キャリアVol.117

プログラマーがGrowth Hacker(グロースハッカー)に最も近い存在なのはなぜ? Dropbox育ての親Sean Ellis氏に聞いた

Facebook、LinkedIn、Twitter……。アメリカで成功したWebサービスの陰には、必ずといっていいほど「Growth Hacker」の存在があった。しかも、「Growth=成長」をうながすチームには、プログラマーの存在が不可欠だという。Dropboxをはじめ、さまざまなヒットサービスにかかわってきた「Growth Hackerの父」Sean Ellis氏に、その真意を聞いた。

Sean Ellis
Qualaroo CEO,FounderのSean Ellis氏

IT・Web業界において、ここ2~3年の間にいくつものスタートアップが誕生したが、その多くは大きくスケールすることもなく、志半ばでサービスをたたむことになってしまう、といったことは珍しいことではない。しかしながら、もし彼らのチームにGrowth Hacker(グロースハッカー)がいたら、そのサービスはスケールしていたかもしれない。

Webサービスを作っている人々にとって、それほどまでに注目度を高めているGrowth Hacker。その注目度の高さを物語るように、5月25日に起業家育成プログラムを運営するOpen Network Lab主催にて開催された「Onlab [Growth] Hackers Conference 2013」には、土曜日にもかかわらず200人近い参加者が詰め掛けた。

Sean Ellis
会場には、プログラマーだけでなくディレクターやデザイナーの姿も

イベントでは、「Growth Hacker」という言葉の生みの親であり、アメリカでDropboxなどさまざまなWebサービスを“Growth”させてきたSean Ellis氏や、AirbnbのGrowthチーム・プロダクトマネジャーであるGustaf Alstromer氏など、世界的なGrowth Hackerが登場。

日本からは、nanapiのけんすう氏、コミュニティーファクトリー代表の松本龍祐氏もスピーカーとして参加し、独自の「Growth Hack」の仕組みを惜しみなく披露してくれた。

そもそも、Growth Hackerという言葉が生まれた背景についてSean氏は、このように話す。

「これまで数々のサービスにかかわってきたが、それらのサービスを成功させるためにヴァイスプレジデントを募集していました。でも、なかなか良い人材に巡り合えなかった。わたしはLinkedInやFacebookで成功しているような人材を探していたので、少しでもデータに強い人材を採用するためにも“グロースハッカー”という言葉を生み出したのです」

日本でも浸透しつつあるGrowth Hacker。今ではスタートアップのサービスが飛躍的に成長する際の大きなカギとなっているが、実際にGrowth Hackerとして活躍できる人材は、現状では決して多いわけではない。

しかしながら、プログラマーこそGrowth Hackerにもっとも近い人材であるという。それはなぜか。Sean氏に、「プログラマーがGrowth Hackerに向いている理由」を聞いた。

FacebookやTwitterのGrowthチームはほとんどプログラマー

―― まずは、今Growth Hackerが注目されている背景についてお話しいただけますでしょうか?

そうですね。わたしはこれまでたくさんの企業にGrowth Hackerとして参画してきたのですが、今、プログラマーの働き方や考え方を変える必要があるのではないかと感じます。それは、良いプロダクトを作るだけでなく、より多くのユーザーを獲得し、プロダクトをスケールさせる段階に来ているということです。

Sean Ellis
「ヒットサービスのGrowthチームには、必ずプログラマー出身の人材がいる」と話すSean氏

そこで重要なのが、「より多くのユーザーに価値を提供したい」という考え方を持つプログラマーの存在。今、上手くいってるシリコンバレーのスタートアップは、ハッカー文化だけでなく“成長”を強調している企業文化を持つところが多いですね。

昔はセールスやマーケターが企業のヒーローだったけど、今はプログラマーがヒーローです。だからこそ、プログラマーもマーケター以上にサービスの拡散を考えていく必要があるのではないかと考えています。

―― Seanさんがそう思うようになったのは、なぜですか?

まず、マーケティングの考え方が大きく変化していていると強く感じるようになりました。今は実にさまざまなデータを簡単に取得でき、マーケティングの結果が誰でも計測できる時代。これまでクリエイティブ性が求められていたマーケターにも、データ分析の素養が重視されるようになってきているのです。

自然と、プログラマーのように論理立てて物事を考えられる人材がマーケターとしてフィットし始める。わたしがかかわってきたスタートアップも、初めはプログラマーしかいませんでしたが、彼らにマーケティングスキルを身に付けてもらいました。そうしたことが2010年の後半に重なり、「Growth Hacker」という言葉を生み出すきっかけにもなりましたね。

―― プログラマーにマーケティング要素を教えるのは簡単なのでしょうか?

人によって向き不向きはあるとは思います。ただ、FacebookやLinkedIn、Twitterなどの成功している企業でGrowthチームを担当しているのは、ほとんどがプログラマーであるというのは事実です。

プログラマーがマーケティングの知識を得たとして、彼らを良いGrowth Hackerにするためにとても重要なのは、好奇心です。自分たちのサービスを使っているユーザーがどういうことを考え、行動しているのかを分析して、そのユーザーの行動の中に必然的にサービスを拡散したり口コミしたりするような仕組みを考えて作って検証していく。自分たちのサービスを愛してくれるユーザーに好奇心を持ち、検証を繰り返していけるかどうかがカギとなってきます。

スタートアップが成長するかどうかは「ユーザーへの共感度」で決まる

―― ただ、たいていのスタートアップは好奇心を持ってサービスを作っていると思うんです。それでも、成功するスタートアップ、失敗するスタートアップが出てくるのはなぜでしょう?

それは、好奇心を持つ方向が少し違うのかもしれませんね。Y Combinatorで教えられていることの1つに、「人が求めているものを作れ」というものがあります。自分たちのサービスを求めている人のことを理解し、ニーズを満たすことに徹底的に力を入れるべきだという考えです。成長は、その後にやってくるのです。

その意味で、上手くいっているスタートアップとそうでないスタートアップでは、「ユーザーに共感できているかどうか」において大きな違いがあるように思います。上手くいかないスタートアップは、自分たちのサービスを作ることに熱心で、ユーザーを疎かにしてしまいがちなのではないでしょうか。

ちなみに、わたしがスタートアップの成長のために行った施策の1つで、『Survey.io』というフリーのサーベイツールを使ってユーザーに8つの簡単な質問をしたことがあります。そのサーベイ結果が、そのスタートアップのユーザーに対する好奇心を駆り立て、スケールさせるきっかけを作りました。

―― 今、Growth Hackerのニーズは、アメリカでは特に高騰していると思うのですが、人材は足りているのでしょうか?

Sean Ellis
「需要拡大につき引く手あまただ」というGrowth Hacker。日本のプログラマーも、海外進出のチャンスかもしれない

Simply Hired』という求人検索サービスがあるのですが、現在そこに掲載されているGrowth Hackerの求人は1200件ほどあります。この需要の高さが供給を促進させるという側面はあって、最近では、LinkedInでもマーケターの方が肩書きを「Growth Hacker」に書き換えたとたんに企業からのオファーが来るようになるなどの現象も起きているそうです。

また、市場のニーズに応えるという意味では、最近では、起業家のAndrew ChenがGrowth Hackerの育成プログラムを作ったりもしています。そうした事例の増加とともに、Growth Hackerもどんどん増えていくでしょうね。

―― 最後にお伺いしたいのですが、Seanさんが考える、「プロダクトをGrowthさせる理想のチーム」はどんなチームでしょうか?

Growthチームの構成としては、先ほどお話ししたように、好奇心を持っている人がとても重要です。最近では、それがプログラマーである必然性は徐々に下がってきています。

昔はデータベースをいじっていろんな数字を見ていましたが、今は『KISSmetrics』などのサービスを使えばプログラミングのスキルがなくてもデータは見れる。かつてはデザインエンジニアが担当していたランディングページのデザインも、『unbounce』というサービスを使えば簡単に作ることができる。究極的には、ユーザーに対する好奇心をもって徹底的に検証することができれば、プログラマーがいる必要はありません。

ただ、そうしたスキルを持ってるのがたいていプログラマーだったりするんですよね(笑)。

結局のところ、徹底的にユーザーのことを考えられるプログラマーの存在が、サービスをスケールさせる大きな要因になるのかもしれません。

―― 今日は貴重なお話をありがとうございました。

取材・文/小禄卓也(編集部) 撮影/竹井俊晴 通訳/前田紘典(Open Network Lab

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