キャリア Vol.991

労働環境の変化にエンジニアはどう向き合うべきか?「優しい働き方ではなく、正しい働き方を選択せよ」【連載:藤倉成太】

“世界を変える”CTO・藤倉成太の 「エンジニア力」向上プロジェクト!

新しい言語やシステム、技術などが次々と生まれる現代において、エンジニアのキャリア形成も多様化し、誰しもが自身のこれからについて悩みを抱えているのではないでしょうか。この連載では、法人向けクラウド名刺管理サービス『Sansan』や名刺アプリ『Eight』を開発・運営するSansanのCTO・藤倉成太氏が、自身の経験から得た、仕事・キャリアをアップデートするための秘訣をお伝えしていきます。

プロフィール画像
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Sansan株式会社 CTO 藤倉成太さん(@sigemoto)株式会社オージス総研に入社し、ミドルウエア製品の導入コンサルティング業務に従事。赴任先の米国・シリコンバレーで現地ベンチャー企業との共同開発事業に携わる。帰国後は開発ツールやプロセスの技術開発に従事する傍ら、金沢工業大学大学院(現・KIT虎ノ門大学院)で経営やビジネスを学び、同大学院工学研究科知的創造システム専攻を修了。2009年にSansan株式会社へ入社し、クラウド名刺管理サービス「Sansan」の開発に携わった後、開発部長に就任。16年からはプロダクトマネジャーを兼務。18年、CTOに就任し、全社の技術戦略を指揮する


皆さん、こんにちは。
藤倉です。

ここ数年で副業を解禁する会社が増えました。リモートワークや在宅勤務という言葉もよく聞きます。国の重要施策である働き方改革をはじめ、随所で生産性の向上について議論されています。外国籍のエンジニアを迎え入れることも多くなり、改めて“働き方”について考えることが増えました。

そこで、今回はここ10年間のエンジニアを取り巻く環境の変化を振り返りながら、これからエンジニアたちがその変化とどのように向き合っていくべきなのかを、まとめていきたいと思います。

エンジニアを取り巻く労働環境の変化

今から10年前の2009年は、私がちょうどSansanに入社した年でした。この頃は、Web系のスタートアップ企業はやや特殊な存在で、転職先として検討することが稀なことだったと思います。そんな時期に私がSansanに入社しようと考えた理由は連載第一回でも触れています。

この時期、世間一般的にも社内のコミュニケーションツールはメールが中心でした。ソースコード管理も社内にサーバを立てて、コードレビューをしようと思ったら二人が同じ画面を見ながらぺアプロのようにして行うしかありません。プロジェクトのタスク管理も会社のホワイトボードに付箋を貼るのみ。音声通話のアプリケーションはいくつかありましたが、品質も今ほど高くはなく、日常的に利用するのは困難でした。

ただ、社内に5、6人しかいなかったエンジニア同士の会話はすべてチャットで行っていましたね。この辺りは今と大きくは変わっていないのかもしれません。

そんな10年前からは想像できなかったほど、今は環境が整いました。業務のコミュニケーションにメールを使うことが激減し、あらゆるツールがインターネット上で利用できます。音声通話の品質も上々で選択肢も豊富。開発環境も全てがクラウド上にあるので、開発において「場所」の制約がなくなりました。本当に便利な時代になりましたね。

技術進化によって生産効率もアップ

さらには、技術の進化も進んでいます。インフラの構築に掛かる作業コストは激減し、サービス開発に利用できるコンポーネントやサービス、フレームワークもとても便利。10年前とは比較にならないほど、エンジニアが行う開発業務の生産効率が高まっています。もしかすると、10年前の半分以下の労力で開発できてしまうようなケースもあるのではないでしょうか。

もちろん、こういった変化に付いて行くのも大変なことですが、それが楽しくもありますよね。

「システム」は事業の付加価値を高めるための武器に

これらの結果として、ソフトウェアシステムによってもたらされる価値が変わってきています。かつて、システムというのは業務の効率化や自動化のために開発されていました。つまり、「事業コストの低減」が主な目的だったのです。しかし今では、「システムがなければ実現できないものを可能にすること」が求められます。

要は、システムが“事業の付加価値を高めるためのもの”になったということ。エンジニアが生み出す価値が根本的に変わってきているのです。われわれエンジニアに求められるものは、「要件通りに動くシステム」から、「事業価値の創出」へと変化しました。

これはかなり衝撃的なことだと思います。同じようにソフトウェアエンジニアリングをしているつもりでも、実は期待されているものが根底から変わってしまっているのですから。私たちはまず、この変化を意識しなければなりません。

エンジニアの生産性は、「生み出す価値の大きさ」で決まる

このように、この10年だけを見ても多くのことが変わりました。では、われわれエンジニアはどう対応していくべきなのでしょうか?

私は、「エンジニアはこれまで以上に“事業価値を高めること”への意識を強め、技術進化によって効率化された分の時間をそのための活動に使うべきだ」と考えています。そもそも、私たちは自身が携わるシステムの事業的価値を正しく理解する必要があります。どんな機能があればユーザが喜ぶのかという観点に留まらず、「どうすれば事業的価値を生み出せるのか」を考えねばなりません。

例えば、私が属するWebサービスの世界には、一人のユーザー、ないしはユーザー企業が事業にもたらす経済性を測る『ユニットエコノミクス』という考え方があります。ここでは、「ユーザー一人あたりを獲得するのにどのくらいのお金を使い、そのユーザーがサービスの利用を止めるまでにどのくらい収益に貢献してくれるか」を重要視しています。それを割り算すれば、「ユーザ獲得単価を何ヶ月で回収できるのか」を知ることができるというわけです。

このようにサービスの経済性を理解していれば、次のプロジェクトで開発するものが、「どのように事業に貢献するのか」が見えてきます。そして、開発するべき機能や施策に期待されるリリース時期を知り、そこから逆算したスケジューリングを踏まえた技術選定ができます。こうすることで、初めて事業的に正しい技術選定ができるようになるのです。

意思と意図を持って働き方を選ぼう

エンジニアの生産性が“事業の成果”で測られるものであるならば、われわれは「事業の成果を最大化するための働き方」を選択しなければなりません。柔軟な働き方をすることで、軽減される負担や苦労は多いでしょう。ただ、それによって得られるものが何であるかが重要です。もはや作業効率が上がるというだけでは不十分。事業価値を高めることができる働き方を選びましょう。

もし、自分たちのチームが、リモートワークを促進することで事業上期待される成果を出せるならば、それは正しい選択と言えます。逆に、そのことで課題が出るならば、まずは全員が同じ場所に集まり、成果を出せるようにするべきです。「リモートワークをしない」ということも意義ある選択の一つなのです。

選択肢の多い時代であるからこそ、選ぶことの重要性も、その難しさも増していると感じます。逆に言えば、正しい選択ができれば、我々エンジニアが生み出す価値ももっと大きくできるということ。ただ単に優しい働き方を選ぶのではなく、より多くの挑戦をしていきたいものです。それがエンジニアの進化だと、私は思います。

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