機械学習エンジニア・ばんくしさんの事例に見る“後悔しない転職”の秘訣「大切なのは、今日、今から動き始めること」
機械学習エンジニア・ばんくしさん(@vaaaaanquish)の転職エントリを目にしたことがあるエンジニアは少なくないだろう。彼は2016年にSansanに新卒入社した後、2年間ヤフーに在籍し、その後医療情報専門サイト『m3.com』などを運営するエムスリーへと転職した。そんな彼は今、「この環境にすごく満足している」と話す。
しかし、転職活動で“自分にぴったり合う一社”を見つけるのは、意外と難しい。一般的に、「年収アップ」や「有名企業への入社」がキャリアアップと言われることも多いが、決してそれだけがエンジニアにとっての「幸せ」ではないだろう。さらに、自分に合う企業はライフステージに応じて変わるもの。だからこそ、転職活動の軸は、転職する度に違って当然だ。
では、どうすれば、その時々で自分にぴったり合う職場を見つけ、後悔のない転職ができるのだろうか?ばんくしさんの事例から見てみよう。
「技術に夢中になりたい!」アメリカ研修で現地の“ギーク”に刺激を受けた
細かくはブログにまとめているのですが、きっかけは妻の体調不良でした。Sansanのことはすごく好きで、特にエンジニアたちがみんな技術に熱中している人ばかりだったことや、機械学習に打ち込める環境を非常に気に入っていました。ただ、結婚当初は共働きでの生活を前提にしていたため、「妻を休ませてあげるためにも、とにかく僕が稼がなきゃ!」と。
Sansanは当時はまだ上場前のベンチャーで、個人的には“新卒の給与テーブルに乗っている”という感覚もあったので、最短で生活を変えるために「転職」という道を選びました。
収入アップはもちろんですが、その他にも大手企業で各種制度が整っていることと、自分自身が好きだと思えるサービスをつくれるかの2軸を重視していましたね。そして、人材紹介サービスやリファラルなどの方法で、転職先を探しました。転職後はもっと妻との時間を大切にしたかったですし、なんなら僕ががっつり体調管理をしてあげたかったので。大手企業であればフレキシブルに働ける制度や、家族を大切にする風土が整っているケースが多いため、そこは重視してました。
とはいえ「それさえ叶えばどんな仕事でもいい」というわけでもなく、機械学習の業務に引き続き携われることと、「自分が関わるサービスが成長したら世の中がより良くなる」というビジョンが見えること。そこについては譲れないと思って。結果、2カ月ほど転職活動をした中でも、フレックス制や家族を支えるために早退できる制度が整っていて、もともと好きなサービスだった『ヤフオク!』を運営しているヤフーに魅力を感じ、転職をすることにしました。
2018年11月に2週間ほどアメリカに研修に行く機会があったのですが、技術について楽しそうに語る現地のアツいエンジニアたちにあてられちゃったんですよね。結局、それが一番大きかったと思います。
Sansanの藤倉さんも、「シリコンバレーに行ったら、向こうのエンジニアは朝から晩まで自分たちのプロダクトについてアツく語ってた(過去記事参照)」って言ってましたけど、向こうの人って本当に毎日技術の話を楽しそうにしてるんですよ。あれを見てしまうと、技術好きなエンジニアはみんな“食らっちゃう”んじゃないかな。
僕は学生時代を高専、大学、大学院と過ごしたんですが、当時は授業中も放課後も大好きなコンピューターサイエンスに夢中で打ち込める生活が本当に楽しくて、一日中ワクワクしながら過ごしていました。アメリカのエンジニアたちを見て、その頃のことを思い出してしまって。「あの時の熱量で、好きなことに没頭する感覚で働けたら最高だな」と思ったんです。
ヤフーのように会社の規模が大きいと安定はするし、良いところもたくさんあるけど、毎日技術に没頭できているかという部分では個人的には物足りない感覚もあって。そこを満たせる会社を探して、エムスリーに行き着きました。
「転職します」とつぶやいたらDMでオファーが30件!
まず、Twitterでつぶやくことからです(笑)。それからnoteで課金エントリー(転職活動をしています|ばんくし|note)を書きました。すると、ありがたいことに「うちに来ませんか」というDMを30件くらいいただきまして。全ての企業を一社一社調べてどんな会社か見極めた上で返信するようにして、最終的に面接に行ったのは自分で探した会社も含めて10社くらいだったと思います。
今回の転職の一番の目的が、「ギークな環境で働きたい」ということで、エムスリーが最もそれを叶えられそうだと感じたからです。中には某大手や高額年収を提示してくれた外資企業からのオファーもあり、若干心が揺れたりはしたのですが(笑)。今この瞬間に最も大事にしたい目的からブレてしまうと、結局近い将来また同じことで悩むことになってしまうので、転職活動中もそこは意識していました。
中でもエムスリーを魅力に感じた点は、同じ機械学習エンジニアである西場正浩さんがカジュアルな面談をしてくれた際に、「面接中のどこが良くて、どこが良くなかったか」をフィードバックしてくれたことでした。僕のことを真剣に考えてくれていると感じたのはもちろん、それ以上に、“本当に良い人”を採用するための努力を怠っていないなとも感じました。
西場さんに限らず、他の面接官も僕のことを本気で理解しようと向き合ってくれていましたし、当時まだ4人程度だった機械学習エンジニアチームをこれから強化したいという、組織の熱量を感じたんですよね。それでだんだんと、「ここで働けたら楽しいだろうな」という思いが募っていきました。
最終面接の前にはすでに妻にも「あとは年収面で2人が納得できたらエムスリーに決める」と連絡をしていましたね。そして面接が終わった後は、自分がエムスリーで成長して活躍するイメージも具体的につかめ、気分が高まって一杯飲んで帰ったのを強く覚えています。実際に入社して働いてみると想像以上にみんなギークで毎日が楽しいですし、「ここで絶対に成長して、成果を出そう!」と心の底から思えています。
面接に挑む前に、「やりたいこと・やりたくないこと・できないこと」の3つをドキュメントで整理していました。特に「やりたくないこと」「できないこと」の欄には「早起きは嫌だ」というすごく個人的なことから「たくさんの人をまとめるのが苦手」「プロジェクトの予算を組むのが苦手」という業務上のことまで、とにかく何も考えずに全部書き出したんです。そうすることで、「自分がどんな環境だったら力を発揮することができるのか」を把握しました。
面接では「苦手なこと」を聞かれることも多いのですが、このときにごまかしてしまうと入社後に自分が辛くなってしまうので、書き出したことは包み隠さずに伝えました。その結果、企業が求めているミッションと自分のスキルや志向性にギャップがないかを見極めることができましたし、「この仕事を担うにはここが心配だから、こういうサポートをしてほしい」という条件のすり合わせもできました。
ただ、「包み隠さずに」と言ってももちろん、言い方として「こういう人と組んだらできます!」「こういうツールがあればできます」と代替案を出すことや、「できるようになりたいです!」という意欲を見せるなどの最低限の包みは持たせて伝えた方が良いとは思います(笑)
毎日の発信&蓄積が“スキルの証明”の近道
まずは、今日からGithubを更新し始めてみてはいかがでしょう? 僕が今回さまざまな企業から声を掛けていただいたのも、これまで「発信」を蓄積してきた結果だと思っています。
別にツールは何でもよくて、OSSでも論文でも外部登壇でもブログメディアでもいい。発信し続ければコンテンツが蓄積されて、いずれそれがスキルの証明になりますから。エムスリーではそういった活動も評価されますし、常に意識させられます。
重要なのは、今の自分の技術力に自信がなかったとしても、やったことはとにかく全部まとめること。技術的に難しいことをチャレンジすることもそうですが、同じくらい「アウトプットを続けること」も難しく、大切だというのが実感です。
転職活動って実は企業だけじゃなく、個人にとっても長期戦。「転職したい」と思い立ったときに「今日からGithubを更新しよう」なんて思っても間に合いません。企業の採用がブランディングを意識しているように、個人でも常に「明日会社がなくなってもいいように」くらいの気持ちで、その日、技術的に解決できたことを発信するといいと思います。
あとは、もし気になる会社があるならまずは話を聞きに行くべきですね。どれだけ働き方が柔軟であるかとか、ギークさを大事にしているかとかって、外部からは分かりにくいので。僕もたくさん企業を調べたりしましたけど、やっぱり面接で話を聞くのが手っ取り早いし間違いないですよ(笑)
たとえそれで面接に落ちたとしても、天下のGoogleでさえ1年経てば再チャンスをくれるので。その間に実力を付けてリトライすればいいだけの話です。理想の転職を成功させるために大事なのは「今日、今から動き始めること」だと思います。
取材・文/石川香苗子 撮影/桑原美樹
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