本連載では、外資系テクノロジー企業勤務/圓窓代表・澤円氏が、エンジニアとして“楽しい未来”を築いていくための秘訣をTech分野のニュースとともにお届けしていきます
日本のエンジニアが”作業者扱い”から脱するために起こすべきアクション【連載:澤円】
圓窓代表
澤 円
立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、外資系大手テクノロジー企業に転職、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。琉球大学客員教授。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。
著書:『外資系エリートのシンプルな伝え方』(中経出版)/『伝説マネジャーの 世界№1プレゼン術』(ダイヤモンド社)/『あたりまえを疑え。―自己実現できる働き方のヒントー』(セブン&アイ出版)※11月末発売予定
連載:リクナビNEXTジャーナル『澤円のプレゼン塾』/ダイヤモンド・オンライン『グローバル仕事人のコミュ力』
皆さんこんにちは、澤です。
2年前にソニー生命さんが行ったアンケートで、日本の男子中高生が最もなりたい職業は「ITエンジニア・プログラマー」だったそうです。
中高生 将来の夢、男子1位は「ITエンジニア・プログラマー」 出典:TechWave
実際、この記事を読んでいる皆さんの中にも、「プログラミングが好きだから」「GoogleやFacebookのようなサービスを作ってみたかったから」という理由でエンジニアになられた方もたくさんいらっしゃると思います。
しかし、大学生に同じアンケートを取ると、少なくとも私が見た記事でエンジニアがトップだったものはありませんでした。
公務員や金融業、テレビや新聞などのメディア関連など、正直私が抱く学生だった頃からあまり変わり映えのしないランキングになっていることに気付きます。
大学生になってくると、職業選びは中高生とは比較にならないくらい現実的なアクションになってきます。その時にエンジニアが候補に挙がらないというのは、なかなか寂しいものがありますね。
では、なぜこうなるのでしょうか?
エンジニアはそれほどまでに魅力のない職業でしょうか?
日本のエンジニアの現状
エンジニアとして働いている方々の中には、「プログラミングは好きだけれど、会社から与えられる仕事にやりがいがあるかと言われると微妙……」とか「エンジニアという扱いにはなっているけれど、やっている作業はクリエーティビティのかけらもないなぁ……」とか思っている方も多いかもしれませんね。
そして、なんと言っても「専門知識やスキルが求められる仕事なんだから、もっと給料高くても良くないか?」というのが本音、という方も多いでしょう。
お給料の多い少ないは、所属企業の業績や事業規模に影響されますので一概には言えませんが、そのような事情を差し引いても「なんだかフェアに扱われていない」と感じる方もいらっしゃるのではないかと思います。
というのも、営業やマーケティングに比べて評価を数値化することが難しい職種でもあり、事業会社においてはどうしても「バックオフィス業務扱い」になりがちな傾向があります。
また、日本はエンジニアの75%以上がSIベンダーに在籍しているとも言われており、「売られるリソース」という立場で仕事をしている人がかなり多いのが現状です。
このビジネスモデルですと、エンジニアの仕事というのは「受注ベース」になりがちで、結果的に人月ベースの計算になるため、自分で大きく年収を上げるようなアクションを取りにくいというのが実情ですね。
また、自分がやりたい仕事だけを選んでひたすら没頭する、というのがなかなか許されない状態にもなりがちです。
仕事というのはそういうものだと言ってしまえば仕方がないのですが、エンジニアになった人たちの多くは、もともとプログラミングが好きだったり、自分が作ったものが動く瞬間を見て喜びを感じたりしていた体験があるのではないかと思います。
そしてプログラミングを生業にしようとしてみたら、自分の好きなマシンや言語が使えるわけでもなく、ましてや仕様を自分で決められるわけでもなく、さらに言えば自分のペースで開発などができるわけでもありません。
プログラミングがしたかったのに、やってる仕事は仕様書の作成ばかりでWord やExcelでの文書作成だったりして、開発ツールすら触れないという人もいるでしょう。
こういう働き方をインターンなどで知ってしまった大学生からすると、エンジニアとして働くことに対する希望が持てなくなるのも無理はありません。
「経営にとって重要なリソース」として認識されるエンジニアになるために
ちなみに、ボク自身はSIベンダー各社の存在意義がないとは思っていませんし、存在意義を否定したところで建設的な話にはなりません。
ただ、エンジニアの働くモチベーションという観点でいえば、もっとできることがあるのではないかと思います。
まず、日本のエンジニアは労働環境の自由度があまりにも少ないという問題がありそうです。
もちろん、全エンジニアにアンケートを取ったわけではありませんが、私が接しているエンジニアコミュニティーや、TwitterなどのSNSの発言を見聞きしていると、かなり労働環境や報酬を含む待遇には不満を持っている人が多いようです。
根底には「エンジニアとしてリスペクトをされていない」と感じている人たちが多いのではないかと予想しています。
そのためには、経営者にエンジニアの重要性を再認識してもらう必要があるのですが、それを座して待っていても意味がありません。
大事なのは、エンジニア側から声を上げていくことです。
自分たちのスキルや知識が経営にどれだけプラスになるのかを、より一層アピールをする必要があります。
マーケットに出ている新しい製品やサービス、あるいはこれから出てきそうな新技術に関する情報を分かりやすく伝えるスキルは重要ですが、さらにその情報が「いかに自分の組織の役に立つのか」まで踏み込んで説明できるようになれば、会社や組織にとって最重要人物として認識してもらえるようになります。
また、エンジニア一人一人がこの意識を持つようになれば、組織内のエンジニアは「作業者」ではなくて「経営にとって極めて重要なリソース」として認識されるようになるのではないでしょうか。
自分の中のアイデアを言語化せよ
エンジニアにとっての憧れの場所と言えば、やっぱりシリコンバレーですよね。
「シリコンバレーはエンジニアが高い給料をもらっている」と漠然と思っている方も多いようですが、シリコンバレーのエンジニアは単にコードを書くという作業能力があるわけではなくて、テクノロジーがいかにして人類に貢献するかのアイディアを出せるという点がもっとも評価されているのです。
ビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグは、エンジニア出身の経営者ですが、単にコードが書けるだけの人ではありませんでした。
世の中を「面白く」変えていくために、ソフトウェアやサービスを本気で作ろうと思ったからこそ、会社も大きくなりましたし、大富豪になることもできたわけです。
シリコンバレーでリスペクトされるのは、お金を稼ぐのがうまい人でも話すのが得意な人でもありません。もちろん、コードを書くのが速い人でもたくさんの言語を扱える人でもありません。
世の中を本気で変えようと思っている人であり、人類や地球を本気で良くしようとしている人です。
もちろん事業継続のためにはお金が必要ですが、「まずお金」という考え方をしている限りにおいて、周囲の尊敬を集めることはできません。
これは、私を含めたサラリーマンにも同じことが言えます。
単に「給料を上げてほしい」「もっとお金が欲しい」と言いまくったところで、賛同してくれる人はあまりいないでしょう。
「こんなアイデアがある」「こんな風に今の業務を改善したい」という提案をあちこちにすれば、賛同してくれる人が現れて、場合によっては待遇がアップするかもしれません。
「やってみたけれど全然受け入れてもらえなかった」という場合にも、いろいろ考え抜いた経験は皆さんの中に残ります。
その経験を武器に、より良い待遇を求めて転職活動すれば、本当にそのアイデアに価値があるかどうかを知ることができます。
自分のアイデアに、めちゃくちゃ価値があることが分かれば、起業という選択肢も出てきますね。
いずれにせよ、自分の中のアイデアを言語化することが大事です。
自分の待遇が良くない、お給料がもっと欲しい! というのであれば、自分に価値があることを知ってもらうためのアウトプットが不可欠です。
その内容は、自分が得をするものではなく、会社や組織や世の中に貢献するものでなくてはなりません。
作業者としてのエンジニアから、発信者としてのエンジニアを皆さん目指しましょう!
セブン&アイ出版さんから、私の三冊目となる本が発売されました。
「あたりまえを疑え。自己実現できる働き方のヒント」というタイトルです。
本連載の重要なテーマの一つでもある「働き方」を徹底的に掘り下げてみました。
ぜひお手に取ってみてくださいね。
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