キャリアVol.640

初代アイコンは紫色だった?! 開発エンジニアたちが振り返る『LINE』進化の歴史、舞台裏トーク

LINE開発エンジニア

「“大切な人”とつながるグループコミュニケーションサービス『LINE』登場」

そんな謳い文句でLINEがサービスリリースを正式発表したのは2011年6月23日。当時は、チャットという基本中の基本である機能のみで、通話機能やスタンプさえも実装されていなかった。とにかく、キャリアを超えて「つながる」ことが『LINE』の売りだったといえる。

その後、スマホ普及の加速を背景に、『LINE』はあっという間に爆発的な支持を得る。2017年7月に総務省より発表された、日本における代表的SNSの利用率に関する調査データ(出典:情報通信白書)によると、『Facebook』32.3%、『Twitter』27.5%と並ぶ中、67.0%という圧倒的な利用率を示したのが『LINE』だ(※いずれも2016年現在の数値)。

『LINE』の2017年末時点のMAU(マンスリー・アクティブ・ユーザー数)は、日本国内で7300万人、主要4カ国(日本・台湾・タイ・インドネシア)では1億6800万人にも上る。圧倒的なユーザー数を誇る『LINE』の強さとは、どこにあるのか? サービス立ち上げ時から開発に携わっている3人のエンジニアに、『LINE』の進化の歴史を振り返ってもらいつつ、その魅力の源泉をひも解いてもらった。

LINE株式会社 開発1センター LINE開発1室 B Partチーム 熊井隆一氏『LINE』開発プロジェクト立ち上げ時から、iOSアプリ開発担当として参画。現在は、Botサービスのプラットフォーム開発を担当している

LINE株式会社 開発1センター LINE開発2室 App Dev 2チーム クリストファー・ロジャーズ氏『LINE』開発プロジェクトの初期メンバーであり、現在も継続して iOS アプリ開発を担当している。ネットワーク通信、データベース周り、スタンプ機能など、『LINE』のあらゆる領域に通じている

LINE株式会社 開発1センター LINE開発1室 P Partチーム マネージャー 佐藤春旗氏大手インターネットサービス企業からLINEへ転職し、2013年9月より『LINE』のサーバーサイドを担当。『スタンプショップ』『LINE STORE』『LINE Pay』などの開発に携わっている

開発プロジェクト名は「みどりトーク」。幻の初代アイコンは「紫色」

――まず、『LINE』の開発がスタートした背景について教えてください。

熊井隆一氏(以下、熊井) 2010年の終盤、まだいわゆるガラケー利用者の方が多かったものの、NAVER Japan(現LINE)社内にはスマホを前提にした3つのサービス、「コミュニケーション」「カメラ」「ゲーム」を方針にサービスを検討していこうという気運が高まっていました。この流れの中で、3つのうちの「コミュニケーション」サービスの一手として『LINE』の企画検討が進んでいったんです。

――翌2011年3月には東日本大震災が発生しました。緊急時には電話やメールはつながらず、家族や友人と連絡を取る手段がなくなる、という実態が浮き彫りになった時期ですね。

熊井隆一氏

熊井 そうですね。TwitterなどのSNSの台頭によって、趣味嗜好を共有する「見知らぬ仲間」とネット上でつながる動きが広まり始めていた一方、肝心の家族やリアルな友人知人とつながる手立てが実は限られていたことに皆が気付いたきっかけだったと思います。

実際、そこに着目して4月から『LINE』開発がスタートしました。結果、6月にはリリースした強行スケジュールでしたから(苦笑)、ひたすら大急ぎで作っていった感じです。この開発初期メンバーとして、僕とロジャーズさんは参加していました。担当はiOSアプリの開発です。

クリストファー・ロジャーズ氏(以下、ロジャーズ) 僕も当初は別のiOSアプリのプロジェクトにいたんですが、震災の影響もあってそのプロジェクトがなくなり、『LINE』のチームに急遽アサインされた形でした。

――開発チームの初期メンバーは何人くらいいたんですか?

熊井 当初はiOSチームが僕らを含めて4人、Androidチームが2人、サーバーサイドが5~6人という規模でしたね。

ロジャーズ 『LINE』というサービス名が決まったのもリリース直前で、当初はみんな『みどりトーク』って呼んでいましたね(笑)。

熊井 NHNもNAVERもコーポレートカラーが緑だったので、とりあえずの仮名で『みどりトーク』(笑)。でもなぜか、リリース前に最初に作った『LINE』のアイコンは紫色でした。

ロジャーズ そうだったね!(笑) でもみんな、「何かイマイチ……」って反応で、最終的には緑で落ち着いたんです。

――いまや月間のアクティブ・ユーザーが主要4カ国で1億6800万人を超えるという『LINE』ですが、2011年当時の日本には、携帯やスマホでチャットをする文化・習慣はまだ定着していませんでした。開発にあたって、何か海外のアプリを参考にしたんですか?

熊井 既に欧米では『WhatsApp』(2009年リリース)がありましたし、韓国では『カカオトーク』(2010年リリース)も生まれていましたけれども、特に「参考にしてみよう」という発想はなかったですね。基本的なUIも自分たちで工夫して作成していって。そもそも日本国内には、モバイルでチャットのサービスを提供するような大手のプレーヤーはいなかったので、まさか億単位の人が使うようになるとは、当時のプロジェクトメンバーは誰も思ってませんでした(笑)。

ロジャーズ もちろん真剣に開発はしていましたけれど、あの頃僕らが言っていたのは「100万人くらい使ってくれるといいね」みたいなレベルでした。

立ち上げからわずか半年で1千万DL達成、翌年にはマネタイズにも成功

――リリース後は、あっという間にユーザーの支持を得ましたよね。2011年10月に初めてスタンプ機能無料通話が実装されるとダウンロード数は一気に跳ね上がって、12月には1000万を、翌2012年3月には2000万を超えています。さらに4月、有料で各種スタンプを提供する『スタンプショップ』が開設され、マネタイズにも大成功しました。

ロジャーズ ローンチの時も忙しかったのですが、やっぱり今までで一番タフだったのは、この『スタンプショップ』をスタートする時でしたね。

LINE初期のスタンプ画像
2011年10月4日のアップデートで、絵文字117種類・スタンプ47種類・顔文字全90種類を追加。文字だけの会話よりもさらに気持ちが伝わりやすくなり、会話する楽しみが広がった

熊井 それまでにも、とにかくいろいろな機能やサービスを搭載して、トライ&エラーを繰り返していたんです。エンジニア側で「あれをやってみよう」というのもあったし、企画サイドから「あれをやれ、これもやってくれ」みたいな注文が次々降ってきたし(笑)。

ロジャーズ メッセンジャーアプリとしての機能拡張と、『LINE』をプラットフォーム化してさまざまな機能を追加していくという2つのトライが並行して動くようになったのが2012年なんです。8月にはタイムラインを、翌2013年には着せかえ機能ビデオ通話機能を次々と実装していきました。

――スタンプが定着してビジネスとしても成長路線を突き進み始めた2013年に、佐藤さんは『LINE』プロジェクトに参画したんですよね?

佐藤春旗氏(以下、佐藤) はい。まさに、最初に担当したのが『LINE STORE』でした。

――おそらく2013年頃には『LINE』は日本で最も成功したスマホアプリであり、タイや台湾など世界各国でもヒット。ちょうど社名も今のLINEに変わりましたし、社内的には最も先進的な取り組みをする「憧れの部署」的な存在だったでしょうね。

佐藤春旗氏

佐藤 うーん(笑)。

熊井 「大変なところに来ちゃったなぁ」って気持ちの方が大きかったんじゃない?(笑)

佐藤 いやいや(笑)、私自身の気持ちとしてはうれしかったです。当時はスマホの普及も本格化して、いろいろなアプリがヒットしたりしていましたけれど、「収益は出てるのか?」という観点が重視され始めてもいました。そんな中で、『LINE』はきっちりマネタイズを確立しようとしていましたから、エンジニアとしてもそういうサービスに関われることは喜びでした。

僕が先ほどのご質問に素直に頷けなかったのは、大ヒットしているサービスだからこそ、必ずしも最新の技術ばかりをイジれるわけではない、という点をお伝えしたかったんです。実際には僕もその後、『LINE Pay』(2014年12月に実装)を担当して技術面でも刺激的な仕事ができているし、熊井さんも今は『LINE』でBotが作れるMessaging API(2016年9月から正式提供)を担当していますよね?

熊井 うん。佐藤さんが言うように、『LINE』が『LINE』であるための基本機能や、サービスを安定提供するという部分では、技術の先進性が必ずしも必要とはされない。でも、プラットフォームとしての『LINE』に盛り込まれていく新しい機能やサービスでは、当然最新の技術も扱う機会が増える。ただ、何よりも大事にしているのは、「ユーザーにとってどうなのか?」っていう視点だよね。

佐藤 そう、そこです。『スタンプショップ』で一般の方がスタンプを販売できる『Creators Market』が始まって、スタンプの数が激増した結果、サーバーでもクライアントでもトラブルが出た時期があったんですけれど、「ユーザーに使ってもらえる状態にすることが第一」ということで、しばらく新しい開発はストップして、復旧に全力投球しました。これってLINEという会社のカルチャーでもあるけれど、特に『LINE』関連のエンジニアが叩き込まれるポイントですよね。

誰よりも自分たちが「ヘビーユーザー」であることが、「ユーザーファースト」の源泉

――その後も、2016年には「その他タブ」の大幅アップデートグループ通話機能の実装、ニュースタブの実装など、『LINE』の使いやすさはどんどん進化しています。徹底したユーザーファーストのモノづくり姿勢が、『LINE』成功の大きな要因かと思いますが、他にも開発チームの強みを挙げるとしたら何でしょう?

ロジャーズ 僕がずっと思っているのは、強い人とか弱い立場みたいなものがなくて、エンジニアも、企画も、セールスも、みんな言いたいことをリアルタイムで言い合える雰囲気が『LINE』チームにはずっと存在している気がします。

熊井 ローンチ直後は、近くに座っているCTOがスマホ片手にこっちに向かって歩いてくるとどきどきしましたけどね(笑)。

ロジャーズ 僕らのところに来たかと思うと、無言で画面を見せて「これ、おかしくない?」と顔で語るやつだ!

佐藤 それなら今も健在ですけど(笑)。

熊井 そうなの?(笑) でもだからといって、役員だからどうとか、「どこかの部門がこう言うから従わなきゃ」というような、妙なパワーバランスはないよね。

LINEリリース前画像
熊井氏たち初期の開発メンバーが使っていた、リリース前の『LINE』は背景色が緑色だった。細かなバグを『LINE』で共有しながら開発を進めていったという

ロジャーズ そうそう。エンジニア側から新しい機能やサービスについて「いや、こうした方がさらに良くなる」みたいな発言は当たり前にするし、そういう時、結局は「ユーザーにとっての価値は?」という基準で議論がなされて決着するから、みんな納得もする。サービス開発において、ブレがないのがいいところだと思う。

熊井 自分たちが一番のヘビーユーザーになった、という点も大きい気がする。リリース前から、チームメンバーは開発進捗を『LINE』を使って報告し合っていたくらいで、自分たちこそが最初のユーザーですから。

基本機能のクオリティーの高さとかは、それが要因だと思いますよ。ちょっとでも気持ち悪い動きをしたら、僕たち自身が放っておけないですもんね。

開発チームに語り継がれる伝説のエピソード、「味噌汁事件」と「神の手を持つQA」

――『LINE』関係者にとっては最悪の体験に違いないトラブルが2016年3月に起きましたよね。当時の公式ブログにもありますが、夕方5時過ぎにサービスが利用できなくなり、復旧までに2時間余りを要して、最終的には通信事業者として総務省に経緯報告までしたという最大の障害です。偽造されたLINEの公式を名乗るTwitterアカウントが流したデマによって、さらなる混乱を招いて……。

佐藤 ありましたねぇ。本物の公式アカウントでは「原因不明の障害」と発表していたんですが、ニセのアカウントが「社員がサーバーに味噌汁をこぼしたため」とツイートしてしまい、それが10万人とかにリツイートされて(苦笑)。ほとんどが、ネタ扱いでしたけれども。

熊井 本当は一部のプログラムに小さな問題が生じたのが原因、それが他のシステムにも連鎖していったことで起きた障害だったんです。

ロジャーズ 復旧作業を大人数でやっていましたから、訂正するどころじゃなかったんですが、元通りになってからその話を聞いた時にはびっくりしました。他にもいろんなデマが飛び交っていたし(苦笑)。

佐藤 今、サーバーサイドを担当しているので、自分たちが背負っている責任の重さというのを、特に思い知らされた事件でした。

――ユーザーが爆発的に増えたことで、ローンチ翌年の2012年あたりは、年末年始に『LINE』の動きが遅くなったり、つながりにくくなる問題も発生しました。

熊井 単純にいわゆる「あけおめ」アクセスの瞬間風速によるサーバー障害でしたから、今はもう解決済みですが、それでも以来毎年、サーバーサイドのエンジニアは年末年始の休み返上で待機するようにしています。万全を期して、毎年12月中旬以降は『LINE』に新しいコードを書き加えることも禁止しているんですよ。ユーザーに迷惑を掛けないため、徹底して安定稼働を確保するよう努めています。

ロジャーズ 多くの方が使ってくださっているサービスだけに、友人から「こんな不具合があるんだけど」と言われることもたまにあって、そんな時は本当に責任を実感します。

佐藤 ユーザーにとって使いにくい部分があっても、創り手である僕らは操作法を熟知してしまっていて、使いやすい方法を知っているもので、気付かないことも多いんです。だからこそ、ご意見をいただけることは貴重だと思っています。

LINE開発エンジニア

――ヒットサービスの運営責任の大きさがよく分かります。最後に、あえて伺いますが、『LINE』を成功に導いた最大の立役者を挙げるとしたら、どなたでしょうか?

熊井 これはもう、開発チームの全員が同意見だと思うのですが、QA(品質保証)チームのあるメンバーです。ローンチした初期からずっといるメンバーで、僕らは「神の手を持つ男」と呼んでます(笑)。

ロジャーズ 本当にスゴイんですよ。「どうやって、そんなバグを見つけたの?」って開発チームが度肝を抜かれるような指摘をしてくれるんです。

熊井 かなり前のことですけれど、「画面を高速でスクロールしていくと動きが止まる」っていう指摘をされたことがありましたね。

佐藤 いくら、僕ら自身がヘビーユーザーだとしても、そんな操作をしてみることがないし、気付かない。開発チーム側では絶対に拾えないようなバグを、魔法みたいに見つけますよね。

熊井 うん。で、実際にコードを見ていくと「おおお、って」(笑)。

ロジャーズ そう、QAチームに助けられている部分は多いですね。特に彼は本当に神です(笑)。

――ユーザーファーストのサービスクオリティーにこだわる皆さんならではのご意見ですね。本日は、『LINE』開発の貴重な裏話をありがとうございました。皆さんの手で、さらなるサービスの成長を実現してくださることを期待しています。

取材・文/森川直樹 撮影/小林 正(スポック)

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