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「この会社、何か違う…」スタートアップ転職で後悔しないためにエンジニアが注意すべきポイントは? SmartHR宮田昇始さんに聞く

働き方

    今、日本発の画期的なWebサービスの多くが、スタートアップ企業から生まれている。そんな中、大手企業からスタートアップ企業へと転職するエンジニアの姿も目立つようになってきた。

    目新しいサービスの開発に携わることができたり、少数精鋭のチームでフレキシブルに働けたり……スタートアップ転職は仕事のやりがいを重視したい人から支持されているが、中には転職後に長続きしない人も。

    Startup Aquarium

    『Startup Aquarium』当日の様子

    2020年2月8日(土)虎ノ門ヒルズにて開催されたイベント『Startup Aquarium』(Coral Capital主催)の講演に登壇したSmartHR代表取締役CEOの宮田昇始さんは、「エンジニアは自分に合った開発方針を採用しているスタートアップ企業に転職すべきだ」と話す。

    >>『Startup Aquarium』のイベントレポートはこちら(20’s type)

    その理由はなぜか。また、エンジニアが「後悔しないスタートアップ転職」を実現するカギは何か。講演後の宮田さんに、単独インタビューを行った。

    Startup Aquarium/株式会社SmartHR 代表取締役CEO 宮田昇始

    株式会社SmartHR
    代表取締役CEO 宮田昇始さん

    2013年に株式会社KUFU(現:株式会社SmartHR)を創業。会社の中で、経営者として社会保険手続きの煩雑さに課題を感じ、クラウド人事労務ソフト『SmartHR』を発案。現在では全国約2万社が登録している

    開発方針の違いで、エンジニアのパフォーマンスは激変する

    ーー宮田さんはなぜ、「エンジニアは自分に合った開発方針を採用しているスタートアップ企業に転職すべきだ」と考えているのでしょうか?

    企業が開発で何を重視しているかによって、エンジニア個人に求められるものが変わるからです。

    例えばプロダクト開発において、「SMB向けに、スピード重視で開発するのか」あるいは「エンタープライズ向けに、品質重視で開発するのか」は、事業のフェーズによって変化していきます。

    スピード重視であれば、将来の技術的負債を考慮しつつも、ある程度割り切って、とにかく早く出して改善していくスキルやマインドが必要になりますし、品質重視であれば、きっちりとした設計や、しっかりとしたドキュメンテーション、チームで働く技術が求められます。

    開発方針が合わず、自分の能力をうまく発揮できていないエンジニアを何人も見てきたので、「自分に合った開発方針を選ぶ大切さ」を痛感しています。

    ーーでは、どうすれば自分に合った開発方針を採用している会社と出会えるのでしょうか?

    例えば、当社では中途入社を希望する人向けに、体験入社の機会を用意しています。

    開発方針が自分に合う、合わないっていうのは、実際にしばらく働いてみないと分からないことも多い。

    ですから、少し遠回りのように見えても、いきなり転職せずに、お試しで働いてみてから入社を決めるのは一つの手だと思います。

    最近は、副業社員を雇うスタートアップ企業も増えているし、プロジェクトベースで業務委託として働いてみてもいいかもしれません。

    Startup Aquarium/株式会社SmartHR 代表取締役CEO 宮田昇始

    中途採用でミスマッチが起きるのは、転職者にとっても企業にとっても痛手なので、体験入社のように「お試しで働ける機会」がもっと増えていくといいなと思いますね。

    ーーミスマッチのお話がありましたが、スタートアップへの転職で失敗しないために、特に気を付けた方がいいことは?

    最近、スタートアップに転職するエンジニアの方は増えていると思いますが、中には「転職すること」や「スタートアップに入社すること」がゴールになってしまっている人もいると感じていて。個人的には、それはあまりよくないなと思いますね。

    結局、入社したその先に「何をやりたいのか」がないと、自己成長も叶えられなければ、スタートアップで働く楽しさや、やりがいも得られません。

    ーー宮田さんは、自社のエンジニア採用においても、候補者の方の「やりたいこと」は重要視しているんですか?

    そうですね。エンジニアに限った話ではないのですが、やりたいことや、転職して何を叶えたいのかということを確認します。

    そして、それらを面接で聞き、転職者の方が求めているものと会社が提供できるものが「違う」と判断した場合は、「うちではそれは叶えられないと思う」とはっきり申し上げることもあります。

    それでも時々「いや、どうしても入社したいです」って仰る方がいるんです。

    これは多分、先ほどお伝えしたような「入社することがゴールになっている」パターンですね。

    でも、そのまま入社してしまった場合、絶対に後悔すると思うんですよ。

    「何か違うな」っていう気持ちが、入社後にじわじわと大きくなってくるはずです。

    企業のカルチャーと自分の志向性はマッチしているか

    ーーでは、スタートアップで働くのに向いているエンジニアって、どんな人なんでしょう?

    スタートアップといっても事業内容や社風は千差万別なので、一言にくくるのは難しいですね。

    ただ、あえて共通点を挙げるとすれば、次の3つの志向がある人でしょうか。

    (1)技術力を高めたい
    (2)良いプロダクトをつくりたい
    (3)良いチームで働きたい

    この三つの中でも、どれを必要としているかは会社によって違っていて、当社の事例でお話すると(2)と(3)の二つの志向が強い人が向いていると思います。

    なぜなら、SmartHRの事業は、時代遅れでアナログな領域をコモディティ化した技術で、当たり前に便利なレベルまで引き上げるタイプの事業です。その為、技術的に大きなチャレンジは他のスタートアップよりも相対的に少ないと思います。

    いかにスピーディーにユーザーに価値を提供するか、いかに良いチームで生産性を高めていくか……

    こういったことにチャレンジできる会社なので、(1)のタイプの人が求めることには応えることが難しい。そこは入社前にしっかり伝えるようにしています。

    Startup Aquarium/株式会社SmartHR 代表取締役CEO 宮田昇始

    また、スタートアップは大手に比べて企業の成長ペースが格段に早いと思います。

    そのため、同じ会社にいたとしても、事業が急成長して求められる役割が変わったり、M&Aによって人がごっそり入れ替わったりなど、環境が大きく変わることはよくあります。

    それらを理解した上であらゆる変化を楽しめる人は、スタートアップ向きなのではないでしょうか。

    ーーなるほど。技術やプロダクトについては、会社のサービスやテックブログなどで確認しやすいと思いますが、チームに関しては、面接の場で話を聞いただけでは重要なことが分からないこともよくあります。そんなときは、どうすれば?

    SNSは良い情報収集ツールだと思います。

    例えば、自分が入社したい会社で働いているエンジニアのTwitterアカウントを見つけて、ツイート内容を見てみたり。

    開発チームの雰囲気が伝わってくることもありますしね。

    あとは、勉強会などで使った資料をWeb上で公開している人も最近は多いですよね。

    そういうものからも、チームのカルチャーや開発方針が伝わってくるはず。

    過去の資料とここ最近の資料を見比べてみて、どういう風にチームが変わってきているのかを知るのも面白いと思います。

    また、最初にお話したことと重なりますが、実際に入ってみないと分からないことも多いので、体験入社や副業などで実際にチームに入って働いてみるというのもありですね。

    これが一番、間違いのない確認方法だと思います。

    まずは一歩を踏み出すこと。ジョブホッパーも悪くはない

    ーー最後に、これからスタートアップ企業への転職を検討しているエンジニアにメッセージをお願いします。

    どんどんチャレンジしてほしいと思っています。一歩を踏み出すことはタダですしね。

    一方で、その「一歩を踏み出すのが不安です」というエンジニアの方から相談を受けることはよくあります。

    例えば、スタートアップに転職したものの転職先の会社が合わず、数ヶ月で再転職をしようにも、「ジョブホッパーになってしまうのではないか」と気にしてしまう人もいるようなんですね。

    でも、私としてはそこにしっかりした軸さえあれば、経験社数が増えることは気にしなくていいと考えています。

    日本社会も、転職には寛容になってきていますしね。

    Startup Aquarium/株式会社SmartHR 代表取締役CEO 宮田昇始

    ちなみに、私も会社を立ち上げるまでは、ジョブホッパーでした(笑)

    起業をして、ようやく自分の居場所を固めました。

    エンジニアと一括りにしても一人一人異なる経験や価値観を持っているように、スタートアップ企業も一社一社、違う特徴を持っているものです。

    なので、自分が転職で叶えたいことや、転職後にやりたいことをじっくり考えた上で、そこにマッチする企業を選んでほしいと思います。

    取材・文・撮影/川松敬規(編集部)

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