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データサイエンティストになるには? 必要なスキル・仕事内容・勉強法を網羅的に解説

IT用語集

企業の経営方針の策定や事業展開の予測など、あらゆるビジネスシーンでデータの活用が不可欠となっており、その中心的な役割を担うのが「データサイエンティスト」です。

この記事では、データサイエンティストに求められるスキルや仕事内容、未経験から目指す方法など、あらゆる角度からデータサイエンティストについて徹底解説します!

※この記事は2020年5月15日に公開し、2024年8月9日に内容を更新しております

データサイエンティストとは

データサイエンティストとは、ビッグデータを分析・解析し、その結果をもとにビジネス課題を解決するスペシャリストのことを指します。

例えば、自社製品をより効率的にPRするために、特定のSNSやブログなどの記事からデータを収集し、口コミやメインターゲットを分析することもデータサイエンティストの業務の一つ。単純なキーワード検索での統計データを作成することもありますが、AIを活用して「記事の内容がどういったものか」というところまで分析することもあります。

そもそもデータサイエンスとは

対象分野の知識と数学や統計学、AI、プログラミングなどを組み合わせて膨大なデータを分析・解析し、実用的な知見を見出すことをデータサイエンスと称します。

近年はインターネット環境やデバイスの進化、ユーザー数の増加などから膨大なデータ(ビッグデータ)を低コストでスピーディーに処理できるようになりました。そのような背景から、ビッグデータを分析・解析してビジネスに活用するデータサイエンスが活発化しています。

データアナリストとの違い

データサイエンティストと職種名が似ていることから混同されやすいデータアナリストですが、両者は手掛ける業務の担当領域が異なります。

データサイエンティストは、データの収集・分析・機械学習モデルの構築を通じて高度な洞察を引き出し、ビジネス戦略を策定します。一方、データアナリストは、主にデータの整理・可視化・報告を行い、既存のデータから具体的な結論を導き出してビジネスの意思決定を支援します。

データサイエンティストは高度な統計・プログラミングスキルを必要とし、データアナリストはデータ処理と分析のスキルにより重点を置きます。

データサイエンティストの仕事内容

データサイエンティストの業務は多岐にわたりますが、一般的には以下の工程に分かれます。

データ収集/仮説・テーマの設定

データ収集の方法は主に二種類あります。

一つ目は既に自社内でデータを保有している場合です。ただし、データが社内に蓄積されていても、各部署が個別にデータを管理していることが多いです。二つ目は、新たにデータの収集が必要な場合です。この場合、現状を把握するために新たなデータ収集を行います。

収拾したデータについては、その内容を検証するために仮説やテーマを設定しましょう。正確な検証を行うには、精度の高い仮説やテーマを立てることが重要です。また、収集したデータを正しく処理するために形式を整える作業も必要です。

分析

データが揃ったら、いよいよ分析作業に移ります。

具体的には、形式の異なるデータ(画像、テキスト、リンクなど)を整え、グラフなどで可視化します。統計処理を用いてデータの規則性を見出すこともあります。さらに近年では、AIを活用して予測モデルを構築することもあります。

レポーティング/仮説の検証

データの分析が終わったら、その結果をもとにレポートを作成します。分析結果を報告する相手が統計的な知識を持っているとは限らないため、専門知識や前提知識が無い方でも理解しやすい形で情報を提供することが大切です。

そして分析によって仮説が立証されたのかどうか、立証されなかった場合はその要因についてなど、データ分析に基づく新しい知見をレポートにまとめます。

課題解決にむけた提案

データ分析の結果をまとめたうえで、改めて解決すべき課題を定義したり、課題解決によって期待できる効果や目標を明確に提示したりします。これらを踏まえて、意思決定者と共にKPIを設定します。

データサイエンティストに必要なスキル

データサイエンティストには、データを扱うスキルはもちろん、その分析結果をもとにビジネス課題の解決につながる提案をするスキルなど、幅広い能力が必要です。具体的にどのようなスキルが必要かを一つずつ見ていきましょう。

数学・統計学

データサイエンスには、基本的な数学・統計学の知識が必要不可欠です。これらのスキルはデータ分析を行う上で、データの性質や関係性を理解したり、データの前処理、可視化、AIを活用したりする際に活用されます。

データサイエンティストが扱うデータ量は非常に膨大なため、統計・分析ツールを利用することが一般的ですが、分析結果の解釈ができなければ正確なビジネス提案はできません。ツールを使いこなすためにも、一定水準以上の数学・統計学の知識が必要となります。

プログラミングやデータベースに関する知識・スキル

特にデータサイエンスの分野では、画像データやテキスト、リンクなどが混在したSNSやブログの内容など、形式の違うデータを扱うことも多いため、PythonRなどのプログラミング言語やSQLなどのデータベース言語を活用しながらデータの整理・処理を行う必要があります。ただ処理を行うだけでなく、サーバーの負荷軽減や時間短縮のために効率を考えて設計することも大切です。

また大量のデータを処理する際はAIの知識も必須になります。AI活用の観点からも、データサイエンティストにとってPythonは習得必須の言語と言えるでしょう。

論理的思考力

データサイエンティストにとって、論理的思考力は極めて重要な素養の一つ。データ分析の過程で、因果関係やパターンを正確に見つけ出すには、論理的に筋道を立てて問題を解決する力が不可欠になるからです。

また、複雑なデータを理解して意味のあるインサイトを抽出するためには、客観的かつ合理的な判断が求められます。論理的思考力があることで、データから信頼性の高い結論を導き出し、より精度の高い意思決定が可能になります。

データサイエンティストへの転職に有利な資格

データサイエンティストになるために必ず必要な資格はありませんが、転職時において知識やスキルを証明するための要素として、専門資格は非常に有効です。データサイエンティストの転職に有利な資格を紹介しますので、あなたのスキルや目的に応じて資格取得にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

データサイエンティスト検定

『データサイエンティスト検定 リテラシーレベル』は、一般社団法人データサイエンティスト協会(DS協会)が運営する試験であり、通称『DS検定』と呼ばれます。

DS検定では、データサイエンティストに必要な以下の三分野における基礎的な問題が出題されます。

スキル名 スキルの詳細
ビジネス力 課題背景を理解した上でビジネス課題を整理し解決する力
データサイエンス力 情報処理、人工知能、統計学等の情報科学系の知恵を理解し使う力
データエンジニアリング力 データサイエンスを意味のある形に使えるようにし、実装・運用できるようにする力

データサイエンティスト協会ではデータサイエンティストに必要なスキルや知識をスキルチェックリスト・タスクリストという形で定義し、高度IT人材の育成と業界の健全な発展への貢献、啓発活動を行ってきました。デジタル時代の人材育成や教育改革は国全体の重要な課題となっており、ビジネスを推進する上でデータ・AIの活用戦略や実装を担うデータサイエンティストへの期待が高まっています。

本検定の取得により、データサイエンティストに必要なデータサイエンス力・データエンジニアリング力・ビジネス力についてそれぞれ見習いレベルの実務能力や知識、また、数理・データサイエンス・AI教育のリテラシーレベルの実力を有していることを証明することができます。 データサイエンティストを目指す人達とそれを必要とする産業界を結びつける一つの指針となることを目指しています。

データサイエンティスト検定™ リテラシーレベルとは

本試験の対象者は、データサイエンティスト初学者やこれからデータサイエンティストを目指すビジネスパーソン、データサイエンティストに興味を持つ大学生や専門学生などとされており、エンジニア未経験者も想定されています。

統計検定 データサイエンス基礎

統計検定 データサイエンス基礎は、一般財団法人統計質保証推進協会が運営する試験であり、通称『DS基礎』と呼ばれます。

その名の通りデータサイエンスに関する基礎力を評価する試験であり、Excelを用いたデータ分析スキルを問う問題が出題されます。高校数学、情報の分野が出題範囲とされており、データサイエンスに特化した試験の中でも低難易度であることが特徴です。データサイエンティストを目指す上で、まず最初に取得を目指す資格としてもおすすめです。

統計検定 データサイエンス発展

通称『DS発展』と呼ばれる、『DS基礎』の上位資格になります。大学教養レベルの一般的な内容が出題され、Excelを用いたデータ分析、PythonやRを用いたより高度な分析やプログラミングスキルなどが問われます。

統計検定 データサイエンスエキスパート

通称『DSエキスパート』と呼ばれる、2023年から運用されるようになった比較的新しい試験。大学専門課程レベルの知識が要求される、統計検定の中では最高難易度といわれている試験です。

出題範囲は「統計基礎」「数学基礎」「計算基礎」「モデリング・AIと評価」の四つの大項目があり、非常に広い範囲かつ深い知識が要求されるのが特徴です。

データサイエンス数学ストラテジスト(中級)

データサイエンス数学ストラテジスト(中級)は、公益財団法人日本数学検定協会が運営する試験であり、通称『MDS-S(中級)』と呼ばれます。

データサイエンス分野の中でも数学を扱う技能を問う試験であり、レベルに応じて「中級」「上級」に分類されます。中級は高校1年生程度の基礎数学スキルがあれば合格可能といわれています。

数学スキルはデータサイエンティストの土台となる部分となるため、まずは職種の適性を見極めたいという方におすすめの試験です。

データサイエンス数学ストラテジスト(上級)

通称『MDS-S(上級)』と呼ばれる、『MDS-S(初級)』の上位資格です。高校レベルの基礎数学スキルに加えて、大学初年度レベルの上級数学スキルが問われます。

国が目標に掲げる「数理・データサイエンス・AI人材」の領域に基づく試験とされており、データサイエンスの素養を身に付けたい人や、組織DXを推進するポジションを担う人におすすめです。

G検定

G検定は、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が運営する資格です。AIの中でも特にディープラーニング関連の知識が問われる試験です。

まずはディープラーニングやAIに関する基本的な技術や活用方法を身に付けたいという方に、特におすすめの試験です。

E資格

E資格も、G検定と同じく一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が運営する資格です。E資格はよりエンジニア向けの試験内容となっており、実際にディープラーニングを実装できるかどうかが問われます。

E資格の受験資格を得るには「認定プログラム」を受講・修了する必要があり、試験の出題内容も非常に広範囲になります。G検定よりも、実質的な難易度は高いといえるでしょう。

Python3 エンジニア認定基礎試験

一般社団法人Pythonエンジニア育成推進協会が運営する試験です。ITスキル標準はレベル1に分類され、比較的難易度の低い試験といえます。

PythonはAIや統計解析で用いられることが多いため、データサイエンティストとしては習得しておきたい言語の一つです。この資格を取得することは、Pythonで基本的な実装ができるスキルがあることの証明につながります。

認定スクールでは模擬テストを無料で公開しています。また公式サイトではプログラミング未経験者向けの参考図書なども紹介されているため、興味のある方はぜひチャレンジしてみてください。

データサイエンティストに向いている人

データサイエンティストは、プログラミングや統計スキルなどエンジニア的な要素も必要ですが、ビジネス的な視点も求められるポジションです。どのような人がデータサイエンティストに向いているかを、一緒に見ていきましょう。

数字や分析が好きな人

数学や統計学に関する知見はデータサイエンティストにとって土台となる部分であり、長時間データと向き合いながら分析をすることが求められます。

文系・理系を問わず数学や分析が好きな人であれば、自身のスキルや知見を業務に活用しながら、大きなやりがいをもって仕事に取り組めるでしょう。

根気強く作業を繰り返せる人

データサイエンティストは大量のデータから仮説を検証したり新しい知見を導き出したりする仕事です。時には長時間に及ぶ繰り返しの作業が発生したり、努力が実を結ばないケースも珍しくなく、地道にデータに向き合う必要があります。

すぐに結果が伴わなくとも、モチベーションを失うことなく作業に取り組める根気強さは、データサイエンティストとして非常に重要な要素です。

論理的思考力がある人

データサイエンティストは、仮説の立案やデータベース設計、仮説の検証などあらゆる過程において論理的思考力が必要です。

特に検証結果を説明する際は、データサイエンスに詳しくない相手にも分かりやすく伝える必要があるため、データに基づいた分析結果など根拠のある提案をしなければなりません。

論理的思考の下、簡潔でわかりやすいコミュニケーションが取れる人はデータサイエンティストに向いているといえます。

未経験からデータサイエンティストになるには

データサイエンティストは多くの専門知識やスキルが求められるポジションですが、未経験からチャレンジするためにはどうすれば良いのでしょうか。

まずは類似職種を経験してみる

IT分野かつデータ分析を手掛けるポジションで知識やスキルを培うことで、将来的にデータサイエンティストとしてステップアップするチャンスが広がります。

データサイエンティストの類似職種

●データエンジニア
●データアナリスト
●開発エンジニア など

独学で知識を身に付ける

完全未経験の場合は、まずはデータサイエンティストとしての適性を判断するためにも、プログラミングや分析・統計スキルの勉強を始めることをおすすめします。前述した資格の取得を目指してみるのもいいでしょう。

また、無料・有料問わずオンラインの学習サイトも充実しているため、ぜひ活用してみてください。以下におすすめの学習サイトを紹介します。

Udemy

Udemy』は動画で学習ができるオンラインサービスです。プログラミング言語だけではなく、資格講座や資金形成の方法など、さまざまなジャンルの講座が用意されています。

Udemy上には、データサイエンティストを目指す人に向けた動画が多く掲載されています。動画はセール時に購入すれば、通常時よりも非常に安価で入手可能です。自分が学びたいプログラミング言語に絞って学習するのが良いでしょう。

★参考記事|【Udemyとは?】基本的な使い方から専門家の評価、おすすめコースやセール情報まで詳しく解説!

Coursera 機械学習コース

Coursera』は世界中の大学で実施される学習コースをオンラインで学べる教育サービスです。基本的には無料で利用ができ、より専門的な内容を学びたい場合には有料となります。

Courseraでは機械学習に必要な基礎的な数学、機械学習アルゴリズム理論、機械学習アルゴリズムの実装方法、そして機械学習システムを構築する際に直面する壁とそれを乗り越える方法について学ぶことができます。期間としては3カ月程度で修了できる内容となっているため、毎日少しずつ進めるのがおすすめです。

Chainer チュートリアル

Chainer』は、ニューラルネットワークの学習や計算ができるオープンソースソフトウェアです。日本のAI企業であるPreferred Networks(PFN)が、Chainerの基礎を学ぶためのチュートリアルを無償公開しています。

このサービスでは、機械学習の勉強を進めるために必要な数学の知識から、Pythonを用いたコーディングの基本を学べます。他にも、機械学習・ディープラーニングの基礎的な理論、画像認識や自然言語処理などに機械学習を応用する方法に至るまで、幅広いトピックを解説しています。

このサイトだけで機械学習・ディープラーニングの初歩的な知識が身に付けられるよう設計されており、初心者の方でも「何から学び始めればいいのか」と迷うことなく学習を始められます。

Aidemy

Aidemy』は、人工知能学習ができるオンライン学習サービスです。プログラミング初心者でも始めやすいように、プログラミングに必要な環境構築が不要になっています。

また、事前知識がなくても人工知能に必要な数学やPythonの基礎的な内容から学習可能で、図解やイラスト・動画を取り入れた教材が多いため、文字だけで学習をするよりも理解しやすいのが特徴です。

プレミアムプランでは、完全オンラインでのプログラミングスクールとして利用ができるため、集中的にデータサイエンティストのスキルを身につけたい方におすすめです。

データサイエンティストの需要・将来性

将来性が高いという声が一般的

結論から言うと、データサイエンティストの将来性は高いという見方が一般的です。理由は、ビッグデータの活用が進み、あらゆる業界・業種でAIを用いた分析の需要が高まっているからです。

データサイエンティストには分析・解析だけでなく、その結果を踏まえたビジネス課題の解決まで求められます。業務内容は非常に複雑であり、高い能力が必要な仕事だからこそ希少価値が高く、転職市場でも有利なポジションであることは間違いありません。

矢野経済研究所が2023年に発表した「データ分析関連人材規模に関する調査」によると、国内のデータ分析関連人材規模は年々増加しており、2025年には2020年の2倍に上昇すると予測されています。一方で各社の人材獲得競争は激化しており、需要が高い状態が今後も続くことが分かります。

IT事業者では、DX関連プロジェクトを推進していくうえで、データサイエンティストや分析アーキテクトのようなIT寄りのスペシャリストと併せて、特にビジネスとしての成功に重きを置く分析コンサルタントの重要性が益々高まっていく見込みである。

ユーザー企業ではデータドリブン経営の浸透に伴い、データ分析の内製化に向けた機運が強まっており、データサイエンティストや分析アーキテクトを中心に専門部署を起ち上げる企業もみられる。また、データ分析支援に係る専門部署に留まらず、事業部門側でも事業の効率化や新事業の立上げなどにデータ分析の活用が広がりを見せつつある。

2023年度の国内データ分析関連人材規模を123,400人と予測、2025年度には176,300人に達する見通し ~データドリブン経営の浸透に向けて、ジョブ型採用への移行や研修プログラムの急ピッチな整備が続き、データ分析人材の育成が進む~

需要が減っていくという予想も

データサイエンティストの需要は今後も高止まりという見方が一般的ではありますが、AI技術の進歩により「データサイエンティストが不要になるのでは?」といった意見も一定数存在します。

AIによって高度なデータ処理ができるようになれば、データサイエンティストの仕事の一部が代替されるという見方があるからです。既にデータサイエンティストが行うデータ処理・分析の工程にもAIの技術が活用されていることから、今後もこの流れは加速することが予想されます。

とはいえ、この領域の業務がすぐさまAIに代替されるとも言い切れず、データサイエンティストの需要がすぐさま減っていくということは考えづらいでしょう。

まとめ:データサイエンティストは多様な業界・業種で重宝される人材

データサイエンティストは、膨大なデータからヒントを得てビジネス課題を解決したり、新しい知見を生み出したりする人材です。どの業界・業種でも重宝される市場価値の高い職種といえます。

ただデータサイエンティストには明確な基準が存在するわけではなく、求められるスキル・知識は時代に応じて変化が生じることが予想されます。最新の技術トレンドや市場感覚が非常に重要になるポジションです。特にAI技術の進歩は、データサイエンティストの業務範囲に大きな影響を及ぼすでしょう。

文/赤池沙希

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