株式会社nanapi 取締役 CTO
和田修一氏 (@wadap)
中央大学経済学部卒業後、2005年に楽天入社。楽天市場の運用担当のほか、台湾版楽天市場の設計・構築・運用などに携わるなど、インフラエンジニアとして活躍。現在は、CTOとして2009年9月オープンのライフレシピ投稿サイト『nanapi(ナナピ)』を技術・経営の両面から支えるかたわら、講演や執筆、メディア出演経験も多数。個人ブログ『Unix的なアレ』も人気
業界で名の知れたプログラマーは、今年の上半期に何を学んでいたのか? 「同業者が役に立ったものは、自分にも役に立つはず」という仮説を基に、彼らの学びlogから、2014年上半期の流れを振り返り、今後の動向を予想してみよう!
株式会社nanapi 取締役 CTO
和田修一氏 (@wadap)
中央大学経済学部卒業後、2005年に楽天入社。楽天市場の運用担当のほか、台湾版楽天市場の設計・構築・運用などに携わるなど、インフラエンジニアとして活躍。現在は、CTOとして2009年9月オープンのライフレシピ投稿サイト『nanapi(ナナピ)』を技術・経営の両面から支えるかたわら、講演や執筆、メディア出演経験も多数。個人ブログ『Unix的なアレ』も人気
前職の楽天時代からインフラエンジニアとして活躍、現在はライフレシピ投稿サイト『nanapi』を運営するnanapiでCTOを務める和田修一氏。
講演やメディア出演の機会も多く、「技術が正義」の文化を根付かせるべく、社内では非エンジニアの全職種を対象にしたプログラミング研修まで実施している。
そんな和田氏が2014年前半、最も力を入れて研究したと話すのが、
をどう実現していくか、だ。
「nanapi本体はオンプレミスでずっとやってきましたが、『アンサー』などの新しいサービスはAWSを使って、クラウドらしい環境でやっています。より今風の環境に近づくことはできないか、ということで、Dockerを試したり、AWSのよりAWSらしい使い方を研究したりしていました」
nanapi.jpのインフラは、7月をもってすべてをAWSへと移行。それに伴い、AWSのオートスケーリング機能を適切に活用すべく、アプリケーションの構成を「インスタンスが上がっても捨てられてもちゃんと動く設計」に作り変える作業に注力してきた。
また、決して目新しいものではないが、
は、和田氏個人としてだけでなく、社内で毎日開催している勉強会でも2カ月にわたってメインテーマに据えて取り組んできた。
「私自身がこれまでAndroid開発に触れてこなかったからという動機もありますが、AndroidはいまやスマホのOSとしてだけでなく、Android Wearなどのガジェットにまで広がりを見せています。新しいデバイスに対応する時に、技術的なことが障壁になるだろうという危機感があり、4~5月の勉強会のテーマに設定しました」
この社内勉強会のテーマは、6月に入ると、
へと変わっていく。
「旬なテーマでもあり、会社として力を入れているところですね。まだXcodeのβ版であるため、若干仕様がブレるので、バージョンを上げたとたんに動かない、なんてこともあります。とはいえ、私自身はObjective-Cがそれほど得意というわけではなかったので、比較すると非常に書きやすい言語だなという印象ですね」
こうした最新技術を、勉強会を企画する立場でもある和田氏はどのように身につけていったのか。2014年前半のインプットlogは以下のようなものだ。
Dockerを意識し出したのは年が明けて、ソーシャルブックマークなどで見るようになってからなのですが、本家というか、マニュアルが分かりやすいので、これを見ながら学びました。
■Docker公式マニュアル
https://www.docker.com/tryit/
非常に覚えやすかったですが、あまりにも進化が早いので、そこに追いつくのは大変かも知れません。
Androidはこれという決定版がなく、非常に学びづらい印象でした。今、このタイミングでAndroidを始めるとなると、Android StudioというIDEから始めるのが一般的です。ただ、本家のマニュアルがEclipse寄りで若干古く、使いづらい。
そのため、mixiが作っているAndroid Trainingというページをよく参照しました。
■mixi Android Training
https://github.com/mixi-inc/AndroidTraining
まったく知識がないと厳しいかも知れませんが、Javaが分かる人であればオススメです。
Apple公式にObjective-Cを使ったiOSアプリ開発のチュートリアルがあります。その開発手順をSwiftを使って書き直すというトレーニングをみんなでやっていました。
自分の頭の中にあるObjective-CをSwiftに置換しながら書くと、けっこう理解が深まります。最初はSwiftの公式の仕様を見てイメージをふくらませつつ、チュートリアルと交互に見る感じです。
言語がちょうど育っているタイミングで、一緒に学ぶという経験はないので、今Swiftを学ぶのは非常に面白いと思います。
■Swift – Overview – Apple Developer
https://developer.apple.com/swift/
これら以外の技術を学ぶ際は、テーマを決めて、Qiitaでテーマをフォローしておくのが一番確実だと思います。また、技術的に詰まった時、僕が検索するのはStack Overflowです。特にSwiftのような最新のテクノロジーになると、Stack Overflowでしか引っかからないものもあります。
■Qiita
https://qiita.com/
■Stack Overflow
http://stackoverflow.com/
一見、話題の言語やツール、開発手法を抑えている風に感じるラインアップだが、「勉強会で身につけたこうした技術や知識を、今あるサービスにどう活かすか? ということは重視していない」と和田氏は言う。
「5年後、10年後に今ある事業が変わらずあるとは思っていません。いざ新しい事業を作るとなった時、その技術を使える人がいないからという理由で選択肢から外れる事態が怖いんです」
nanapiの社員は、日々の業務を通じて各人の得意な技術を深めつつ、1日1時間は業務の手を止め、会議室に集まって勉強会を行い知識の幅を広げる。
この「深さ」と「広さ」の掛け算がエンジニアの価値を高め、ひいては会社の価値を高めると和田氏は考えているようだ。
Dockerに関しても、その時に備えて知見をたくわえながら、実装するには至っていない。
「世間で話題になったテクノロジーは、たとえすぐに使う必要がないように思えても、一度は触れた方がいいと思うんです。DockerやChefが流行ったのは、インフラのあり方が変わったからですよね? もしもある会社の人が『うちは使う必要がない』と感じるのだとしたら、それは周りが変わっているのに、その会社だけが変われていないことの証拠ではないでしょうか」
理由は後付けでいい――。それが和田氏のインプット哲学のようだ。
取材・文/鈴木陸夫(編集部)
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