キャリア Vol.823

カリスマ産業医・大室正志が語る“睡眠不足の恐ろしさ”「落合陽一スタイルは最悪です」

一昔前までは、労働環境の悪さから「ブラック職種」とも言われていたエンジニア。ここ2〜3年の間でそんな常識は一変したように思える。働き方改革が進んでホワイトな職場が増え、リモートワークや週休3日など、先進的なワークスタイルを実践するエンジニアの姿が目立つようになった。

一方で、仕事にのめり込むあまり、自分の健康を蔑ろにしてしまう20代エンジニアは相変わらず多いのではないだろうか。

『NewsPicks』のプロピッカーとしても注目され、30社を超える企業で産業医を務める大室正志さんは「他職種と比較しても、若手エンジニアの健康に対する意識は低いと感じる」と警鐘を鳴らす。それはなぜなのか。エンジニアが20代で健康を蔑ろにしてしまうリスクとあわせて聞いた。

大室産業医事務所代表
大室正志さん
産業医科大学医学部医学科卒業。ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社統括産業医、医療法人社団同友会産業医室を経て現職。専門は産業医学実務。メンタルヘルス対策、生活習慣病対策等、企業における健康リスク低減に従事。現在日系大手企業、外資系企業、ベンチャー企業、独立行政法人など約30社の産業医業務に従事。『NewsPicks』ではプロピッカーとしても活躍。社会医学系専門医・指導医。著書『産業医が見る過労自殺企業の内側』(集英社新書)

長時間座りっぱなしだけど脳はフル回転
“アンバランス疲労”がもたらす悪影響

20代の体は、基本的には元気だ。少しくらい無理をして働いていても、体調に異変が出ることは少ない。たまに徹夜するくらいなら問題ないという人も中にはいるだろう。だが、それは「自分の体の疲労に気付いていないだけ」と大室さんは言う。

「エンジニアの方を診ていて受ける印象ですが、皆さん仕事がすごく好きですよね。だからこそ、作業に没頭し過ぎてしまうんです。ゲームなども、楽しいから一晩中やり続けてしまうことがありますが、そういうときでも体はしっかり疲れているんです」

エンジニアの場合、日中は椅子に座ってPC作業をしていることがほとんどだろう。約8時間の勤務時間の間、肉体はあまり使っていないのに、脳はフル回転させている。このバランスの悪さが余計に疲労をもたらすのだと大室さんは話す。

「20代のうちはこうした疲労が身体症状としては現れにくいため、健康管理に意識が向くことはあまりないと思います。しかし、長時間座りっぱなしで体は動かさず、脳だけを酷使するというワークスタイルをずっと続けていくと、30代以上になったときに、一気にガタがきてしまう恐れがあります」

代表的なのは、自律神経の乱れ、不眠症状、眼精疲労や頭痛、腰痛や肩凝りなどの症状。いずれも、慢性化してしまうと治りにくい病気ばかりだ。

そこで大事なのが、「未病」の意識を持つことではないだろうか。体に不調が出てからどうにかするよりも、不調を出さないよう心掛けていく方がずっと簡単だ。

落合陽一スタイルはやめましょう

「健康管理もプロの仕事」とはよく言うが、どうすれば若手エンジニアは健康な心と体を維持していけるのだろうか。先述した通り、肉体疲労と脳の疲労のバランスを整えるという意味では、適度な運動を生活の中に取り入れることは欠かせないだろう。その上で意識すべきは、「睡眠の長さと質」だと大室さんは言い切る。

「僕の知人の落合陽一さん(@ochyai)は、1日3時間睡眠で、エナジードリンクを過剰摂取する毎日を送っています。はっきり言って、健康にとっては最悪です(笑)。彼のように自分の身を削ってでも社会のために何かを成し遂げたいという人も中にはいるとは思いますが、20代エンジニアの方には毎日最低でも6時間は睡眠時間を確保してほしいですね。睡眠不足は体に疲労を溜め込むことにつながり、それがさまざまなカタチで心身の不調としてあらわれてきます」

実は、睡眠時間は人間の寿命にも大きく関わっているという。

「睡眠の研究は現在さまざまなデータが示されていますが、概ね7時間睡眠が死亡率は低いという結果が出ています。また、これはまだ完全には言えないですが、短時間睡眠はもとより長過ぎる睡眠も寿命に良い影響を及ぼさないことが示唆されています」

良い習慣を増やすより、悪い習慣を減らしていこう

また、毎日6時間以上の睡眠時間が確保できているにも関わらず、朝起きても疲れが取れていないと感じるなら、「睡眠の質が低い可能性がある」と大室さんは指摘する。自分の体に合った寝具を使うこと、寝る直前までスマホをいじるのをやめること、大きないびきをかいていないか確認すること。見直すべきはさまざまだが、簡単にできる睡眠の質アップのコツは、寝る90分前に入るお風呂だ。

「睡眠の質を高めるためには、寝る前に体の内側の深部体温を上げることが重要です。手っ取り早いのは、就寝90分前を目安に、39〜40度の湯船に10分以上浸かること。それだけでも寝起きのすっきり感が違ってくると思います」

湯上りには副交感神経の働きが活発になり、脳はリラックスモードへと移行していく。また深部体温が下がるタイミングで眠りに入ると、良い睡眠が取れやすくなるのだという。

ここまで、 若手エンジニアに向けて健康維持のためにできることを紹介してきたが、意外なくらい、大変なことも難しいこともない。むしろ「新しいことはやらなくてもいい」と大室さん。

「健康にいいことって、いつの時代にも流行があって、次々に上書きされていくでしょう? だから、新しい健康法にいちいち飛びつかなくていいんですよ。それよりも、体に悪いと言われている習慣を減らしていきましょう。例えば、『寝ない』っていうのはその代表格ですね。他にも『タバコをたくさん吸う』、『アルコールをたくさん飲む』、『野菜を全然食べない』、『全く運動しない』など、一般的に健康に良くないと言われていることっていろいろありますよね。そういう習慣を減らしていく方が大事です。こちらはエビデンス的にも『悪い』ということでほぼ決着がついていますので」

仕事を楽しめるのは、健康な心と体があってこそ。まずは自分の疲労を放置せず、頭に浮かんだ悪習慣を絶つことから始めてみよう。20代から健康管理を意識できれば、これから先も充実したエンジニアライフを送れるはずだ。

取材・文/君和田 郁弥(編集部)

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