Vol.2

[特集:SEを辞める日②] 元SIer勤務者の転職から、ポスト業務系SEの進む道を探る

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かつて大手SIerのSEとして活躍していた今田忠博氏が、SIerのいちSEとしての立場に限界を感じたとき選択したのは、ITアーキテクトへの転身だった。

「前職では、研究所が提案してきたアイデアが、ビジネスにどう応用できるか検証するプロトタイプの開発をしていました。まだ市場にないものを実験的に作るのが”プロトタイプ”ですから、面白さはある反面、開発したものが世に出ないというもどかしさが常に付いてまわります。非常に狭い裁量の中で、10年先の自分の姿を想像しようとしても、まったくイメージが湧きません。成果を実感しづらい環境から抜け出すにはどうしたらいいか。徐々にそう思うようになっていきました」

いちSEがシステム全体の最適化を目指しても、その権限は限られている。その上、ほかの誰かが定めた前提条件が間違っていれば、どんなに頑張っても成果は実を結ばない。仕事を通じてそんな徒労感を感じることも少なくなかったという。

「渡された仕様書を満たすことはできます。でも自分が担当した範囲だけまっとうしていれば良いという考え方にはどうしてもなじめませんでした」

システムの全体最適、ひいては顧客が抱える問題点をきちんと把握した上で、解決策を示したい。そんな思いを叶えるため転職に踏み切った。

「前職の会社にはそういうポジションはなかったので、外に新天地を探すしかありませんでした。そこで当時から興味があったオブジェクト指向やITコンサルティングに深くかかわれる仕事を探すうち、出合ったのが今の会社です」

現在、今田氏はITコンサルティング会社の豆蔵でITアーキテクトを務めている。

「今の職場では、顧客のIT部門と協力しながらベンダー各社をとりまとめ、顧客の代理人として動きます。プログラミングから業務分析、フレームワークの開発、そしてコンサルティングと、プロジェクトによって担当する範囲は変わりますが、システム開発の目的・全体像を見据えながら仕事ができる環境です。実装ができない人に設計はできませんし、設計ができない人に要件定義はできません。また、要件定義ができない人に業務効率化はできないでしょう。そういう意味で言えば、今の自分の根底には前職での経験があるわけで、当時SEとして身を粉にして働いたこと自体に後悔はしていません。ただ、誰がやっても同じの『換えの利く仕事』に戻りたいとは思いませんね」

「役立つシステム作り」を突き詰め、ユーザー企業の情シスに転身

一方の湯本堅隆氏も、SIerで経験を積むうちSIerが置かれた立場に限界を感じ始めた一人だ。しかし前出の今田氏とは異なる方法で、事態を打開することになる。

「顧客である情報システム部の方々と仕事をしていく中で、”本当に現場で必要とされているシステムを作れているか”という不安が、いつも頭のどこかにありましたね」

湯本氏がそうした思いにとらわれるようになったのは、業務改善のためにプロセスを見直し、きちんと最適化されたはずのシステムが、現場では見向きもされないといった光景を何度も目にしたことが原因だった。

「システムを実際に使っているエンドユーザーの顔を見ることができないことも不満でした。案件が終われば、その後システムの受託開発業者がかかわることはありません。顧客の業種が変わっても、自分の立場がエンジニアからコンサル、PMと変わっても、その不安じみた不満は解消されませんでした。なんでだ?と考えた時に、本来自分がやりたかったのは、検証と改善を推し進め、より良いシステムを作っていくこと。つまりシステムを自分の手で育てていくことだったんだと気付いたんです」

SIerに限界を感じ始めていた湯本氏に転機が訪れたのは、ホームウエアや日用雑貨の卸小売業エフ・ケーコーポレーションのWebサイト制作を引き受けたことだった。この仕事がきっかけで同社の情報システム担当にならないかという誘いを受けたのだ。

「社長のそばで経営も学べるし、今まで培ってきた技術を使って、最初から最後までシステムを構築することができる。何よりも自分が手掛けたシステムが、売り上げや業務改善に貢献する姿をこの目で見ることができます。そこに魅力を感じ、入社することに決めました」

今は同社の情報システム部門で、あらゆる業務の効率化を進めている。

「一人ぼっちの情報システム部なので、いわば”Dr. コトー”みたいなもんです。考えるべき事も多いですし、手も動かさなければならないので大変な面もありますが、SIer時代に感じていたストレスはなくなりましたし、気持ちも前向きになりました。失ったのは、ストレス解消のための飲み会ぐらいですよ(笑)」

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