この連載では、注目企業のCTOが考える「この先、エンジニアに求められるもの」を紹介。エンジニアが未来を生き抜くヒントをお届けします!
技術トレンドに振り回されるな――【ヤフー CTO・藤門千明】「ビジョンはあるか」エンジニアは自分の胸に問いかけよ【連載:CTO】
転職を繰り返し、キャリアを重ねる人も珍しくないWeb系エンジニアの世界。そんな中で、ヤフーのCTOを務める藤門千明さんは、新卒で入社して以来14年間同社で活躍してきた生え抜きだ。各種サービスの開発から開発者向けのプラットフォーム構築までさまざまな領域を渡り歩き、現在は約3000名規模のエンジニアやデザイナーといったクリエイターを技術面でリードしている。
世界中のテックカンファレンスへ赴き、GAFAをはじめとする海外企業のCTOやVPoEたちと親交を深めている藤門さんが、世の中に大きなインパクトを与えたいと考えている若手エンジニアに贈る助言とは?
失敗を重ねて気付いた。エンジニアにとって大切なこと
学生時代に『Yahoo!ジオシティーズ』でWebサイトを作ったことからヤフーで働くことに興味を持った藤門さん。2005年に入社してからずっと変わらないのは、「エンジニアとして何かを成し遂げたい」という思いだ。
「自分が作ったプロダクトで、どれだけ多くの人を喜ばせ、世の中を便利にすることができたか。それが、自分がエンジニアとしてこの世に存在した証になると思います。そのインパクトを最大化できるのは、サービスの幅が広く、規模も大きいこの会社だと思いました」
だから、藤門さんは転職や起業ではなく、ヤフーで業務を全うすることを選んだ。ヤフーで働くことが、短い人生で影響力を発揮できる最短距離だと考えたからだ。
また、こうした価値観が揺ぎ無いものになったのは、入社4年目に『SWAT』と呼ばれる社内の困りごとを解決するエンジニア組織に配属されてからだったという。
「サポートを必要としている社内のあらゆる部署に乗り込んで、ある時はキャンペーンページのフロントの仕組みをつくり、次の日はデータベースの不整合を直すプログラムを書く。またある時はサーバーのインシデントを自動的に集めるモニタリングツールを開発したりもしました。レポートラインは毎日変わるし、どのプロジェクトも3カ月や半年で終わってしまうので、一つの会社にいても多様な経験ができると思えたんです」
アウェイな状態でどうミッションを成し遂げるか模索したSWATでの日々。その中で気付いたのは、エンジニアにとって大事なのは技術力だけではないということだった。
「SWATに配属されたばかりの頃は、『この技術を使えばいいんですよ』なんて上から目線で他部署の方に助言したりして、ずいぶん失敗しました。つまり、テクニカルなことだけで解決できる課題なんて、ほとんどなかったんです。
その時に、じゃあどうすればいいのかって自分なりに考えて、そのチームが何故うまくいっていないのか、何にチャレンジしようとして苦戦しているのか、メンバーの言うことに耳を傾け、ボトルネックを引き出すことの方がよほど重要なんだと気付きました」
海外トップエンジニアに共通する
「ビジョンファースト」なスタンス
藤門さんが交流を持つ海外のトップエンジニアたちも、「技術は手段に過ぎず、ビジョンを成し遂げるためにある」というスタンスを貫く人が多いそうだ。
「海外の優秀なエンジニアほど、『ビジネスを通じて世の中をどう変えたいのか』を強く意識するビジョンファーストで物事を考えている人は多いと思います。エンジニアにとって大切なのは、『技術へのこだわりではなく、世の中で役立つサービスをつくること』というスタンスが一致しているんです」
もちろん技術を磨き込み、圧倒的な強みとなる「スキル」、移り変わりの早いテクノロジーをキャッチアップし続ける「マインド」、この2つは前提として必要だ。その上で、「技術よりも、いいサービスをつくることが大事。いいサービスで世の中を変えて初めて評価される」と藤門さんは考えている。
全エンジニアが「CTO目線」を持てば世界は変わる
最後に、藤門さんは読者に向けて「あなたのビジョンは何ですか?」と問い掛ける。
「若手エンジニアの皆さんに僕が問い掛けたいのは『あなたのビジョンは何か』ということです。繰り返しになりますが、技術はビジョンを達成するための手段でしかない。成し遂げたいビジョンが定まらなければ、いま何を学び、どんな力をつけるべきなのかが見えてこないはずです」
ただ、仕事を通じて成し遂げたいことを、誰もがすぐに見つけられるわけではないだろう。自分のビジョンが何なのかがクリアになっていない若手エンジニアに向けて藤門さんがアドバイスするのは、「『CTO目線』を持って働いてみよう」ということだ。
「僕の場合は、SWATを始めとしたいろいろな開発経験を通じて、『ユーザーに提供したい価値は何か?』『それを実現するプロダクトはどうあるべきか?』『プロダクトを構成する技術は何を選択すべきか?』『それを成し遂げるために、自分はどのような役割を担い、チームはどうあるべきか?』などを考えつつ試行錯誤しながらやってきた。今その役割を振り返れば、小さなセクションのCTOだったと考えられます。例え20代の若手であったとしても、それぞれのプロジェクトやチーム、部門で、自分がCTOだったらどうすべきかという『CTO目線』が大事なのかもしれませんね」
全てのエンジニアがCTO目線を持ってサービスを開発することで、日本から世界を変えるようなサービスを生み出したい。自分も常にそういう人材でありたい。藤門さんはそんな大きな希望も語ってくれた。
世の中に、仕事は数え切れないほどある。そんな中で、自分はなぜエンジニアという職業を選んだのか。今、何のためにエンジニアとして働いているのか。今一度、自分に問い直してみると、今後のキャリアの指針となるような“ビジョン”が見えてくるかもしれない。
取材・文/石川香苗子 撮影/赤松洋太
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