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エンジニアにとって最も大事なのに忘れられがちな事業貢献の意識ーー「思考の出発点を間違えるな」

働き方

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    Sansan株式会社 CTO
    藤倉成太さん(@sigemoto)

    株式会社オージス総研に入社し、ミドルウエア製品の導入コンサルティング業務に従事。赴任先の米国・シリコンバレーで現地ベンチャー企業との共同開発事業に携わる。帰国後は開発ツールやプロセスの技術開発に従事する傍ら、金沢工業大学大学院(現・KIT虎ノ門大学院)で経営やビジネスを学び、同大学院工学研究科知的創造システム専攻を修了。2009年にSansan株式会社へ入社し、クラウド名刺管理サービス「Sansan」の開発に携わった後、開発部長に就任。16年からはプロダクトマネジャーを兼務。18年、CTOに就任し、全社の技術戦略を指揮する

    皆さん、こんにちは。
    藤倉です。

    エンジニアのキャリアについて具体的にお話する前に、今回は私がこれまで仕事をする中で培ってきた根底にある考え方について、書いてみたいと思います。

    私が大切にしている考え。

    それは思考の出発点を間違えないこと。そして、エンジニアたるもの、事業貢献を第一に考えること。これらは私のエンジニア人生を実り多きものにしてきました。そして皆さんのエンジニア人生も同様に実り多きものにすることにもつながると考えています。

    一体それはどういうことなのか、詳しくお話ししていきます。

    「事業に貢献する」とはどういうことか

    事業に貢献するということは、つまり、事業の成功につながる成果を出すこと。そもそもこれはエンジニアであっても他の職種であっても、会社に所属する人には共通して言えることです。

    では、エンジニアとして、事業の成功につながる成果を出すためにはどうするべきか。

    それは、自身が所属する企業や部門が出してほしいと望む結果を出すことです。

    仕事においては時間や金銭、人的リソースなどの条件があり、それら制約を加味した上での結果を出さなければなりません。例えば、開発のプロジェクトであれば、プロジェクトの仲間と共に、期限までに期待される動作をするソフトウェアを完成させなければいけないのです。

    こう書いてしまうと、至極簡単で、当たり前のことのように聞こえますよね。

    それにも関わらず、エンジニアは時として、技術的選択や働く環境のことについてあれこれと悩むことがあります。決められた期限までに限られたメンバーでプロジェクトを完遂させなければならないのであれば、それを達成できる選択をすればいいだけなのに。そうシンプルにはいかないようです。

    枯れた技術を選ぶことが「最善」なときもある

    私もエンジニアですから、新しい技術を使うときや、難易度の高い課題に挑むときの方がワクワクします。しかし、どんなプロジェクトでも、最新の技術やアーキテクチャを選択すればいいわけではありません。

    もしあなたが携わっている事業やプロジェクトにおいて、特別な技術的要請がないのであれば、チームメンバーにとって学習コストが低いもの、効率的であるものを用いることが技術選択の最優先事項となります。そして、そのためには選択肢の中で最も枯れた技術を選ぶべきです。より挑戦的なアーキテクチャを選択する余地は、そこには一切ありません。

    その一方で、Webサービスの開発などにおいては、先進的な技術が選択されている事例がよく見られますよね。それはなぜでしょう?

    新しい技術というのは、過去の技術ではできないことをできるようにするために生まれます。そして、Webサービスの開発は、まさに、枯れた技術では実現できないことをやらなければならない事業なのです。

    膨大な数のユーザを支えるサービスを最速でつくるためには、クラウドプラットフォームのマネージドサービスを最大限に活用しなければなりません。コンテナ技術は、リリースサイクルを極限まで短くしたり、サービスの可用性を向上させるのに有効です。そして、アジャイルな開発手法を用いることで、市場を切り開くための試行錯誤にようやく追いつけます。

    もちろん上記のように、状況に応じて最適な技術選択をするためには、常に最新の技術を学んでおくことが前提です。しかし、最新の技術を活用することから考え始めてしまうと、その妥当性を説明することが難しくなります。そして、判断に迷いが生じ、最適な意思決定ができなくなってしまうのです。

    事業の目標を見極め、それを達成するために技術や方法を選択していくこと。それが、「エンジニアの事業貢献」につながっていきます。

    自分都合だけで働く環境を考えない方がいい

    エンジニア界隈では、働く環境が話題になることも多いですよね。ここで気を付けなければならないのは、単純にどんな環境で働くのが望ましいかということを、自分自身の都合だけで考えないことだと思います。

    フレックスタイム制のある職場は、勤務時間を柔軟に選択できるので、個人的には望ましいものです。また、リモートワークが許容されれば、通勤に伴う苦労を味わずに済みます。

    しかし、フレキシブルに働くことによって、始業時に相談したいと思っている同僚と話せないかもしれない。リモートワークでは、現場にある感情や熱量が伝わりにくく、判断の細部に狂いが生じることもある。そして、それらの影響によって開発に手戻りが発生し、プロジェクト全体に遅れが出てしまうこともあります。

    物事は表裏一体です。働く環境を論ずるにしても、やはりその事業を成功させるために有効なチームの在り方から考えることをお勧めします。技術的判断と同様、考え方の出発地点を間違わないようにすることが大切です。

    「事業に共感する」とはどんな状態か

    ここまでに、事業に対する貢献を軸にした考え方を紹介してきました。これほどにしつこく事業貢献と言われると、さすがに疲れますね。

    こんな考え方や姿勢を持って仕事に向き合うためには、そもそもその事業への共感が絶対的に必要だと思います。自分が心から納得できていないものに関して、ここまで前のめりになれる人は少ないはず。少なくとも、私には無理です。

    事業への共感とは、その企業のミッションや方針と、それに対する自分の気持ちを重ねていくことです。もしも、その仕事が「やりたいこと」だと思えるのであれば、その仕事はやらなくてはいけないものではなく、やりがいのあるものになります。そうなれば、もうこっちのもの。

    ただ、重ねると言っても、完全に一致させるものでもないかなと思います。事業そのものが自分のやりたいことと全く同じであるケースは稀だと思います。

    私は、日本のソフトウェアプロダクトが世界でも通用することを証明したいという個人的な思いを持っています(連載第一回参照)。そして、Sansanという会社は日本発のプロダクトをでイノベーションを起こしていくことをミッションとしています。私はその点に共感してSansanに入社し、今も自分自身の目標達成に通じる仕事を毎日楽しくやっています。

    会社、社会のイノベーションをリードする存在に

    採用する技術や働く環境はあくまでも「手段」です。手段は、目的達成のために変わることもありますが、「目的」はそう簡単に変わるものではありません。企業のミッションくらいになると、なおさらです。

    また、企業の「目的」に共感できると、それを実現するために何をするべきかという目線を持つことができ、「手段」も「環境」も自ら決めるという意識が生まれてきます。

    手段ではなく、「目的」に共感できる場所。そんな最高の仕事を見つけたならば、エンジニアリングにも没頭できるでしょう。そして、その成果が事業の成功へとつながり、あなた自身も評価され、それが次の挑戦へとつながっていきます。

    エンジニアはそうやってイ社内外でイノベーションを起こし、周囲をリードしていく存在。私はそうあるべきだと思っています。


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