Techトレンド Vol.822

「頭に思い浮かべるだけで出品完了」2030年までにメルカリが実現したいことを聞いたら、“未来の暮らし”にワクワクが止まらなかった【CPO濱田優貴】

学生時代にインターネットサービス企業サイブリッジを立ち上げ、現在はメルカリの最高プロダクト責任者(CPO)を務める濱田優貴さん。CPOというポジションはあまり耳に馴染みがないが、メルカリでは「一歩先のテクノロジーを使える体制づくり」を同職のミッションとしている。

濱田さんによれば、メルカリは今後「AIカンパニー」を目指していくという。なぜ、メルカリは今、AIを成長戦略の中核に据えるのか。その理由と、同社がAIカンパニーになった先に実現したいことを聞いてみたところ、驚きのビジョンを明かしてくれた。

株式会社メルカリ 取締役CPO 濱田優貴さん
株式会社メルカリ 取締役CPO 濱田優貴さん
東京理科大学理工学部在学中に、株式会社サイブリッジを立ち上げ取締役副社長に就任、受託開発の責任者を始めM&Aや新規事業の立ち上げなどに従事。同社を2014年10月退社後、2014年12月より株式会社メルカリに参画。翌年1月執行役員就任。2016年3月取締役就任。現在はCPO(Chief Product Officer)としてプロダクト全般、AI・データ・検索を含む技術領域全般、メルカリの研究開発組織R4Dを所管

2030年、世界はどうなっている? ロードマップを描き逆算思考で今をつくる

メルカリのCPOとして、研究開発組織R4DやCPO室の指揮を執る濱田さん。これまでに取り組んできたのは、VR/ARや量子コンピューター、ブロックチェーン、衛星データ、そしてAIなどの技術開発だ。

現在特に注力しているのは、冒頭でも述べたとおり、メルカリを「AIカンパニー」へと導くこと。2030年までに世の中にどんな技術が登場するのかという予測から逆算し、その中でメルカリはいつ・何をしていくべきなのかを示すロードマップづくりを行っている。

株式会社メルカリ 取締役CPO 濱田優貴さん

「現在作成しているロードマップには、2030年までに当社があるべき姿に向かっていくため、経営層や社員がいま何をすべきなのかタスクベースで書き込んでいます」

不要になった日本の車が、スマホ操作一つでアフリカの家庭に届く未来

2030年には、AIによる輸送・配送の無人化、完全自動運転などの実現も予想されている。ロボット技術は今よりもさらに人々の生活に根ざすものになっているだろうし、VR/ARやニューロサイエンス(神経科学)などの技術が当たり前に使われるようになっていてもおかしくない。

参考:『未来年表』(https://seikatsusoken.jp/futuretimeline/

そんな時代に、メルカリは何を実現するのか。濱田さんは、「『メルカリ』を通じて、売るという行為をもっと自然に行えるようにしたい」と目標を語る。あらゆる不要品が、捨てられることなく世界中で取引される世界を2030年までにつくりたいというのだ。

株式会社メルカリ 取締役CPO 濱田優貴さん

「例えば、船の自動運転が実現し、関税の仕組みが変わって物流コストが劇的に下がれば、『いらなくなった日本の車を、それを必要とするアフリカの人に個人が売る』という体験が、誰でも気軽に出来るようになるかもしれません」

この20年でAmazonが「買う」という体験を格段に進化させたことは自明の理だ。そこで今度は、「売る」という体験を進化させるのがメルカリの役割だと濱田さんは熱を込める。

「今はまだ写真を撮影して、それを梱包して発送するという手間が『メルカリ』にはあります。しかし、『Brain-machine Interface(ブレイン・マシン・インターフェース)』と呼ばれる、脳波を読めるテクノロジーが発達すれば、イメージセンサーを使って椅子を思い浮かべるだけで、出品完了まで出来るようになるかもしれません。“売る”を“空気”にするには、僕らはそこまでやっていかなければいけない」

AI民主化プロジェクトの始動

こうした「未来」を実現するために、核となるのがAIだ。『メルカリ』のサービス内では2年ほど前から、出品する商品の写真を撮るだけで商品名やブランド名を表示させる「AI出品」機能を提供したり、AIで不正出品を検知したりすることが可能になった。US版では、写真を撮影するだけで商品の重量までAIで推定できるという。

株式会社メルカリ 取締役CPO 濱田優貴さん

「これからはAIの使われているプロダクトが飛躍的な成長を遂げ、世の中に溢れる時代が来ます。それは、かつて起こったIT革命レベルの大きなインパクトになる。そこに乗り遅れた企業はすぐに廃れてしまうはずです」

AI化の進んだプロダクトが人々にもたらすのは“熱中”だと濱田さんは言う。その急先鋒として挙げられるのが、中国ByteDanceが展開する『TikTok』とニュースアプリ『Toutiao(今日頭条)』だ。

「『TikTok』はユーザーがどの動画をどれぐらいの時間見たかによって、AIが次に見せる動画を瞬時に判別しています。すると次第に目の前には、興味のある動画しか現れなくなる。そのとき、人はプロダクトに“熱中”するんです。『メルカリ』でもAIによってより強力なレコメンドエンジンを生み出し、『売って、買う』というサイクルへの強烈な“熱中”をつくっていきたい」

同社では、昨年末からAIの民主化プロジェクトに取り組んでいる。非エンジニア向けに、機械学習のフレームワークを使って業務改善に生かすワークショップを継続的に開催するなど、機械学習やモデリング、学習の仕組みなどをストックし、エンジニアに限らず全社員がAIを使いこなせるようにすることが狙いだ。

また、データ基盤の整備や機械学習プラットフォームの構築を進め、将来的には社外への公開も視野に入れているという。

そんな中で、エンジニアには特に「技術力を磨くよりも『AIで何を実現したいのか』を考えるスキルを磨いてほしい」と濱田さん。エンジニアが強いビジョンを持つことが、企業の進化をさらに加速させていくと確信している。

2030年――遠いようで近い未来、テクノロジーは私たちの生活をいかに変えるのか。真のAIカンパニーへと姿を変えようとするメルカリが与えるインパクトは、きっと今以上に大きなものになるだろう。

取材・文/石川 香苗子 編集/君和田 郁弥(編集部) 撮影/赤松洋太

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