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レガシー業界に変革を! 「IoT×レンタル」で異彩を放つ日建リース工業の挑戦
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近年、あらゆる産業でビジネスのデジタル化が急速に進行している。だが、いまだITに縁遠い業界も少なくない。テクノロジーに対する知見を有する人材の不足、新たに導入するシステムに対する投資対効果の不透明さといった理由から、従業員の経験に頼った手作業から脱せないケースが多いからだ。ITベンダーやSIer各社は、こうした障壁を乗り越えるべくさまざまな商品やサービスを開発してはいるものの、地方企業や中小企業にまで影響力を発揮できるほどの決定打は見つかっていないのが現状だ。
そんな中、物流業界においては希望の光が見えつつある。物流、建設、介護業界向けに多種多様なレンタル機器を提供している日建リース工業が提供するIoTサービスが、着々と成果を積み重ねているのだ。
導入リスクは最小限に。物流IoTを牽引するサービス力
そもそも、IT業界に属すわけではない同社が、なぜ専門外のIoT領域に挑んだのか。2017年10月に新設された物流システム部の部長を務める濵田千波氏は、その背景を次のように説明する。
「当社は01年に物流業界向けのリース事業に進出して以来、ラック、台車、パレット、コンテナなどの物流機器を全国のお客さまにご提供してきました。IoTサービスの開発に着手したのも、当社のレンタルサービスを利用していただいているお客さまに、新たな付加価値を提供するため。その一環として開発したのが『TranSeeker(トランシーカー)』です」(濵田氏)
トランシーカーは、物を配送する際に使用するパレットをIoT化したもの。これまでの物流業界ではパレットの管理が行き届いておらず、使われたまま放置され、紛失につながることが多かったという。そこで、GPSと3G/LTE通信モジュールを組み込んだハードウェアを取り付けることで、管理体制を整えたのだ。さらに、温度、衝撃、加速度センサーやRFIDモジュールも組み込まれているため、パレット上に載せた商品が安全に運ばれているかを把握することも可能となっている。
「トランシーカーがお客さまに受け入れていただけた要因は、これがレンタルサービスだったからだと考えています。大きな初期投資を必要とせず、維持管理のためのコストも必要ない。投資対効果の不安からテクノロジーの導入に消極的だったお客さまにも、まずは使ってみようと思っていただきやすいのです」(濵田氏)
レンタルサービスで確かな実績を持つ同社だからこそ、IT各社が中小企業向けのIoTソリューションの売り込みに苦戦する中にあっても成功をつかみ取ることができたのだ。
同社では他にも、病院や食品工場などの従業員が着るユニフォームや、複数の工場を経て製造される製品に用いる部品管理、食品配送用の容器など、さまざまな物を管理するIoTサービスを提供している。各種センサー情報、RFIDやバーコードを組み合わせてレンタルすることで、ありとあらゆるお客さまのニーズに応えることが可能だ。
「とはいえ、当社のIoT事業はまだまだこれから。大きな将来性がある領域だからこそ、開発体制を整えていきたいと考えています。現在は、一名のエンジニアがIoT事業を担っている状況です。近い将来、10名規模のチームへと拡大し、内製比率を高めていきたいですね」(濵田氏)
ITコンサルタントも務めたベテランが見出した、「非IT業界」が仕掛けるIoTの可能性
先の濵田氏の言葉にあった「IoT事業を担うエンジニア」こそ、部門唯一のエンジニアとして奮闘する渡辺紀年氏だ。もちろん渡辺氏も、チームの早期拡大を待ち望んでいることは言うまでもない。
「現在、さまざまなお客さまからサービスに対するご要望をいただいているのですが、何せエンジニアは私一人。できることはたくさんあるのですが、お待ちいただかなければならない状況です。一緒に開発に取り組める方がチームに加わってくれるのが待ち遠しいですね」(渡辺氏)
そう語る渡辺氏も、実は18年2月に入社したばかり。SEからプロジェクトマネジャー、ITコンサルタントなど、10年以上にわたってIT業界で活躍してきた経歴を持つ。そんなベテランエンジニアである渡辺氏が、数ある企業の中から日建リース工業への入社を決めたのはなぜか?それは、かねてより関心のあったIoTと同社のビジネスの親和性に着目した結果だという。
「当社には、メインビジネスであるレンタルサービスで育んだお客さまとの信頼関係と、IoT化の可能性を持つ多くの物流機器がすでに存在します。これは、IoTで新たなビジネスを仕掛けていくにあたって大きなアドバンテージになると感じたのです」(渡辺氏)
実際、各種センサーが日々生成する膨大な物流データを活用すれば、これまでにないビジネスの可能性があるのは言うまでもない。18年12月に公開を予定しているトランシーカーの次期バージョンでは、さらなる装置の小型化とセンシング精度の向上、取得できるデータの種類も増えるため、期待は高まるばかりだ。
「自らの手で開発する」という現場経験が、イノベーションを生む力となる
では、同社で活躍できるのはどのようなエンジニアなのだろうか。渡辺氏は、IoTの可能性を信じ、当事者意識を持って開発に取り組めるエンジニアだと話す。
「IoTには、まだ『答え』と呼べるようなものが存在しません。そのため、技術の進歩も速い。一方で、物流業界で使われているハード機器には、いまだレガシーなソフトウェアが組み込まれていることが少なくありません。そのため、最新のライブラリを探してきて適用すればよい、というわけにはいかないのです。むしろ、その状況を楽しみながら学べるエンジニアマインドがあれば、やりがいは大きいはず。IoTに興味があり、向学心のあるエンジニアなら、開発分野や経験言語を問わず大歓迎ですね」(渡辺氏)
好奇心が強いエンジニアに期待していると、濵田氏も口を揃える。
「お客さまにとって少ないリスクで新製品を導入できるレンタル事業とIoTの組み合わせには、大きな可能性があります。当社はIT業界に身を置く企業ではありませんが、これまでもさまざまな企業と協業して新たなIoTサービスを構築してきました。意外に感じる業界であっても、エンジニアが活躍できる場があることを知っていただけたらうれしいです」(濵田氏)
とはいえ、答えのないIoTサービスを生み出していくためには、高い技術力が必要に感じてしまう。市場のリサーチ、企画立案、仕様策定、さらにはハードウェアの設計や生産など、やるべきことは山積みではなかろうか。しかし、自らの手で開発を進めていけるエンジニアとしての基礎スキルさえあれば、活躍のフィールドは用意されているという。
「新しいものを生み出すにしても、その根本には自らが開発現場で培ってきた作業経験が必要不可欠です。地に足がついた、実現性のある設計は、プログラマやSEとしてさまざまな経験を積んだエンジニアだからこそ生み出せるものだと思います。当社が手がけるIoT事業に将来性を感じる方は、ぜひ当社で経験を積み、イノベーションを起こすような新たなサービスを生み出す未来の戦力を目指していただきたいですね」(渡辺氏)
IT企業の異業種参入により、シェアリングエコノミー市場は年々拡大している。今後は、非IT事業者がIT企業化する流れも加わり、市場がさらに変動していくことは確かだ。クロスボーダー化する社会において、エンジニアのキャリアパスを既存のIT企業に限定する必要もなくなるだろう。エンジニアの才能を開花させる新たな土壌は、意外な業界にあるかもしれない。
取材・文/武田敏則(グレタケ) 撮影/吉永和久
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