キャリア Vol.929

「苦手の克服に時間を割くな。得意なことを継続せよ」アカツキCTOから若手エンジニアへの助言

【特集】CTO’s CAREER STRATEGY

「AIに仕事が奪われる」という意見が目立つ昨今。テクノロジーを扱う側のエンジニアであっても、「仕様書通りに開発する」だけでは生き残れない時代に差し掛かっています。そこで本特集では、注目企業のCTOが考える「この先、エンジニアに求められるもの」を紹介。エンジニアが、未来を生き抜くヒントをお届けします!

人気モバイルゲーム『八月のシンデレラナイン』や、横浜駅直結の複合型体験エンターテインメントビル『アソビル』などITを活用した数々のサービスを手掛け、“心が動くワクワク体験”を届け続ける、株式会社アカツキ。

同社CTOの田中勇輔さんは、若手エンジニアがこれからキャリアを積み重ねる上で大切なことは「自分の心の声に従うこと」だと話す。

心の声に従う”とは、一体どういうことなのだろうか。田中さんに話を伺った。

株式会社アカツキ CTO 田中勇輔さん
株式会社アカツキ CTO 田中勇輔さん
1984年生まれ。学生の頃からプログラミングを始め、高校時代はBasicでつくった自作ゲームがクラスで大流行したことも。その後大手化学メーカーのグループSIerに就職し、インフラの運用やERPパッケージの導入などに勤しむ。2012年アカツキ入社。14年より現職

CTOなのに1人4役!
エンジニアが熱中できる環境をつくりたい

新卒の時は、大手メーカーの情報システムを手掛けるSIerに入社し、インフラの運用やERPパッケージの導入などを手掛けていたという田中さん。

当時は「毎日ばりばりコードを書く」という環境ではなく、関連部署では作業服を着たオペレーターが、24時間365日稼働し続ける大規模工場のサーバーランプを指差し確認する姿があったそうだ。業務時間にも余裕のあった田中さんは、趣味でさまざまなツールを開発していた。

「独学でRuby on Railsを勉強して、ジョブ管理ツールや、チェックを自動化するツールなどをつくって、勝手に入れていたんです(笑)。とにかくコードを書きたかったんですよね」

そんな田中さんがアカツキへの転職を決めたのは2012年のこと。「自分の書いたコードをより多くの人に届けたい」、「to C向けサービスを手掛けて世界を動かしたり、人が喜ぶことをしたい」という思いが募り、設立まだ2年ほどのアカツキの面接に臨んだ。その際、アカツキの掲げる「ワクワクして働く」というビジョンが入社の決め手となったという。

「面接の時に、代表の塩田が『僕らがワクワクしながらサービスをつくれたら、そのサービスを通じて世界をワクワクさせることができるよね』って、言い切ったんです。その純粋な気持ちについて行こうと思いました」

入社当初はエンジニアの数がまだ5名程度だったが、それから7年経ち、今や社員・業務委託合わせて150人のエンジニアを抱える大所帯となった。

2014年にCTOとなった田中さんは、テクノロジープラットフォーム『ATLAS』の開発リーダーや、セキュリティー部門を司りハッキング対策にも取り組むCISO、それに加えて、生産性向上のためにツールの導入・整備を行う情報システム部門のリーダーも兼ねている。CTOであるにもかかわらず、これだけの役割を兼務しているのはどうしてなのだろう。

「僕は経営会議とかカンファレンスとかは苦手だけど、技術や組織について考えることは好きだし、CTOだから裁量もある。ツール導入などの仕事は僕に向いているんですよね。当然、苦手なことよりも得意分野で勝負した方が成果も出やすい。そうやって得意なことを担っているうちに、今の形になりました。それに、僕は自分の仕事によって会社の成果が上がったり、社員が働きやすくなることがうれしいんです」

株式会社アカツキ CTO 田中勇輔さん

田中さんが特に注力しているのは、エンジニアたちが自分の仕事に熱中できる環境づくりだ。ゲームエンジニアなら誰しも、「どうしたらゲーム性が高くなるか」「もっと敵キャラを強くするにはどうするか」など、「ゲームの核となる要素」の開発に没頭したいはず。そんなエンジニアの気持ちを尊重するために田中さん自身がさまざまな役割を担い、社内ツールや開発まわりを整備している。

その象徴とも言えるのが、田中さんを中心に2017年から開発を始めた『ATLAS』というプラットフォーム。

「課金・決済、ID管理、秘匿情報管理といった、ゲーム開発者からしてみると“面倒くさい”と感じる機能を統合して、各チームがAPIを通じて使えるようにしたんです。メンテナンスも『ATLAS』の技術基盤チームが行っています」

その結果エンジニアたちも、自らがワクワクできる領域である“ゲームの面白さを追求する”という仕事に専念できるようになった。

高いパフォーマンスを発揮するためには
疲れずに、“継続”すること

田中さんは、社員が高いパフォーマンスを発揮するために会社ができることは「一時的に社員のテンションを上げてモチベートすること」ではなく、「ネガティブを排除すること」だと話す。

「高い成果を出す上で、モチベーションは非常に大切です。でも、楽しいことやテンションが上がるタイミングって人によって違うので、会社ができることはやりたい仕事に集中させてあげることや、コミュニケーションを取りやすくしてあげること、あとは悩みを聞いてあげることくらいしかなくて。弊社もビジョンとして『ワクワクして働く』を掲げていますが、結局は各々が自分のやり方でそれを実現するしかないんです」

では、モチベーションを高く保って高い成果を出すために、エンジニアはどのような考え方をすればいいのだろうか。

やっぱり向いている仕事や、やりたいと思える仕事をやるべき。向いていない仕事だと成果も出にくいし、精神的にも疲れてしまうので。もちろん、『最初は苦手意識のあった仕事でも、やってみたら自分に合っていた』ということもあるから、やらずに判断するのはリスクですが、ある程度やってみても『違う』と思う仕事は避けていいと思います。

あとは、疲れてしまったときは休むこと。自分で気付いているはずなのに、我慢して頑張ってしまう人が多いけど、ちゃんと心の声に耳を傾けてください

株式会社アカツキ CTO 田中勇輔さん

田中さんは、仕事で成果を出す上で大切なことは「疲れないこと」だと何度も繰り返していた。

「ハイパフォーマンスを発揮したいなら、とにかく『継続すること』が大切。疲れる仕事は途中で辞めたくなってしまうけど、自分の好きな仕事や向いている仕事だったら長続きするはずです。するとスキルも経験も積み上がっていくし、自然とすごいところに行けるんですよ」

アカツキでは仕事の向き・不向きのマッチングを最大限叶えるために、難題に直面して行き詰まっているチームを自由に助けに行く風土があるという。

「あるチームのエンジニアが、他のチームで問題が起こりそうだと気付いたら、自ら手を挙げて助けに行っていいんです。社内のリポジトリは全エンジニアが見られるようになっていますし、あらゆるプロジェクトの情報は社員全員にオープンにしているので、業務に支障の出ない範囲で自由にやってもらっています。苦手な仕事は得意な人に手伝ってもらえばいいし、その方がプロジェクトも円滑に回りますから良いことだらけですよね。そうやって、向き不向きを補い合えばいいんですよ

学ぶ力を鍛え、成し遂げる力を養って
“やりたいこと”で勝負しよう

もちろん高いパフォーマンスを発揮するためには、こういったスタンス以外にも、スキルアップの努力は必要だ。

「エンジニアが成長するためには、独学しかありません。独学をする上で必要なのは、『学ぶ力』と、『物事を成し遂げる力』を養うことです。

まず、学ぶ力を鍛えるためには、英語の公式ドキュメントに当たること。これはいろんなCTOが口をそろえて言っていますね。英語はGoogle翻訳を使えば、簡単に意味が分かりますから心配いりません。日本語翻訳されたサイトは意味が少し変わっていたり情報が古い場合があるので、一次情報を読んで、言語やツールのコンセプトやアーキテクチャを理解できるだけの読解力を身に付けることが必要です。

それから、成し遂げる力を養うためには、一つのプログラムを一人でスケジュール管理をして、作り切ること。少なくともアカツキでは全員がプロジェクト管理できないと厳しいです。仕事は誰かと誰かの約束で成り立っているもの。一人締め切りを守れない人がいたら、次の人が困りますからね」

また、他の人が書いたコードを読むことも大きな力になるという。田中さん本人も2017年頃まで、社内のすべてのコードを読んでいたそうだ。

株式会社アカツキ CTO 田中勇輔さん

「人のコードを読むと、コードの向こう側にその人の考え方や論理の構築の仕方が透けて見えるんです。それを読み解くことが、成長につながります。僕は将棋が好きなんですけど、将棋の棋譜を読んでいるみたいな感覚ですね。

それから、組織に属している人なら個人の成果だけではなく、チームの成果に目を向けることも大切です。個人の目標に突っ走ってしまうと、チームで求められていることに対してオーバースペックなコードを書いてしまったり、重要ではないことにやたらと時間を使ってしまったりと非合理的なことをしてしまいがちですから」

田中さんはそんな厳しいアドバイスをくれたが、「若手エンジニアへメッセージを」とお願いすると、ちょっと困った顔をしながら、こんな風に話してくれた。

「今の若いエンジニアの方って、皆さん優秀だし尊敬できるんですよ。だって、困ったことがあった時、僕のチームに来ているインターンの学生に意見を聞くとパーフェクトな回答をくれるんです(笑)。僕は新卒の時、彼らほどコードを書けませんでしたよ。だからこそ、もっと自信を持っていいし、自分のやりたいことに正直になって、心の中にある“ワクワク”を見つめてほしいなって思います」

取材・文/石川 香苗子 撮影/河西ことみ(編集部)

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