正徳氏2006年に株式会社イメージソースに入社。以来、テクニカルディレクターとして、企業のデジタルマーケティングの企画開発を手掛ける。現在は主に、空間全体の演出を行うインスタレーション案件など、顧客企業からの「こんなことできますか?」というリクエストにテクノロジーを駆使して応え続けている

航空力学、空気力学、航空法……ドロニストに求められる専門性は?

―― 森さんが考えるドローンの特徴は何でしょうか。

ドローンにはHD (高解像度)のカメラが実装され、撮影された映像は、カメラに挿入したSDカードに収録されるのと同時に、連携するiOS・Androidデバイスに電波伝送されます。ですから、FPV(First Person View)、つまりドローンの視点で操縦できることがその特徴です。

これにより、扱う人は、無人のドローンに擬似的に搭乗し、航行はもとより航空撮影を行うことができます。「ドロニスト」は、ドローンを巧みに操る「操縦者」であり「演技者」と言えます。

―― ドロニストとしての醍醐味は。

やはり「空撮」でしょうか。

ドローンが自分の目となり、また空中を自由に飛行することができます。秒速約6メートル(時速約20キロメートル)で上昇し、あっという間に高度100メートルからの景色が地上に居ながらにしてHDで観れたりします。画面(操縦)に集中すると、本当に空を飛んでいるかのように感じられることも。VRヘッドセットのOculus Riftなど、デバイスをFPVに活用することもそれを後押ししますね。

―― そんなドローンを使用して、発泡酒『キリン オフホワイト』のプロジェクトを手掛けられました。

『KIRIN オフホワイトハウス』は、“ていねいなくらし” をテーマに、ドローンをハトに見立てて人々の暮らしを取材し、お届けするプロジェクトです。このアイデアを実現するべく、筐体の色や形、機能面でも『Phantom 2』が適しているのではと考え、検証や現地でのテスト飛行、 テスト収録を順調に繰り返していきました。

<プロジェクトで使用されたマシン>
■ドローン:Phantom2 Vision+ (DJI)
■PC:MacBook Pro (Apple)
■FPV:iPhone 5s (Apple)

キリンのプロジェクトで実際に制作されたハト型のドローン
キリンのプロジェクトで実際に制作されたハト型のドローン

ドローンのボディーを極限までハトに近付けるために、頭や尻尾の造形を装着するなど試行錯誤を繰り返したのですが、3Dプリンターで出力したナイロン素材の尻尾の重みで重心が大きく後方に偏ってしまいました。

取り付けてテスト飛行をするも、今にもバランスを崩してしまいそうな状況でした。そこで、何か軽くする方法がないかと造形の方に相談したところ、中空の造形を作れるということに。重さは最初の約10分の1以下となり、安定して飛行できるようになりつつ、ハトとしての見た目、キャラクターも確立することができました。

ちなみに、公式映像にはハト自身の姿も収録されるため、監督からは「ハトのような演技もほしい」とリクエストがあり、ドロニストとしての腕が試されました。ドローンは魅力的な出演者にもなり得るという意味で、ドロニストは「演技者」でもあるのです。

―― ドローンならではの制作の難しさは何でしょうか。

安全に、そして安定して飛行させることです。初歩的な航空力学や空気力学はもとより、有人ヘリコプターの操縦ノウハウも参考にしました。

ドローンがどのようにして飛んでいるのか、どのような事象が不安定を引き起こす原因となり得るのかなど、ドローンの “しくみ” を把握することも重要でした。

航空法やGPS航行のメリット、デメリットに関する知識も欠かせません。例えば、GPSの水面反射波による障害や、圏外・圏内が切り替わる時に発生する障害など、必要な知識や技術ノウハウは多岐に渡ります。

ハト型ドローンを使った実験の様子
ハト型ドローンを使った実験の様子

―― 最近ではドローンの規制に関する議論も起こり始めています。安全面ではどのようなことを心掛けるべきでしょうか。

何の知識もなく、ラジコンカーの感覚で飛ばすと、あっさり墜落や衝突に遭遇します。機種などにより重さはまちまちですが、赤レンガを半分くらいにした重さの物体が、数メートル~数百メートル上空から真っ逆さまに落ちてきます。想像するだけで恐ろしいです。

ドローンが大破するのはもとより、人や人の財産を傷つけてしまう可能性があることを念頭に置いておく必要があります。もちろんそうした事態が起こらないことが一番ですが、万が一の時のために使用する際は必ず保険に加入しましょう。

ドローンは、空中で余裕を持って浮遊しつつ、自由に飛び回る必要があるので、想像できないくらいのエネルギーを備えています。そのため、高出力のモーターに加え、高出力・大容量のバッテリーを備えています。機種にもよりますが、ドローン自身が全速力を出し続ければ高度数千メートル、距離数十キロも移動できるポテンシャルがあり、追い風が吹く場合はそれ以上に及びます。

仮に何らかの原因でそれが操縦不能になり、全速力で飛んで行ってしまったとします。数十秒で見えないくらい遠くまで行ってしまうのです。バッテリーの残量がなくなれば、やがて墜落してしまいます。異常時にGPSを頼りに離陸ポイントまで戻ってくるようなフェイルセーフ機能を備えた機種もありますが、これはあくまで万が一の時のためのものであり、必ずしも安全かつ完璧に働くわけではありません。

GPSも電波の受信状況により刻一刻と精度が変動しますし、鏡のような水面の上では反射波で誤作動する可能性もあり、GPS航行にもデメリットがあります。

法律で言えば、ドローンの位置付けが「UAV(Unmanned Aerial Vehicleの略。無人航空機のこと)」なのか、ラジコン模型飛行機なのかの解釈でいろいろ変わってくると思いますが、上空250メートル以上の高さの飛行禁止や、空港近辺ではそれ以外の規制があることも覚えておかなければなりません。

ドローンの進化の先に起こる「発明」とは?

―― 森さんが「秀逸だ」と感じた、海外のドローン活用事例を教えてください。

3つあります。1つめが、ハードウエア会社KMel Roboticsが映像で公開した、ドローンによる音楽の演奏「Flying Robot Rockstars」(※以下の動画)。

2つめが、そのKMel Roboticsが開発したドローンを使ってペンシルベニア大学の『Grasp Lab』が行った編隊飛行の実験「A Swarm of Nano Quadrotors」(※以下の動画)。


最後の3つ目が、トヨタ自動車の『レクサス』とKMel Roboticsがコラボレーションして制作した動画広告「Amazing in Motion – SWARM」です。いずれも、綿密に作られたドローンとその制御に惚れ惚れします。

―― 注目しているマシンや最新の技術は?

DJI社のドローン『Inspire 1』です。最大で4K / 30fpsの動画撮影や、GPSの届かない屋内でも安定飛行を可能にするセンサを搭載するなど、現行機よりも格段に機能が向上しています。

また、「ドローン」+「インターネット」+「bubl(全天球カメラ)」+「Oculus Rift」ですごい体験が生み出せないかと試行錯誤しています。

森氏の頭の中にはすでにたくさんのアイデアが浮かんでいるようだ
森氏の頭の中にはすでにたくさんのアイデアが浮かんでいるようだ

―― ドローンは今後どのように活用されていくでしょうか?

無人であるがゆえに、今後無限の可能性があると思います。

特に屋外やスタジアムのような広いフィールドで活躍するでしょう。現在のGPS航行に加え、センサリング技術や解析技術の発達で、ドローン自身が周辺の障害物をリアルタイムに把握でき、人々にとって安全な自立航行ができるようになれば、今までにない空中で活躍する高性能なロボットが登場してくるはずです。

屋内に限らず屋外でも、空間距離センサーや画像解析で障害物を回避しつつ安定して安全に自律飛行しているかもしれませんね。そのためには、ドローン同士や鳥と衝突することを回避する技術も必要かもしれません。

バッテリーが減れば自動で充電ステーションに向かったり、はたまたハトのように電線にとまって漏洩磁界を元に充電したり。海外では、墜落時に自動的にパラシュートを放出する装置の開発も進んでいるようです。

企業のデジタルマーケティングに活用するならば、ドローンに編隊を組ませたいですね。数千台の動きをものすごく緻密に制御し、空中に立体の光のサインを浮かび上がらせたり、打上げ花火のような光のショーをしたり、スモークで空に文字や絵を描いたり。海外では巨大な操り人形を複数のドローンで動かすような特許も申請されたようですし、さまざまな使い方が発明されてくると思います。もちろん私も、発明したいと思います。

取材・文/岡 徳之(Noriyuki Oka Tokyo

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