NEOジェネレーションなスタートアップで働く技術者たちの、「挑戦」と「成長」ヒストリーを紹介します!
ブロックチェーン技術のLayerX、エンジニアたちが“総合格闘家”を自負する理由は? 「真のDXを成し遂げたい」【CTO・執行役員インタビュー】
今回訪れたNEXTユニコーン企業は、ブロックチェーン技術による経済活動のデジタル化を目指すLayerX。
LayerXは、Gunosyを創業した福島良典さんが、2019年7月にMBOを実施したブロックチェーンスタートアップだ。
コロナ禍、多くのスタートアップが資金調達に苦しむ中、同社は2020年5月に30億円の大型資金調達に成功。人事メンバーとして元メルカリの石黒卓弥さんを迎え、エンジニア採用に積極的に取り組むなど、組織力の強化に力を注いでいる。
取材の中で同社執行役員の中村龍矢さんは、「LayerXでエンジニアとして働くことは、総合格闘技をしているようなもの」と称した。その言葉には、一体どんな意味が込められているのだろうか。
LayerXの成長を支えるエンジニアの素顔を探るべく、CTOの榎本悠介さんと執行役員の中村龍矢さんに話を聞いた。
株式会社LayerX CTO
榎本悠介さん
東京大学工学部卒業後、株式会社ディー・エヌ・エーに入社。2015年に株式会社Gunosyへ入社し、17年より後のLayerXとなるGunosy ブロックチェーン研究開発チームをオーナーとして立ち上げ。18年LayerX創業時にCTOに就任
執行役員
中村龍矢さん
東京大学在学中よりGunosyのデータ分析部にアルバイトとして参加。データ分析および機械学習を用いたコンテンツ配信を担当する。Gunosyブロックチェーン研究開発チームを経て、18年8月、LayerX創業と同時に入社し、ブロックチェーンのセキュリティに関する研究に従事。20年4月に執行役員就任
LayerXが、ブロックチェーン技術に「今」着目する理由
榎本さん(以下、敬称略):新卒でディー・エヌ・エーに入社してニュースアプリの開発などを経験し、次に何をやろうかと迷っていた時に、学生時代からの友人の福島(Gunosy創業者・現LayerX代表)に誘われて、Gunosyに転職しました。
そこでブロックチェーンの研究開発チーム設立や新サービスの立ち上げなどに携わらせてもらっていたのですが、それがLayerX創業につながっていったという流れです。
中村さん(以下、敬称略):私は学生時代に、東京大学の工学部で機械学習を学んでいたのですが、在学中にGunosyのデータ分析部でアルバイトを始めました。
当時は自分で起業することも考えていたのですが、機械学習で起業しても、少しタイミングが遅いかなと感じていて。
ちょうどその時に、Gunosy内でブロックチェーンの研究開発チームが立ち上がったと聞き、Gunosyから独立したLayerXに入社することにしました。
中村:R&Dとブロックチェーン技術部門の執行役員として、ブロックチェーンの新たな技術や用途を開拓しています。最近リリースしたものは、『Anonify(アノニファイ)』というプライバシーモジュールです。
これは、ブロックチェーンで懸念されているプライバシーの保護や、情報漏洩リスクの解決に取り組むプロジェクトになります。
>>ブロックチェーンにおける次世代のプライバシー保護技術「Anonify」の ホワイトペーパー及びソースコードをLayerX R&D部門が公開
榎本:私は、「すべての経済活動を、デジタル化する。」というミッションの実現に向けて、長期戦略を策定・実行しながら、短期での売上形成にも注力しています。
また、各プロジェクトにおけるエンジニアの適材適所のアサインや他社との協業、コンサルティングなども、私の役割の一つです。
榎本:まずは、非効率な業務を減らして、人が気持ち良く働ける社会をつくっていきたいですね。toB向け業務の99%はデジタル化の余地があるので、そこにメスを入れていきたい。
例えば、業界・業態に関わらず、企業間の取引では未だに紙や印鑑といったアナログなやり取りが多く、非効率な業務フローが残ったままですよね。
そこで、近年では多くの企業で業務効率化を掲げてデジタル化に多額の資金が投じられていますが、「新しいシステムを導入する」というだけでは失敗に終わると考えています。
なぜなら、それを使うユーザーのことを十分に考えずに、ただ単純に“デジタル化”することが目的になってしまっているケースが多いからです。
真のDXを進めたいのであれば、そもそも書類の取り交わしのフローに問題はないのか、社内の処理でどこがボトルネックになっているのかなど、ユーザーにとって何が一番の課題なのかを先に検討すべきです。
中村:デジタル化には段階があるので、最初の段階では契約書や請求書といった、企業間で取り交わされる書類の電子化が進むでしょう。しかし、将来的には、異なるプラットフォーム間の連携がポイントになります。
例えば、「ふるさと納税」を事例にお話しすると、返礼品の購入はふるさと納税のWebサイト上でできても、確定申告では『e-Tax』という別のWebシステムを使って寄付先と寄付額を個別に手入力しなければいけません。
異なるシステム間でデータやロジックが自動的に連携されなければ、このような課題は増え続けることになり、デジタル化のポテンシャルが発揮されません。
こうした問題を解消するためには、アドホックに個々のシステムを接続していくのではなく、ブロックチェーンによって「システムを載せるためのシステム」というインフラをつくってしまうことが本質的と考えます。私たちはその実現に向け、開発・研究を続けています。
中村:似たような技術は他にもありますが、何よりも“キャパシティーの大きさ”に着目しました。
前述の「システムを載せるためのシステム」という観点において、ブロックチェーンはさまざまなユースケースに対応できます。
例えば、従来型システムでは特定の処理しか実行できませんが、キャパシティーが大きいブロックチェーンなら、スマートコントラクトという形で多種多様なプログラムを個別にデプロイできることが強みです。
このようなインフラが実現されれば、システム間の連携を行いやすい世界になると思います。とはいえ、技術的な問題だけではなく、法律やビジネスモデルなどさまざまな要素を複合的に考慮して設計する必要があります。
榎本:また、ブロックチェーンの良さは「自分の手元にあるデータが相手の手元にもある」と保証できることです。
例えば、請求書を相手に送っても、それが担当者から経理部に渡って適切に処理されているかどうかを知る方法がありませんよね。
しかも、請求書のフォーマットは企業ごとに異なるので、取引先が増えれば負担も増えます。そこで、書類のフォーマットを統一して手続き状況が可視化できれば、業務コストは大幅に下がります。
これを業界問わずさまざまな業務で実現できるのが、ブロックチェーンを活用するメリットだと考えています。
もっとも私は「必ずしもブロックチェーンでなければダメ」というわけではなく、「便利なツールを適材適所で使おう」というタイプ。向き合っている課題によっては、ブロックチェーンの性質が生き、とても便利に使えることもあるという認識です。
「真のDX」を成し遂げたい
榎本:2019年に、STO(セキュリティ・トークン・オファリング)という技術が世間で注目を集めていて、当社でも研究開発を行っていました。その成果に対して、MUFGさまが着目してくださり、共同でPoC(Proof of Concept:概念実証)などを行わせていただくようになりました。
中村:当社がパートナーに選ばれた理由としては、ただ受身でプロジェクトを進めるのではなく「本質的な課題解決に挑めるチームである」と認めていただけたことが大きかったのかなと思います。
中村:R&Dで培った知見を、もっと経営や事業開発に向けて提供していきたいですね。先ほど例に挙がった行政や金融の世界に限らず、幅広い業界、企業にインパクトを与えたいです。
榎本:個人的には、国内の大企業に対してソフトウエア文化をもっと輸出していきたいです。
日本の大企業で本質的なDXが進まない理由は、組織構造やこれまでの慣習が「壁」になってしまっていることが多いからだと感じています。
この「壁」をソフトウエア文化の輸出によって壊すことができれば、日本経済に与える影響は非常に大きいはず。まずは、一社でも多くの成功例をつくっていきたいですね。
LayerXのエンジニアの仕事は、まさに総合格闘技
中村:まるで「総合格闘技」をやっているような感覚は、みんな共通して持っていますね。
中村:当社はブロックチェーン技術の会社というイメージが強いと思いますが、実際はそれだけではなく、まるで総合格闘技のようにいろいろな技(知識・スキル)を掛け合わせながらクライアントの課題解決に取り組んでいます。
社内でも「総合格闘技」という言葉は頻繁に飛び交っていますね(笑)
中村:当社の行動指針の一つに「Be Animal」というものがあります。これには「不確実な状況下で積極的に動いて、情報を集めて大胆に物事を進めよう」という意味が込められています。
つまり、会社から強制的に業務を任せるのではなく、極端に言えば「何をするか」を今日決めてもいいんです。
このような環境から、エンジニア一人一人が複数の事業を並行して取り組んでおり、必然的にさまざまな技術や知識を習得している必要性があります。
そういう意味で、経験が浅いエンジニアでも、何か専門性を極めれば、ベテランエンジニアを凌駕できる可能性が十分にある。
自分にしかない武器を身に付けて、価値を発揮していける環境だと思います。
榎本:知的好奇心がくすぐられる、非常に刺激的な環境ですね。
先ほどもお話しした通り、あらゆるジャンルの課題解決に挑んでいくためには、エンジニア一人一人が幅広い分野に精通していなければいけませんから、開発組織の中で学び合う動きも活発です。社内のSlackでのやり取りを見ているだけでも面白いですよ。
榎本:そう思います。あとは、技術領域以外の知識も広がっていきますね。私も最近は、不動産、人事、経理関連の書籍を読んでいましたし。
榎本:自分が取り組んでいるプロジェクトの内容によって、常に必要な知識が変わるので、「今まで経験したことがあるかどうか」なんて全く関係ないんです。
多ジャンルのインプットをすることが、当社のエンジニアには、当たり前の習慣になっています。
中村:エンジニアとして技術的なバックグラウンドはもちろん大切にしていますが、事業開発をしているという視点も常に強く意識していますね。
自分のポジションに関係なく、「既存のシステムが使いにくい」という傲慢さと、「自分ならこうつくる」というハッカー気質を、私は大事にしています。
そして、課題解決のためであれば、分野関係なく勉強して、自分のスキルや知識として取り込もうという姿勢は今後も大切にしていきたいですね。
榎本:LayerXの取り組みは「アナログをデジタルにする」という“超王道”。しかし、王道だからこそ実現するのが難しく、未だに誰も成し遂げていません。
純粋にそれを実現したいという思いで、さまざまな課題と日々向き合っています。
全社員が共通して「自分がやってやる」という気持ちを持っているのが、LayerXの強さ。課題解決の当事者として仕事をしていくスタンスは、これからも大事にしていきたいと思っています。
【この記事の著者】
マスク・ド・アナライズ(@maskedanl)
IT業界に突如現れた謎のマスクマン。 現場目線による辛辣かつ鋭い語り口は「イキリデータサイエンティスト」と呼ばれ、AI・データサイエンス分野における啓蒙活動に従事している。東京都メキシコ区在住
取材・文/マスク・ド・アナライズ
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