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任天堂のクリエイターが教える「面白さ」の作り方

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    ゲームクリエイターやエンタメ関連サービスを手掛けるエンジニアにとって、最も難しい開発とは「面白さ」を作り込む部分ではないだろうか。

    コードは嘘を付かず、ミスをすればバグが出る。たどり着くのは難しいが、「正解」があるのがプログラミングだ。しかし、面白さについての「正解」は、有史以来いまだに解明されていない。エンタメの流行は時代ごとに移り変わり、ハリウッドのように観客を引き込むストーリーテリングの手法が確立された世界ですら、大ゴケする映画が量産されてきた。

    そんな不確定要素だらけの中で「面白さ」を設計し、形にしていく上で、ベースとなるような思考の補助線は本当にないのだろうか。昨年11月、東京と大阪で行われた『ゲームクリエイター講座 with SUPER MARIO MAKER』では、その補助線がシンプルな形で示された。

    『ゲームクリエイター講座 with SUPER MARIO MAKER』

    『ゲームクリエイター講座 with SUPER MARIO MAKER』大阪会場の模様(写真提供:CA Tech Kids)

    この講座は、任天堂と、小中高生向けプログラミングスクールのCA Tech Kidsとの共同開催。CA Tech Kidsは今年3月9日、将来ゲーム開発者を目指す小学生向けに「ゲームクリエイター奨学金」を実施することを発表するなど、プログラミング教育に加えてクリエイティブ教育にも力を入れている。彼らのスタンスに共鳴した任天堂の社員が、講師を務める座組みとなった。

    長年ゲーム業界のトップランナーであり続ける同社のクリエイターたちが来ることもあり、人気ソフト『スーパーマリオメーカー』を使ったオリジナルのエディットコースを作るという講座は、600名を超える応募者が集まったそう。そこから選ばれた約20名の小学生たちに、「人が面白いと感じるモノを作る」ためのコツを伝える場となった。

    その際、任天堂のクリエイターたちがしきりに伝えていたのが、「他人を思うこと」の大切さだ。

    「できないことができるようになる」と「難しすぎる」の狭間にあるもの

    コース作成を行う前に開かれたミニ講座で、任天堂のクリエイターは「ユーザー目線に立った開発とは何か?」についてのノウハウを披露。そこで明かされた「面白い」の素となる大切な要素とは、ズバリ「難しいことができるようになること」だ。

    講演後に行った取材で、彼らはその真意をこう話した。

    「もちろん、これだけがゲームづくりのポイントになるわけではなく、例えば異なるアイデアを組み合わせることでより面白くなるなど、さまざまなコツがあります。ただ、遊びを面白くする要素として、今回、小学生たちに最も伝えたいのは『できないことができるようになる楽しさ』なんです」

    そしてもう一つ、対(つい)の要素として重要な点を続けて説明する。

    「ただし、難しすぎるゲームはNG。難しすぎるものは、面白くないのです。ここで、他人を思うことが重要になります」

    講座で用いられた、コース作成時の「アイデアシート」

    講座で用いられた、コース作成時の「アイデアシート」。参加学生は、シートに書き込みながら「プレイヤーを思いながらコースを考える」ことを学んだ

    講演中、彼らは「イメージする」というキーワードを何度も盛り込みながら話をしていた。これは「(プレイする)相手のことを思って作る」という意味だそう。

    つまり、開発プロセスにおいて「孤独」はないということだ。

    開発というと、どうしても創り手のセンスや(良しあしは別として)エゴのようなものがアウトプットの質を左右するように思われがちで、事実、創り手のセンスが「意外性」として広く受け入れられることもある。だが、任天堂のクリエイターたちは「双方向で対話しながら作る」という点を重要視して日々開発に取り組んでいるという。

    面白さは対話から生まれる、という事実

    参加した小学生と、講師を務めた任天堂のクリエイターとの2ショット(写真提供:CA Tech Kids)

    参加した小学生と、講師を務めた任天堂のクリエイターとの2ショット(写真提供:CA Tech Kids)

    「僕ら自身、一度作ったゲームをチーム全員で遊んでみて、ああだこうだと言いながら改善策を挙げていったり、関係者以外の方々にモニターになってもらって反応を見たりするプロセスが、面白さを作り込む上では欠かせないプロセスになっています」

    『スーパーマリオメーカー』はユーザーがエディットしたコース動画がネットに出回ることも多いため、“中の人”たちもそういったネットの声を拾って新たなアイデアを膨らませているそうだ。こうした傾聴の積み重ねが、他者を楽しませるモノを生むのだろう。

    この日、小学生たちを相手に講師を務めたクリエイターたちも、「対話をしながら作る」という点ではさまざまな学びがあったと振り返る。

    オリジナルコースを作成中の一コマ(写真提供:CA Tech Kids)

    オリジナルコースを作成中の一コマ(写真提供:CA Tech Kids)

    「人に教えるということは、人に自分の考えていることを伝えることの勉強になるので、貴重な経験でした。実際に参加した子どもが楽しんでいるのを見て、モノづくりの楽しさを改めて認識しましたし、操作してみて『ここが詰まっている』、『ここが分かりにくそう』ということがあったので、次回の経験に活かしたいと思います」

    「子どもたちの『作ること』への意欲の高さには驚きました。好奇心にあふれて輝く目が、印象に強く残っています。ネット上の『マリオメーカー』に関する話題について、子供たちは特別なものではない様子で語っていました。子供たちにとって、ネットはとても身近なものになっているようですね。ネットを使ったゲームを提供する立場として、子供たちが安心してゲームを楽しめるように、これまで以上に気を配らねばと思いました」

    面白さは、思いやりから生まれる。シンプルだが、ゲーム開発だけでなく汎用性の高い示唆と言える。

    取材・文/伊藤健吾(編集部)

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