今回エンジニアtype編集部では、20代~30代のSEを対象に年収の実態を調査。不況が深刻化するとも言われるwithコロナ時代、SEが希望年収を叶えるためのポイントを全4記事にわたって解説する
【調査&検証】30代SEの年収が二極化。 転職で「年収600万円以上」を叶えるためには?
エンジニアtypeでは、転職サイト『type』に登録する30代前半(30歳~34歳)のSE職を対象に、現在年収を調査(※)。すると、次のような割合となった。
30代前半のSE職 現在年収
300万円未満:38.5%
300~399万円:2.5%
400~499万円:2.5%
500~599万円:20.0%
600万円以上:34.5%
※弊社の個人情報保護方針に則り、個人を特定できない範囲でデータを抽出しております
上記を見ると、年収300万円未満の割合が最も高く38.5%。年収600万円以上の割合も34.5%とほぼ同率となっている。
『type転職エージェント』でIT業界・エンジニア転職の支援を専門としているキャリアアドバイザーの青田有貴さんは、「年収格差は、20代と比較しても30代でより大きくなる傾向がある」と話す。
では、30代前半のSE職が年収600万円以上のポジションで働けるようになるには、20代のうちにどんなことを経験し、どんなスキルを磨くとよいのだろうか。青田さんに聞いた。
type転職エージェント キャリアアドバイザー
青田有貴さん
IT・OA業界での法人営業職を経験。その後、キャリアデザインセンターへ入社。IT派遣部門のキャリアコーディネータなどを経て、type転職エージェントのキャリアアドバイザーに。専門領域はIT・Web業界
SEの年収を左右する要素とは?
年収600万円以上のSEの方は、マネジメント寄りの業務を任されている可能性が高いですね。
一次請けの会社で働いていたり、顧客への提案の経験もあるなど、上流工程の経験をお持ちの方が多いと思います。
一方、年収200万円台のSEの方ですと、作業者レベルのお仕事が中心になっているのではないかと思います。
商流上、元請企業との間に複数の会社が入っているために、技術面やプロジェクト推進において裁量がない状態になっている方が多い印象です。
また、プロジェクトの中で関わっているフェーズや自身の役割、立場などによっても年収の差は開きます。
要件定義や設計といった、顧客折衝や提案が必要なフェーズに全く携わっていない場合や、いわゆる“指示待ち”でのお仕事がメインの場合は、新卒からずっと年収200万円台のまま変わらないというケースもあります。
はい。また、小規模の会社で働いている方だと、上のポジションが空いていないために、昇進・昇給が止まってしまうこともあります。
例えば、20人ぐらいの規模の会社の場合、マネジャーを何人も置くわけにはいきませんよね。
そうなると今の環境で「年相応の経験(マネジメントスキルなど)」が積みづらくなり、市場価値の向上がどんどん難しくなってしまいます。
こうした「年収が上がらない構造」の会社で働いている方は、希望年収に求められる役割を与えられ、「年相応の経験」をきちんと積める環境があり、昇進・昇格の機会が得やすい会社へ転職するのが妥当な戦略になると思います。
転職で年収600万円以上を目指すには?
年収600万円以上が叶いやすいのはクライアントと直接関われる企業で、一次請けSIerやコンサルティングファームなどが該当します。
こうした企業は、商流に他の企業が入ることがないので、得た利益を人件費に分配できる部分が多くなりやすく、高額年収を実現しやすい傾向にあります。
また、今20代後半で年収400~450万円くらいの方に向けてお話するならば、今の会社で後輩育成に携わるなど何かしらリーダーシップを発揮して働いた経験があると思いますので、そうした経験を転職の際にアピールしてほしいと思います。
スペシャリストタイプの人は、自分の経験の中から得意な専門領域をきちんと説明できる状態にしておき、それが生かせる環境かどうかを見極めて会社選びを行うことが大事ですね。
必ずしもそうとは限りません。スペシャリスト志望であっても最低限のコミュニケーションスキルは求められるので、リーダー経験(ヒト・モノの管理経験)はそれを示す良い材料になります。
例えばどんなに知識があっても、クライアントのニーズや予算に全然合わない技術や、自分が使いたいだけの技術を選定してしまうのは良くないですよね。
チームのキャパシティーを把握した上で最適な進め方を決定したり、新しい技術をメンバーに教えたりする必要があります。
自分のためだけでなくクライアントのニーズを捉えつつ、チームや組織のためにも動けることをアピールした方が、スペシャリストタイプの方も、転職で年収を上げやすくなるはずです。
入社後に年収UPする会社は「評価制度」で見極める
その通りです。その後、しっかり昇給していけそうな会社なのであれば、転職先へ入社するタイミングで希望通りの年収が出なくてもいいかもしれません。
自分が評価されやすい評価制度があるかどうかを入社前に確認しておくのが、最大のポイントです。
例えば、自分はインフラエンジニアなのに、会社にはアプリケーションエンジニア向けの評価指標しかなかったり、スペシャリストタイプなのに、マネジメント向けのキャリアプランしか設定されていない会社だと、自分の強みが評価指標に当てはまりにくくなってしまいます。
そうした、自分のタイプに合わない評価制度を持つ会社に入ってしまうと、どんなにスキルや経験を得ても、会社が求める人物像との乖離があるので評価を得にくく、ずっと年収が上がらない……ということが起きかねません。
はい。評価制度に関する質問はうまく聞けば、「やる気がある」「成長意欲が高い」と受け止められるので、大丈夫ですよ。
ただ、聞く相手を間違えないようにした方がいいですね。役員レベルの方よりも、人事の方や現場のマネジャークラスの方との面接で聞くのがいいでしょう。
もしも選考中に詳しく聞くことを躊躇してしまうようであれば、内定後にしっかり確認するようにしてください。
内定通知書が手元に来れば、その結果が覆ることはありません。疑問点や入社後のミスマッチが発生しないよう、そのタイミングで採用担当に質問しておくのが、一番安全な方法です。
内定通知書には「等級」が書いてあることがあります。例えば、「等級が1個上がると役割ってどう変わるんですか?」と聞いた流れで、「ちなみに将来の生活設計のために可能であれば伺いたいのですが、年収はどのくらい変化するものなんでしょうか?」と聞いてみるのはいかがでしょうか?
そのときに、できれば「手当」についても確認してみてください。扶養手当や資格手当などの有無も、年収に直結する大事なポイントです。
コロナ禍の転職でも年収UPのチャンスはある?
会社の業績不振によって賞与の額に影響が出たり、労働時間削減によって残業代が減るなどの変動はあるかもしれません。
そのため、年収における賞与比率の高い方にとっては、金額面の影響は大きいと思います。
支給する給与額を大きく変える場合は、会社の制度にもよりますが、基本的には給与制度から変える必要があるので、劇的に上下するということはないと思います。
ただ、採用のハードルは各社で若干上がっている印象があります。
現場の選考は通過して、以前なら内定になっていたようなスキルの方が、最終面接で経営層のOKが出ずにお見送りになった、というケースも一部出てきています。
「希望年収を出す上で求めたいスキルがあるか」や「採用した場合、組織にどういう影響を与えてくれるか」など、「即戦力性」が見えなかった点が理由として考えられます。
それでも、強みがハマれば今も選考を通過している方はいます。
「コロナ禍だから年収UPは当分見込めない」と諦めるのではなく、地道にスキルを磨いて経験を積み、実績をきちんとアピールできるようにしていけば、今後も転職で年収を上げるチャンスは十分にあると思います。
取材・文/一本麻衣
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