TechトレンドVol.684

ジロリアンによる、二郎に捧げるハッカソン「ジロッカソン」潜入レポート!ニンニクの香りの中で見たエンジニアたちの真の力とは

ジロッカソン

そびえるニンニクの山を背に行われるミーティング……

「ヤサイマシニンニクマシマシアブラカラメ」

2018年6月。この呪文を理解できる人にとって、まさに夢のようなイベントが開催された。その名も「ジロッカソン」。ジロリアンによるジロリアンのための、二郎に捧げるハッカソンイベントだ。

ご存じない方のために、念のためご説明しよう。二郎とは「ラーメン二郎」の名で全国に約40店舗を展開するラーメン店。店内に漂う独特な雰囲気、圧倒的なラーメンのビジュアル、そして唯一無二のその味に、カルト的とも言える人気を集めている。そして二郎に魅せられた人々のことを、世は「ジロリアン(女性はジロリーヌ)」と呼ぶのだ。

さて、今回で第三回となるジロッカソン。「日本一参加者が熱狂するハッカソンをやりたい、と思ったのが開催のきっかけ」と語るのは、イベント主催である若手エンジニア向けコミュニティサービスの『サポーターズCoLab』運営会社、株式会社サポーターズ・代表取締役の楓博光氏。自身も14年のキャリアを持つジロリアンであることから、「二郎ライフがもっと楽しくなるようなアプリケーションを生み出す場にしよう」と考え、誕生したのがジロッカソンだったという。

回を重ねるごとに参加者数は増していき、この日集まったのは約100名のジロリアンたち。これほどまでに大勢のジロリアンエンジニアが集結した日が、かつてあっただろうか?ラーメン二郎のみならず、ジロッカソンの魅力にまでとりつかれたエンジニアたちの熱気に包まれる会場で、第三回ジロッカソンは幕を上げた。

参加者も審査員もみんなジロリアン。大切なのは「二郎愛」ただ一つ

ここでジロッカソンの概要をご説明しよう。とはいえ、ルールは非常にシンプル。「人々の二郎ライフがもっと楽しく、便利になるようなアプリケーションを開発する」こと。ジロリアンエンジニアたちが親交を深め、二郎界のさらなる発展を目指す……という、どこまでも二郎愛に溢れたピースフルなイベントである。

部門は、一日でアイデア出しから実装までを行う「開発部門」と、アイデア出しからプロトタイプ作成までを目指す学生限定の「アイデア部門」の二部門。もちろん、優秀作品には様々な賞が用意されている。

審査する面々も、お察しの通り根っからのジロリアンたち。一人目は、主催者であるサポーターズの楓氏。二人目は、「役員全員がジロリアン」と公言する株式会社ワクテク・CTOの片岡航平氏。そして審査委員長を務めるのが、ラーメン二郎武蔵小杉店で働いた経験を持つ現役エンジニア・山本雅和氏。

彼らが見守る中、いよいよハックスタートだ。

ジロッカソン

全員エンジニアで、全員ジロリアン

インスピレーションはニンニクが連れてくる?鍋二郎を食べながら開発できる天国がそこにはあった

ジロッカソンは個人・チームで参加が可能なため、自己紹介を終えた順に同じ志を持つジロリアンたちによるチームが続々と結成されていく。「フロントエンド担当できる人」「Pythonガシガシ書ける人」など声を掛け合い、アプリケーションの構想を練っていく各チーム。

「やっぱトッピングに目をつけて……野菜を積み上げていくゲームとかどう?」
「音声認識使いたいよね」
「逆に、二郎の弱みって何かな」
「もっと二郎に行きたくなるようなアプリを……」
「モチベーション高めるなら、やっぱ匂いって重要じゃない?」

そんな議論が交わされる中、大きなタッパーを抱えた楓氏が登場。

「この後みなさんに鍋二郎をご提供しますが、まずはニンニクだけオープンします」

突然の言葉、そして開かれたタッパー。次の瞬間、会場は騒然(良い意味で)。タッパーの中には、細かく刻まれたニンニクがこれでもかと詰まっているではないか。広々とした会場内を、一瞬にしてニンニクの香りが包み込む……。普通のハッカソンではあり得ない光景と空気感、しかし、ジロリアンたちにとってはこの香りが原動力なのかもしれない。会場の熱気は増す一方だ。

ジロッカソン

開かれるパンドラの箱

ちなみに「鍋二郎」とは、外や家庭でゆっくりとラーメン二郎の味を堪能したい方に向けて、一部店舗で提供されている鍋に入ったラーメンのテイクアウトサービス。この日は、二郎への愛とリスペクトから生まれた「インスパイア系」と呼ばれるラーメン店の一つ、「おどるめんAKIRA」のまぜそばが参加者全員に提供された。

おどるめんAKIRA

「オフィス街で二郎系を提供するキッチンカー」という常識破りのおどるめんAKIRA

おどるめんAKIRA

食欲を誘う香りと共に、突如始まる撮影会。スマホを持ったジロリアンたちに囲まれる鍋二郎の図

高く盛られた野菜、鍋から溢れんばかりの豚肉、もはや見えない麺。実食タイムを心待ちに開発に取り組んでいたジロリアンたちのもとに鍋二郎が到着すると、会場のテンションは最高潮に!「美味い」「最高」「これだけで来た甲斐がある」と、しばしラーメンをすする音が響き渡った。

おどるめんAKIRA

「麺が出てこない」というテーブルで、「天地返し」のフォローに入るジロリーヌスタッフ

【結果発表】AI、音声認識、AR・VR……二郎はこんなにも楽しめる

約7時間の開発を終え、いざプレゼンへ。発表されたアプリケーションはいずれも力作揃いで、感嘆の声や笑いが絶えることなくわき起こった。その中から厳選し、用意されていた五つの賞に輝いたアプリについてご紹介したい。

【AKIRA賞】
この日参加者に鍋二郎を提供したおどるめんAKIRAの名を冠した審査員賞。選出されたチームには、同店オリジナルのトッピングである「巻豚」が贈呈された。栄えあるAKIRA賞に輝いたのは、次の二チームだ。

ジロッカソン

■DOKOJI
全国に展開するラーメン二郎。ジロリアンの中には、各地の二郎を食べ歩く猛者も少なくない。しかし、彼らを突如襲うのが臨時休業……。「せっかくここまで来たのに」「もう二郎の口になっちゃってるよ!」そんな時に活躍するのがこのアプリだ。目の前にコンビニで売っているようなカップ麺を置き、ARヘッドセットを装着する。すると、目の前のカップ麺が二郎のラーメンに早変わり!これで、いついかなる時でも二郎を食べ(ている気分にな)ることができる、というわけだ。

ジロッカソン

■ジェネ二郎
二郎業界には、知る人ぞ知る「二郎コピペ」というものが存在する。ご存じない方は、ラーメン二郎に関するエピソードについて書かれたものだとなんとなくイメージしてほしい。この「二郎コピペのようなもの」を自分でも作りたい、という願望を叶えるために生み出されたアプリこそジェネ二郎だ。自然言語処理が活用されているこのアプリなら、タップするだけで「二郎コピペのようなもの」が生成される。初めのうちは文章として成立しているのかも怪しいレベルのものが生成されるのだが、回数を重ねていくうちに洗練されていくらしい。

審査委員によるこの二チームの選出理由は「なんか良かったから」。以上だ。

【CTO賞】
この賞は、審査委員のワクテクCTO片岡氏から贈られる。賞品のおどるめんAKIRA食事券を手にしたのはこのチーム。

ジロッカソン

■クイズジロウアカデミー
大半のジロリアンが内に秘めている「自分こそが一番のジロリアンに違いない」という思い。その思いは、いつかジロリアン同士の争いを呼んでしまうのではないか?そんな懸念も、このアプリを使えば解決できるという。クイズジロウアカデミーは、リアルタイムで対戦できるクイズアプリ。このクイズ、かなりの上級者向けとなっている。表示されたラーメンがラーメン二郎何店のものかを選択式で答えていき、正解数で勝敗を決めるというものだ。

「ジロリアンを格付けするという物騒な感じが面白い。シンプルな実装ながらリアルタイム対戦を作り込んでいるのが良い」と片岡氏は講評した。

【審査委員長特別賞】
この賞の賞品は、本レポートの冒頭に登場したニンニクの山。そう、ニンニク1年分(約20kg)だ。「本当に賞品なのか?」とすら思えてくるこの賞を獲得したのは、あろうことかジロリーヌコンビによるこのアプリだった。

ジロッカソン

■ジロトレ
「二郎は食べたいけれど、カロリーが気になる……だって女の子だもん」という女性ならではの悩みに向き合ったアプリ。その日食べた麺の量やトッピングの詳細を入力することで、自動でカロリーが計算され、さらにはそのカロリーを消費するために必要な運動量までわかるという。例えば、麺・ヤサイ・アブラ全てマシマシのニンニクなしを完食した場合のカロリーは約1836kcal(ちなみに成人女性の1日に必要なカロリーは約2000kcal)。これを消費するためには、腹筋60分、水泳120分、ウォーキング90分をセットで行う必要がある……という具合だ。生成された運動メニューをTwitterに投稿してカロリー消費への決意表明ができる機能までついている。

審査委員長の山本氏は「女性の二郎に対する敷居の高さを解決しようとした課題意識、Twitterへの投稿機能まで作り込んだ心意気、そして何よりもかわいらしいUIに女性らしさがあって良い」と絶賛した。

【アイデア部門優勝】
さて、いよいよ各部門の優勝を発表していきたい。まずは学生限定のアイデア賞の優勝チームをご紹介。二郎の語呂合わせでもある賞金2万6000円が贈られるアイデア賞のトップに輝いたのはこちら。

ジロッカソン

■My二郎
人気店であればあるほど、避けることができない行列での待ち時間。その時間をジロリアン同士の交流を深めるために活用できないか?という課題意識から生まれたアプリだ。登録することで生成されるQRコードを印刷し、ラーメン二郎に行く際には体のどこかに貼っておく。QRコードを読み込めば、相手のユーザー情報がわかるという仕組みだ。あえて「印刷して貼る」というオフライン要素を取り入れることで、リアルな交流にもつなげようという発想が評価ポイントとなった。また、アプリを使えば使うほど、自身のアバターが進化していくという演出にも遊び心が感じられる。

【開発部門優勝】
最後に発表するのは、開発部門の優勝チーム。熱戦の末、札幌でも京都でも好きなラーメン二郎に行ってこい!という豪華賞品「全国どこでも二郎行ける券(10万円)」を手にしたのはこちらのアプリだ。

ジロッカソン

■クーポンマシマシ
ラーメン二郎に行き、写真を撮り、SNSにアップする……。いつものルーチン作業に、報酬がついたら嬉しくない?このアプリは、そんな夢を叶えてくれるらしい。仕組みはこうだ。SNSに投稿されたラーメンの写真の「写真としてのクオリティ」をAIが判定。クオリティが高ければ高いほど、高額割引のクーポン券が付与されるという。

山本氏からの「本当に使えるアプリ」との講評にもあったが、このアプリのすばらしい点は、関係する全ての人にメリットがあるという設計だろう。アプリ利用者は、いつもの作業を行うだけでクーポンがもらえる。SNSにハイクオリティな二郎フォトが並ぶことで、ラーメン二郎に興味を持つ人も増える。投稿が増えれば増えるほど、ラーメン二郎の集客は増す。三方良しと言えるアプリとなっている。

以上が、各賞に輝いたアプリたちだ。他にも「ラーメン二郎が禁止された世界を舞台にしたノベルゲーム」「今いる場所から一番近いラーメン二郎の店舗を教えてくれるアプリ」「様々な店舗を疑似体験できるVR」など、バラエティに富んだアプリが場を沸かせ、大盛況のままに第三回ジロッカソンの幕は下りた。

「好きなモノを、もっと楽しむためのモノ」を自らの手で生み出せる、エンジニアの強さを再認識

今回のイベントで最も印象的だったのは、参加しているエンジニアたちが終始楽しそうだったこと。単なる開発ではなく、「自分が好きなモノに関連するアプリを、アイデア出しから実装まで行う」というジロッカソンのスタイルが、参加者たちのエンジニア魂に火をつけたに違いない。

プレゼンでのデモを見て、改めてエンジニアの「アイデアを実際のアプリやサービスに昇華できる能力」の尊さを感じずにはいられなかった。実際のエンジニアたちにしてみれば、日々の業務に追われるあまり、ふと、開発の楽しさを忘れてしまうこともあるだろう。しかし、時にはこうして「自ら好きなモノを生み出す」というモノ作りの原点に立ち返ってみることで、自身が持っているスキルの価値の高さや面白みを再認識できるのではないだろうか。ジロッカソンを締めくくる拍手と笑い声を聞きながら、そんなことを思ったのだった。

ジロッカソン

取材・文・撮影/秋元祐香里(編集部)

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