本連載では、外資系テクノロジー企業勤務/圓窓代表・澤円氏が、エンジニアとして“楽しい未来”を築いていくための秘訣をTech分野のニュースとともにお届けしていきます
最新技術もビジネストレンドも見えてくる?エンジニア的ゲームの楽しみ方【連載:澤円】
圓窓代表
澤 円(@madoka510)
立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、外資系大手テクノロジー企業に転職、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。琉球大学客員教授。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。
著書:『外資系エリートのシンプルな伝え方』(中経出版)/『伝説マネジャーの 世界№1プレゼン術』(ダイヤモンド社)/『あたりまえを疑え。―自己実現できる働き方のヒントー』(セブン&アイ出版)※11月末発売予定
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皆さんこんにちは、澤です。
コンピューターを含む各種テクノロジーの発展の歴史を辿ってみると、源流にあるのは悲しいことに常に「戦争」でした。
今でも、銃弾が飛び交っている地域はありますし、緊張関係にある国々も存在しています。それでもなお20世紀に比べて21世紀は、ずいぶんと戦争が起きにくくなり、「戦争に最新テクノロジーを使うのはやめよう」という姿勢を打ち出す企業も増えてきています。
そして、戦争以外でテクノロジーの発展に寄与しているのがゲームを含むエンターテイメントの世界です。今回は、エンターテイメントの中でもゲームをテーマにしつつ、ビジネスへの応用や体験の大切さをお話します。
ゲームの世界で発達したテクロノジーは、
他の産業にも応用されている
私が小学生の頃に、任天堂が携帯型液晶ゲーム機『ゲーム&ウオッチ』を発売し、小さな液晶画面でゲームを楽しむことができるようになりました。
今見れば恐ろしく解像度も低く、できるゲームも一機種一つだけという代物でしたが、友達が持っているととても羨ましく思ったものです(私は持っていなかった)。
また、ゲームセンターではさまざまなアーケードゲームが並び、インベーダーゲームは一世を風靡しました。その後、ゲームセンターのアーケードゲームと家庭用のゲーム機、そしてパソコンやスマートフォンのゲームがそれぞれ独自の進化を遂げて今に至ります。
そして、それぞれのゲームで発達したテクノロジーは、他の産業などにも流用されています。例えば今年の2月には、DeNAのスマホゲームで蓄積されたAI技術を、関西電力の火力発電所で応用するというニュースも報道されました。
ゲームにはたくさんの人が夢中になって遊んだ結果として、膨大なデータが蓄積されます。そのデータはまさに宝の山になるわけですね。
ちなみに、マイクロソフトが長年にわたってリリースしていた『Flight Simulator』は、実際のパイロットのトレーニングにも使われていたそうです。私も自分のパソコンにジョイスティックを接続して、毎日いろいろな飛行機を飛ばしては墜落させまくっていました。パイロットを職業に選ばなくて本当によかったと思います。
この『Flight Simulator』ですが、2014年Steam版を最後に新しいバージョンはリリースされなくなりました。しかし、今年6月9日に米国で開催された「E3 2019」と同時に開催したイベント「Xbox E3 Briefing 2019」で、『Flight Simulator』の最新バージョンを2020年にリリースすることを発表しました。最新バージョンでは、Azure AIを使ってより素晴らしいゲーミング体験ができるようです。楽しみですね。
ゲームの世界に興味を持てば、
次のビジネストレンドが見えてくる
さて、この連載の読者の皆さんの中には、全くゲームに興味がない方もいらっしゃると思いますし、逆にゲームをやる時間をどうやって捻出するかを考えているゲーマーな方もいらっしゃることでしょう。
ただ、私としては「エンジニアはゲームには興味を持っておいた方がいい」と考えています。
前述した通りゲームの世界で培われた技術は、他のビジネスにどんどん領域を広げていますし、ゲームに使用される各種技術の発展や変化は非常にスピードが速いので、とっても勉強になります。
また、ビジネスモデルという観点でも、フリーミアムの考え方や課金モデルなど、ゲームの世界で実装されていることから学ぶと理解が早くなります。
世の中のトレンドをいち早くキャッチアップして、キャラクターを取り入れたり広告を出したりするマーケティング手法も、ゲーム業界は洗練されていますよね。
また、ゲームはどうしても飽きられるというリスクを抱えている分、常に「戦い続ける」というマインドを感じさせる経営者がいるのも見逃せません。ボクが尊敬する株式会社gumiの國光宏尚社長(@hkunimitsu)も、まさにそんな人です。
興味範囲が非常に広く、恐ろしく勉強家で、発信力もあり、経営者としてとても尊敬できる方です。何度かお話をさせていただいたのですが、とにかく話題の引き出しの多さ、さまざまな事象に対する理解の深さには、いつも驚かされるとともに自分の努力不足を反省します。
そして、最高のゲーミング体験には、最新のテクノロジーが不可欠であることを技術者視点でも理解しており、経営者としてのマインドセットと技術力を融合してご自身の会社経営に生かしておられます。
そして、最近では新規事業としてAR/VRやブロックチェーン、仮想通貨の領域をターゲットにされています。ゲーム体験をよりリッチにしていくというアプローチと、最新技術をリアルなビジネスとして成長させていくというアプローチの両面を狙うあたり、「さすが!」といった印象を受けます。
ゲームというのは、ビジネスとしては「水物」という印象を持っている方も多いでしょう。ただ、実際にゲーミングビジネスに取り組んでいらっしゃる方々を見ていると、世の中のトレンド、最新技術の理解、斬新なマーケティング手法など、最もカッティング・エッジなやり方で経営されているな、という印象を受けます。
物事をより正しく理解するための最良の方法は誰かに教えること
これからのビジネスの発展には、ゲーミングやエンターテイメント、ホビーの世界で培われたさまざまなテクノロジーが応用されていくのは間違いありません。ドローンとVRの組み合わせは、災害の対応や物流などに生かされています。
もともとゲーミングデバイスだった『Kinect』の技術は、『HoloLens』や『Azure Kinect』へと発展し、ビジネスの世界で実用化が進んでいます。「え、そんな使い方が?」という驚きがあるのも、ゲーミング技術の面白さです。
ただ、一つ気にしておかなくてはならないのが、「ビジネスサイドの人たちもゲーミング技術に興味をもっておく必要がある」ということです。
もちろん、自分がゲーマーとして楽しむというのでもいいのですが、「技術としても興味を持つ」というのがポイントです。
世の中にどんな技術があるのか、その技術がどんなユーザー体験をもたらすのかは、やっぱり自分で試してみるのが一番ではないかと思います。
私は相当なガジェット好きなので、新しいデバイスが登場すると片っ端から試してしまうタイプです。
何せポンコツエンジニアですから、技術的にそれほど深く理解できるわけではありませんが、実際に体験すれば「どんな感じなのか」をリアルに語ることはできます。
早めに体験しておくことで、実際にビジネスとして応用される段階になってきたときに、先行者としての目で触れられます。
また、「誰かから教わる側」ではなく「誰かに教える側」のポジションも取ることができます。このポイントは非常に重要だと思っています。
というのも、「物事をより正しく理解するための最良の方法は誰かに教えること」だからです。
このことは他の経済学者のピーター・ドラッカーも大昔に仰っていたことなのですが、自分が理解できていないことは人に伝えられません。また、他者に伝えようと思った時点で、言語化しようという脳の働きが活性化されます。
何より、ゲーミング体験のいいところは「楽しい」ということです。この体験がビジネスにも生かせるのは、とても素敵なことではないかと思います。
さらに、楽しいのに加えてビジネスの先行者としてのポジションが取れるのは、夢のような話です。ただ「何も考えずにゲームにのめり込んでしまう」のでは、ビジネスパーソンとしては意味がありません(もちろんそれくらいハマるゲームがあってもいいのですが)。
あまり小難しく考え過ぎなくてもいいですが、「なんでこのゲームはUIをこのデザインにしたんだろう」とか「どのユーザー層をターゲットにしてテストしたのかな」とか「このゲームのコンセプトを応用できる業界ってあるのかな」なんて考えながら遊ぶのも、エンジニアとしては楽しいのではないかと思います。
ゲームやエンターテイメントの世界を通して、これからのビジネスの世界を予想するのは、なかなかワクワクしますね。エンジニアとして、テクノロジーの観点からあれこれ妄想しながらゲームに触れてみましょう。
セブン&アイ出版さんから、私の三冊目となる本が発売されました。「あたりまえを疑え。自己実現できる働き方のヒント」というタイトルです。
本連載の重要なテーマの一つでもある「働き方」を徹底的に掘り下げてみました。
ぜひお手に取ってみてくださいね。
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