【澤円からエンジニアに5つの助言】諦め・不安・非充実感の冴えない毎日を一変させる「脱あたりまえ」のススメ
先が見えない閉塞感、働いても得られない達成感、年を越すたびに味わう焦燥感……。エンジニアがこれほどまでに必要とされる時代になったのに、なぜかつきまとうさまざまな「非充実感」を、環境のせいにしてはいないだろうか? 少なくともここに1人、そういうモヤモヤを自力で突破した人がいる。『エンジニアtype』の連載でもおなじみの澤円さんだ。
常識に縛られず、思考停止モードから脱するためのヒントを新著『あたりまえを疑え。』(セブン&アイ出版)で示した澤さんに、エンジニアが“冴えない毎日”を打破するための5つの助言をもらった。
助言1「出る杭ではなく、出過ぎた杭となれ」
前々から気になっていたことがあるんです。それは「普通」とか「あたりまえ」を過度に気にする風潮。最近では「気になる」なんてレベルではなく、危機感さえ覚えるようになりました。きっかけの一つは音声配信の『Voicy』で『澤円の深夜の福音ラジオ』を始めたあたり。ラジオの深夜放送感覚で本音のやりとりをリスナーの皆さんとしている間に、実に多くの「あたりまえ」を皆が抱え込んでいるんだな、と痛感するようになったんです。じゃあ、どんな風に皆が「あたりまえ」に支配され、毎日を冴えないものにしてしまっているのかというと、「朝の9時出社」なんかが良い例でしょうね。朝9時に出社しなきゃいけない理由なんかないのに、ほとんどの人が大した根拠も持たず、そのルールに従っていますよね?
ただ、「おかしい」と思うことに「おかしい」と言えない状況も分かります。僕もかつては大企業のIT子会社の現場で黙々と仕様書通りのプログラミングをしていたエンジニアでしたから、「出る杭は打たれる」っていうのは体感しています。でも、僕は“出る杭”ではなく“出過ぎた杭”になることで、冴えない自分を変えようとしました。そしてそれが、ちゃんと結果になって表れました。だから、何となくモヤモヤした気持ちを抱えながら働いているエンジニアの皆さんには、「思い切って出過ぎちゃおうぜ!」って言いたいんです。
出過ぎる方法は簡単。アウトプットを出せばいいだけです。多少周囲の人と違う働き方をしても、継続的にアウトプットを出して会社に貢献できたら誰も文句は言えません。まぁ、最初のうちは小言を言われるかもしれないし、色々と打ち返されたりするかもしれませんが、最終的には結果がものを言います。
助言2「たられば」で物事を考えるのをやめろ
また、特にSI等の現場でよく遭遇するのが、起きてもいないことに対して過剰な恐怖感を抱くことです。「こんなことを言ったら、上に怒られるんじゃないか」「そんなことをしたら、周りに叩かれるんじゃないか」という負の仮説へのビビリ。こういう“たられば”習慣があたりまえのように身に付いてしまうと、エンジニアの成長スピードはぐっと落ちてしまいます。前向きに何かを生み出していく原動力が失われ、思考停止状態に陥ってしまうからです。
ここでも、「そうは言っても、会社が変わってくれないと」と感じる人は多いかもしれませんね。ただ、会社って誰でしょう? もしもそこで「田中部長です」みたいに具体的な名前が出てくるのなら、「じゃあ、田中さんに要望を言って『うん』と言わせればいいじゃん」で、その話は終わりです。ところが、たいていはそうじゃない。「会社って誰? と言われても、会社は会社っすよ……」みたいな、すごく曖昧な答えが返ってくることがほとんど。僕が思う会社というのは、そこにいる人たち全員の集合体ですから、会社に問題があるのなら自分が動いて解決するしかないんです。
こうした思考停止を解消するコツは、何でも具体的に発言する習慣を付けること。例えば、「皆がそう言っています」というのを、「10人の人がそう言っています」へ。「たくさん●●が起きています」を、「1時間に3回起きています」へ。“何となく”で物事を考えることをやめると、自分自身も数々の気付きを得られます。
助言3 テクノロジー音痴な「決裁権者」のブレーンとなれ
次もSI等で多いことなのですが、社内で意思決定権を持っている人たちがテクノロジーを知らな過ぎることに不満を抱えているエンジニアは多いと思います。
自分でコードを書けない、パラメータ設定もできない、実機検証もしない、机上の空論さえ理解できない、そんな人たちが決裁権を持っている状態はものづくりをする人たちにとって最悪ですが、どういうわけか「それがあたりまえ」だと諦めているエンジニアが少なくない。
でも、そんな状況を傍観していても、仕事が面白くなったり、自分のスキルが上達していくような機会は永遠に訪れません。
では、どう対処するか。僕なら、「分かってない決裁者」に信用される存在になろうとします。テクノロジー音痴な上司に対して「お前みたいな奴は相手にするか」と背を向けるより、その方がずっと効率が良くクリエーティブな仕事ができるからです。上司に恥をかかせたって何の得も無いけれど、その人たちに良いカッコをつけさせるブレーンになれば、そこに信用が生まれ、その人たちを使って自分が会社を動かせる側に立てます。
「本当に●●部長は分かってない!」などと相手を糾弾するのではなく、「これ、こうした方がカッコ良くないっすか?」みたいに、うまく話を持っていき、それが結果的に社内外からの好評価につながれば、彼らは確実にあなたを信用してくれます。そして、重要なことを決める時に、真っ先に声を掛けてくれるようになる。そうなれば、ずっと仕事はやりやすくなるし、結果も出て面白くなる。好循環が生まれます。
助言4 学びはインプットよりアウトプットを意識せよ
以前、エンジニアの間で、「週末に勉強するかどうか問題」が話題になりました。僕に言わせれば、これはすごく不毛な議論。だって、これってアスリートに置き換えれば簡単で、自分をアップグレードしたい人は誰が何を言おうとめちゃくちゃ練習するでしょ? エンジニアも同じです。心の底からスキルアップや自己実現を望むなら、週末であろうと勉強すればいい。逆に、「澤が記事で勉強しろって言ってたから」くらいの理由で勉強するなら、しなくていいとも思います(笑)。
その上で、学び方について僕から助言したいのは、「インプットよりアウトプットを重視せよ」ということです。社外で何かを学ぼうとするとき、多くの人はエンジニア向けの勉強会に参加したり、講演に足を運んだりするのが一般的だと思うんですね。でも、ここでもそんな「あたりまえ」は捨てて、自分が情報を提供する側にまわってみてはいかがでしょうか?
週末のハッカソンでもセミナーでも、何でもいいんですが、一度バックステージ側にまわってみてください。セミナーの登壇者たちと仲良くなれるチャンスだってあるし、イベントをただ受講するより、めちゃくちゃ学びが多いことに気付くと思いますよ。
助言5 SNSやブログで自分のアイデアを発信せよ
SNSやブログに積極的に自分の思いや考えを書き込んでいくことも、アウトプットの場を増やす方法としてオススメです。これからのエンジニアは、AIやRPAに取って代わられないクリエーティブな資質も問われるわけで、自己の発想を言語化して効果的に発信していく力がどんどん求められていきます。SNSやブログは、その練習の場になると思うんです。
一方、SNSでの発信をオススメすると必ず言われるが、「自分なんかが書いてもバカにされるのでは?」「炎上したりしたら嫌だ」などの不安の声。僕に言わせてみれば、「炎上するだけ大したもんだ(笑)」です。いちエンジニアのつぶやきやブログが炎上することなんて、ほぼありません。これだけ情報が溢れた世界でまず人の目にとまるものを書いたというだけで大したもんで、その発言がそれなりの燃料を積んでいなければ煙すら立ちません。
これも先に触れた「もし●●したらどうしよう」という発想で、自分をつまらない「あたりまえ」でがんじがらめにしているだけ。思い切ってアイデアの発信を続けていくと、理想を同じくする仲間と出会うことができたり、普段は交流できないような著名人と接点が持てるようになったり、メリットはいろいろあります。そうやって、自分自身をひとつ上へと引き上げていく機会を、自らつくっていくと良いと思います。
“冴えない自分”はいつでも変えられる
僕自身が「あたりたりまえ」を疑うために意識的にやっているのは、自分とは違う価値観を持った人たちと交流すること。同じ会社の人とはしっかり昼間にコミュニケーションを取り、オフタイムは社外の人と過ごす時間にしています。それだけで、意図せず自分の中にできあがってしまっていた「普通」に気付くことができますから。
最後に強調しておきたいのは、「冴えない自分はいつでも変えられる」ということ。他人の考え方を変えることや、会社の風土を変えることは非常に難しいことですが、自分自身なら今すぐ変えることができます。今回僕が紹介したことは、1円もかけずに自分をアップグレードできることばかりですから、「お金がない」は言い訳になりません。
心の底から真剣に、より充実感を得られる毎日を過ごしたいと想うなら、そして自己実現がしたいと願うなら、まずはもっと自由になることから始めてみてください。「あたりまえ」から解放されたとき、あなたらしい働き方も、成長のカタチも得られるはずです。
取材・文/森川直樹 撮影・場所提供/INSOLITE BEAUTE
セブン&アイ出版さんから、私の三冊目となる本が発売されました。
「あたりまえを疑え。自己実現できる働き方のヒント」というタイトルです。
エンジニアtype連載の重要なテーマの一つでもある「働き方」を徹底的に掘り下げてみました。
ぜひお手に取ってみてくださいね。
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