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ワーキングママから学ぶ、仕事と育児でストレスを溜めない3つの意識+α【五十嵐悠紀】

働き方

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    五十嵐 悠紀

    計算機科学者、サイエンスライター。2004年度下期、2005年度下期とIPA未踏ソフトに採択された、『天才プログラマー/スーパークリエータ』。日本学術振興会特別研究員(筑波大学)を経て、明治大学総合数理学部の講師として、CG/UIの研究・開発に従事する。プライベートでは三児の母でもある

    ユーザーインタフェース(UI)やHCI(Human Computer Interaction)といった分野における国内最大の学会、『インタラクション2013』が今年も開かれました。お台場にある日本科学未来館にて3日間開催され、USTREAMやニコ生で生放送されたり、学会の一部は一般来場者にも公開されたりするなど、最近では研究者や企業の方だけでなく一般の方も意識した学会になってきています。

    今年、新しい試みとして、女性研究者が集まるランチ会、「Women’s Luncheon」を企画・開催しました。インタラクション業界は女性も比較的活躍している分野なのですが、これまで女性同士の交流会というのはあまり行われていませんでした。

    五十嵐さんが企画・運営に携わった「Woman’s Luncheon」当日の様子

    五十嵐さんが企画・運営に携わった「Woman’s Luncheon」当日の様子

    一方、世界に目を向けてみると、同分野の国際会議ACM SIGCHIでは、毎年のようにWomen’s Luncheonが開催されています。ここでは世代を超えた女性同士の交流がうながされ、研究に関する議論以外にも、女性のキャリアデザイン、家庭と研究との両立についてなど、幅広い意見交換が行われています。

    この結果、研究コミュニティ全体の成熟が進んでいると考えられます。

    同様のイベントを日本においても開催してみたいと考え、今年の『インタラクション』で開催することができました。特にMicrosoft Research Asiaさんが趣旨に賛同してくださり、スポンサーになってくださり、女性が活躍することへの社会の期待も窺えます。

    イベントは、アカデミアでご活躍されている研究者として立命館大学教授の木村朝子先生、企業でご活躍されている研究者としてNTTコミュニケーション基礎研究所研究主任である山下直美氏のお2方をゲストにお呼びして、女性研究者が集まる会ということで開催。話の内容は、仕事の進め方から家庭での振舞いまで、バラエティに富んでいました。

    そこで今回は、そこで交わされたお話の中から興味深かった考え方をいくつかピックアップしてみます。中には、研究者や女性エンジニアだけでなく、男性にも参考になるものもあるので、ご一読いただけると嬉しいです。

    【1】予定を細かく立てるより、優先順位をはっきりさせる

    スケジュールは立てても思うようには進まない。必要なのは優先順位をはっきりさせることだという

    スケジュールは立てても思うようには進まない。必要なのは優先順位をはっきりさせることだという

    「あらかじめ予定は立てないほうがいい(山下さん)」 という話が出ました。育児をしながら働く女性はあらかじめ予定を立てているのかな? と思いきや、予定を立てても、その通りになんていかなくて、ストレスになる。だから予定は立てない、とのことでした。

    ●日までにこの仕事を終わらす、と決めても、突然子供が熱を出すかもしれませんし、自分が倒れるかもしれません。この冬猛威をふるったインフルエンザに突然やられた方も多いでしょう。

    予定を立てるよりも大事なのは、優先順位をはっきりさせること。仕事では優先度の高いものから順に仕事をすることは当たり前ですが、それは家庭や育児にも通じる話。キャリアと育児を両立している女性は特に、家事をアウトソーシングする、部下に適切な仕事を割り振るなど、あれもこれもと欲張りすぎるのではなく、優先順位を決めて、自分にしかできないこと、自分がやるべきことをうまく考え、行動しているように思います。

    【2】出産で出世が遅れるのは覚悟する。それよりも手に職を

    「出産で出世が遅れる、というのは覚悟した方がいい」という話が出ました。お金をあきらめるか、出産をあきらめるか、子供がグレてもいいとするか……。すべてを得るのは無理で、“可もなく、不可もなく”な状態でもいい。やっていくうちに何とかなる、という主旨です。

    一方で、“武器”を持っていると良いという話も。「手に職を」ではないけれど、これだけは負けない! というものがあると強みになりますよね。

    山下さん は統計の勉強をしたり、産休中にインタラクション系の分厚い英語の教科書を読んだりと、普段はなかなか時間がなくてできないことをしたそうです。

    もちろん、出産・育児ほど予定通りにいかないものはありません。だから「皆さん産休中には勉強しましょうね」とは言いませんが、まとまった時間が取れる良い機会になることもあります。

    特に今は企業はどこもダイバーシティを気にする上、この分野は研究者もエンジニアも女性は少数派なので就職・転職には有利。子持ちだと出張に制限が入るのはもうしょうがないとしても、武器がある女性はさらに有利に働くでしょう。

    また、仕事に関してはいろいろ夢を描き過ぎて散漫になるよりは、自分自身の研究や仕事、自分の置かれている立場でやらないといけないことを順番にちゃんとやっていくことが成功につながる、といった話を木村先生 はおっしゃられていました。

    【3】怒るのではなく褒める

    いろんなママ友と話をすると、「子どもにはいつも叱ってばかりで……」といった話はよく出ます。今回も、そんな話題が出ました。

    「子ども相手の時に限らず、誰相手でもそうですが、意外と怒っている人って目の前にいる人のせいではない。後ろにすごく急いでいるとか、上手くいかなくてイラッとしているとか、別の要因にあることが多い」(木村先生)

    子育ても仕事も、相手の良いところを見つけて伸ばすことで、良い関係性を築けることは多い

    子育ても仕事も、相手の良いところを見つけて伸ばすことで、良い関係性を築けることは多い

    確かにわたしも、自分に時間的、精神的余裕がない時には、子どもに「早くしなさーい!」と怒りがちなんですよね。会社でも部下に「そのくらい当たり前でしょ?」と思って、いらいら言ってしまうこと、ありませんか?

    そんな時、自分の“余裕”はありますか? 自分に余裕があるよう心掛けるのも大事なんですね。

    「褒めるのは難しい。しつけはしないといけないけれど、怒らないようにしている」(木村先生)といった話を聞いて、これは企業や大学でも通じる話だな、と思いました。

    子育てでも仕事上の付き合いでもそうですが、人の悪いところはすぐ目に着きがちですが、良いところというのは気を付けてみていないと意外と気付かないもの。わたしは自分の子どもの褒めたいところ、そして仕事上の付き合いだったら、人の良いところ、真似したいなと思うところを意識して見付けるよう心掛けています。

    【+α】人脈を増やす

    最後に、「就職に必要だと思った知識や経験」という題目でゲストお2人に聞いた答えが、「人脈を増やす」でした。これはわたしが先日、別のインタビューで答えたものと一緒。ほかにも教授クラスの先生方が、うんうん、とうなずいていたので、皆さん「人脈が大事」と考えているのは間違いないようです。

    「特に若い人は、今のうちにできるだけたくさんの人に会って、顔を覚えてもらいましょう」とのこと。国際会議に出席すると日本の先生と知り合いになりやすいチャンスですし、ほかには合宿形式の学会に参加する、同じ分野の学会の常連になる、など具体例をいくつか挙げてくださいました。

    エンジニア向けのイベントもたくさん開催されていますし、いくつか顔を出していると、「あ! あの時の……」と知人が増えていったりしますよね。人脈が仕事を成功させるかどうか左右する時もあります。

    『インタラクション2013』の参加者内訳。学生から教授まで、幅広い層の方々が参加していた

    『インタラクション2013』の参加者内訳。学生から教授まで、幅広い層の方々が参加していた

    イベント参加者の内訳を見ると、図のように学部生から教授クラスまで幅広い年齢層の方々が興味を持って参加してくださったことが分かります。それぞれの会社や業界においても、「女子会」が開催されているといった話も聞きます。特に、産前産後休暇・育児休暇および仕事復帰に特化した話は聞く機会が意外とあるのですが、その後はどのようにされているのかを聞く機会は意外と少ないのではないでしょうか?

    実際には少し上の学年のお子さんをお持ちの同業者たちと常に交流があると、その時の悩みや解決方法などを垣間見れるため、具体的に考えることができて助かります。

    育児は、出産時の産休・育休だけではなく、仕事復帰&保育園入園問題、小学校入学&学童、小学校高学年になると学童保育がなくなる、など、段階を追って、さまざまな悩みがその都度出てくるからです。

    実はこれは、仕事でも一緒だと思うのです。キャリアアップしていくと、職種や仕事内容が変わっていきます。例えば自分と似た境遇にある人たちが集まるイベントに参加することで、これからのキャリアパスや働き方の参考になる話を聞けるでしょう。そうすることが、自分の未来予想図を描くヒントになるかもしれませんね。

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