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平井IT政策担当大臣が語る、日本のデジタライゼーション戦略【新経済サミットレポート】

ITニュース

    2019年5月24日、行政手続きを原則として電子申請に統一するデジタルファースト法が参院本会議にて可決、成立した。

    2019年度中から順次、引越しや相続などの手続きがインターネット上で行えるようになる見込みで、公的サービスのデジタル化を推進する優秀なエンジニア部隊を行政機関に設置することも急務となっている。

    引用:全ての国民が「デジタル社会」で幸せに暮らせるために平井卓也(ひらいたくや) IT担当大臣(科学技術、クールジャパン、知的財産、宇宙政策) 自民党 衆議院議員

    そして、この“日本のデジタル化”をリードしているのが、現IT政策担当大臣の平井卓也氏だ。

    平井卓也(ひらい・たくや)

    1980年電通入社。1987年西日本放送代表取締役社長に就任。2000年に無所属で衆議院選挙に当選し、同年に自民党入党。自民党ネットメディア局長などを経て、2018年に情報通信技術(IT)政策担当 内閣府特命担当大臣(科学技術・知的財産戦略・クールジャパン戦略・宇宙政策)に就任

    2019年6月20日(木)、ザ・プリンスパークタワー東京で開催された『新経済サミット[NEST]TOKYO 2019/New Economy Summit TOKYO 2019』に登壇した平井氏は、デジタルファースト法施行後のビジョンや、デジタル化が社会に与えるインパクトについて、司会の三木谷浩史氏(新経済連盟代表理事・楽天会長兼社長)と金丸恭文氏(フューチャー代表取締役会長兼社長)とともに語った。

    本記事では、三人によるトークセッション「デジタルファーストのインパクト-日本のビジネス、日本の社会はこう変わる-」から、平井氏の話を中心にご紹介しよう。

    平成の反省は“デジタイゼーション”に留まってしまったこと

    「我々が今までやってきたことは、“デジタライゼーション”ではなく“デジタイゼーション”だった」

    平井氏が最初に口にしたのは、そんな反省の言葉だった。

    国家全体でデジタル化を推進しようとしたものの、平成ではデジタルツールの利用を広げただけにとどまり、「長期的な視野を持ってビジネスモデルを変えるまでには至らなかった」とこれまでの取り組みを振り返る。

    しかし、国家単位ではうまくいかなかったデジタライゼーションも、企業単位で見れば平成の時代に成功事例が数々生まれている。

    そうした企業では働き方改革が進み、生産性の向上や利益率の改善なども見られる。

    平井氏は「令和の時代には、デジタルファースト法を浸透させ、真のデジタライゼーションを日本全土で進めていく」と力強く宣言した。

    デジタルファーストで変わる日本の社会

    また、デジタルファースト法の施行を平井氏が重要視するのには、もう一つ理由がある。

    レガシーシステムを残して次の時代を迎えると、いずれ維持者が居なくなり、保守管理に莫大なコストがかかってしまうからだ。

    「そこで、これからのシステムは徹底的にユーザーインターフェースを重視した上で、全てのシステムをクラウドベースに変えていきます。

    現行のシステムも動かしながら切り替えることにはなりますが、国民の皆さまに『便利な世の中になった』と最終的に感じていただけるように、徹底的にやりきることが本政策の最も大切なポイントです」(平井氏)

    三木谷氏、平井氏、 金丸氏

    三木谷氏(写真左) 平井氏(写真中央) 金丸氏(写真右)

    しかし、公的サービスのほとんどをデジタル化するとなれば、地方自治体や高齢者からの反発もあるだろう。デジタルにアクセスしづらい人々を置き去りにしない工夫はあるのだろうか。

    平井氏は、その対策の一つとして「デジタルサポーター」の設置を挙げた。

    「高齢者などにデジタルの活用方法を教え、利用促進を促す『デジタルサポーター』制度も社会全体で広げていこうと考えています。

    今後は民間のボランティア団体やNPOなどに協力を仰ぎ、デジタルサポーターを増やして行く予定です」(平井氏)

    平井氏にはもうすぐ90代になる母親がいるが、最近になってiPadでSNSを見たり、Skypeで孫と画面越しに会話ができるようになったことを自身のFacebookにポストしている。

    「隣でデバイスの使い方を教えてくれる人がいれば、高齢者でもすぐにこうしたツールを使えるようになります」と話し、デジタルサポーター設置の重要性を説いた。

    また、それとあわせて、公的サービスのUI/UXを高齢者の利用を視野に入れたかたちで見直していくという。

    こうした平井氏の発言を受け、金丸氏は「日本は今、世界の中で高齢化のトップをひた走っている。デジタルデバイドの問題を真っ先に解決し、後に続く他国が学べるような先進的な事例をつくる必要があるのではないか」と付け加えた。

    金丸氏

    スタートアップ・エコシステム拠点の形成で日本発のユニコーン企業を増やす

    また、デジタル化の面で世界の先進国や新興国に遅れをとった日本が巻き返しを図るためには、「国内のスタートアップ企業の力が欠かせない」と平井氏は続ける。

    デジタルファースト法の浸透とあわせ、新たなユニコーン企業を日本国内で生み、育てるための環境づくりに取り組む意思を見せた。

    平井氏

    その一つが、米国・シリコンバレーのような「スタートアップ・エコシステム拠点」を形成することだ。都市や大学などを巻き込み、起業家教育や世界のテック系人材の招致、ベンチャー企業等の技術開発支援などを行う地域をつくる。

    スタートアップ・エコシステム拠点形成戦略(最終とりまとめ)

    拠点をどこに設置するかは未定で、これから公募などを経て決定する。

    また、日本初のユニコーン企業を増やしていくために欠かせないのが、先にも触れた起業家や技術者の輩出だ。

    若手ビジネスパーソンなども交えた有識者懇親会、通称「平井ピッチ」を通じて出会った人たちを例に、「現代の若者が持つポテンシャルは、私たちの世代と比べても遥かに大きい」と平井氏。

    「デジタルネイティブ世代のポテンシャルを最大限に引き出し、世界に通用するビジネスを育てていく後押しをしていきたい」と述べ、トークセッションを締めくくった。

    デジタルファースト法やスタートアップ・エコシステムの拠点形成が計画通りに進んでいけば、エンジニアの仕事や暮らしにも少なからず影響が出るはず。今後の動きにも注目していきたい。

    取材・文・撮影/河西ことみ(編集部)

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