1.開発経験なしの新卒が、効率よく成長するために大切にしてきたこと/株式会社 ディー・エヌ・エー 小池 啓輔
2.新卒1年目でAndroidアプリのアーキテクチャ移行を主導した話/株式会社 CyberZ 森 篤史
3.ガチャを一から作り直した話 ─規模の拡大につれて開発速度を落とさないための取り組みについて─/株式会社ミクシィ 神谷 元太
4.新卒2年目で新規開発を任された話 ~これが私のグロース戦略~/株式会社ビズリーチ(Visionalグループ) 山本 凌平
5.SREって何? から歩む自社サービスを守り支えるエンジニアロード/GMOペイメントゲートウェイ株式会社 橋本 玄基
20代エンジニア5名が圧倒的な成長を実現するためのグロース戦略を公開!【BIT VALLEY 2020 プレイベント#2】イベントレポート
渋谷を「IT分野における世界的技術拠点」にすることを目的に、長く渋谷に拠点を構えるIT企業が集まり、2018年7月に発足したプロジェクト『BIT VALLEY』。
同プロジェクトでは、これまでにエンジニアを目指す学生やIT業界に携わる若手エンジニアに向けたカンファレンスを開催してきた。
本記事では、2020年8月5日(水)、276人がオンラインで参加した『BIT VALLEY 2020』のプレイベント「20代で圧倒的成長を目指すエンジニア ~これが私のグロース戦略~」をレポート!
若手エンジニア5名が登場し、彼らが一番成長を感じた出来事を振り返り、その成長曲線について1人15分で紹介した。
当日、プレゼンテーションを行った5名の登壇者と発表テーマは以下の通り。
それぞれのプレゼンテーション内容を抜粋して紹介しよう。
開発未経験の新卒2年目が効率よく成長していった話
学生時代、数値計算の経験はあったが、アプリ開発やパブリッククラウドは一切経験しないまま、ディー・エヌ・エーに入社した小池さん。開発経験なしの状態から効率的なキャッチアップを図ってきた小池さんが考えるベストな成長手法は以下のとおりだ。
まずはタスクに触れてみて、自分が分かっていないことを理解する。
自分で調べる、ソースを読む、実験してみる。それでも分からなければ先輩に聞く。
具体的には、スケジュールを守る、コストや工数削減など何かしらの成果を出す、プラスαを加えるなど。信頼を積み重ねることで、より難しいタスクへのアサインなど「次」につながる。
「このサイクルを何度も繰り返すことで、知識の定着率が上がりスキルアップにつながった」と小池さん。さらに、新卒2年目でも成果を出すために大事にしてきたポイントについても触れた。
自分のタスク一覧やToDoメモを公開したり、Slackで細部まで確認可能な報告をしたり、情報をオープンにする。
メンターとは毎日30分間、部長やグループリーダーとは隔週30分の1on1を実施。メンタルケアからキャリアパス、タスクの確認、技術のキャッチアップなどの時間に。
「情報の透明化は、特にリモートワークになってから、情報のキャッチアップのために非常に効果的でした。また、1on1で自分のためだけの30分をつくってもらったことで、全てをそこで解決できて心理的安全性を高めながら成果につなげることができたと思います」
新卒1年目でAndroidアプリのアーキテクチャ移行を主導した話
高専時代、プログラミングコンテストに多く出場し、「避難経路を指示するマンホール」や「ダンス練習用スマートミラー」など奇抜なプロダクトの数々を開発していたという森さん。そこから徐々に、「複数人で同時開発できる」「保守性」「メンテナンス性」などの観点から、プロダクトをスケールしていくための仕組みづくりを個人レベルで試すように。
そんな彼がサイバーエージェントへ入社したモチベーションは、「より大きいレベルで仕組みづくりをしたい」「リアーキテクチャのチャンスがあればやってみたい」との思いだったという。
そんな森さんは、自身の希望を叶え、新卒1年目でAndroidアプリのアーキテクチャ移行を主導した。「最終的に任せてもらえたのは、信頼を積み重ね、タイミングを捉えることができたからだと思います」と森さんは語る。
とはいえ、新卒1年目では経験不足は明らかだ。それを補う方法として森さんが取った行動はこちら。
・とにかくサンプルコードを見まくる
・他アプリの詳細を調べる/聞く
・部署の人/同期/友人に相談する
ただ、森さんいわく「逆に新卒1年目だからできたこと」もあるという。
「初めて見るからこそ気付ける違和感があり、それは非常に重要だと感じました。放置された問題は直しにくいから放置されているわけで、だんだん慣れて忘れていってしまう。ここを計画的に提案・解決していくことが大事だなと思いました」
プロジェクトの進行中、古いコードを見ながら「いろいろと感じることはあった」という森さん。それでも「コードも人も憎まず」の精神で負の感情を持たずにやりきることができたのだとか。
モンストのガチャを一から作り直した話
今年で7周年を迎えるiOS・Android用スマホアプリ『モンスターストライク』。来たる10周年を見据えて、技術的負債の解消をすべくガチャを一から作り直した神谷さん。そもそも「なぜガチャをアップデートするのか?」については、以下2つの理由があったという。
・アプリにおける売り上げの要であり、モンストをプレイする上での重要な体験の一つだから
・ガチャに不具合が生じると、ユーザーに金銭的な損失が生じ、信頼を大きく失うから
バリエーションが複雑化し、変化するニーズにコードが追随できていないカオスな状態になっていたところから、どのようにアップデートを進めていったのか。まず行ったのが、既存のコードの問題の整理だ。
・排出候補がどうやって決まるのか分からない
・既存のコードの変更がどこに影響するのか分からない
・インターフェイスが統一されていない
これらの課題を解決していくと、次のような重要視すべき一般的な原理・原則が5つ見えてきたという。
意図を表現できるようなコードにする
コードは「拡張に対して閉じ」、「修正に対して開いて」いなければならないという原理
別な関心事(=機能or目的)に関係するコードは、別な場所に置く
コアになるロジックと、ソフトウェアの前提を分離する
「どのように使われるか」と「具体的な実装」を分離する
「ガチャはモンストの要の部分であり、もしトラブルがあれば、大きな損失につながります。そのため、これまでは大胆な変更を避けてきました。しかし、綿密な移行方針を立てることで、アップデートの影響が最小限になるよう配慮しました」
実際のガチャの移行方針がこちら。
・小さな変更をインクリメンタルに行う
・常に動き続ける状態を保つ
・仕様なのか曖昧な部分を整理した
「結果的に、リリース後から現在まで、このリファクタリングによるバグは一つも出ていません。今後も、その時々に最適なアップデートをしていく戦いが続きますが、これからも頑張ります」
新卒2年目で新規開発を任された話
平凡を極めたような大学生活を送っていたものの、大学院に進学してから始めた教育系のNPO団体の活動によって、エンジニアへの道が開けたという山本さん。
「学校に通えず勉強が苦手になった子どもに勉強を教えるNPOだったのですが、『将来、ゲームクリエイターになりたい』という教え子がいて。その気持ちが嬉しくて、その子のために何かできないかを考え、まずは自分で学ぶことから始めようと思いました。そしてご縁があって中高生向けのプログラミング教室でゲーム開発メンターをさせてもらえるようになり、そこでもITを通して選択肢や可能性を広げていく中高生を見ていて。エンジニアを続けていきたい思いが強くなり、ビズリーチに入社したんです」
優秀な同期と比べて開発経験が浅く、フルスタックエンジニアになりたいという目標が実現できるのか不安もあったが、リーダーやマネージャーとの1on1を通して、なりたい姿やその道筋を一緒に具体化。そうやって一つ一つの不安や課題を乗り越えてきたと山本さんは言う。
そんな彼が、指針にしているのがビジョナル株式会社 取締役 CTO 竹内真氏から教えられたというこの言葉だ。
「仕事の報酬は仕事。良い仕事をすれば、もっと面白い仕事として返ってくる」
この言葉が心に刺さり、より仕事へのモチベーションを高めた山本さん。圧倒的な成長を目指すために行った3つの行動を紹介しよう。
何にモチベーションを感じるのか、といった自分自身の特性を把握し、周囲の人にも知ってもらう。
信頼貯金を増やす。
すごい!と感動されるようなものを作る。
山本さん自身は、周囲の困っている人を助けるときにモチベーションが湧くタイプ。自分のやる気の源を知り、全力を尽くして感動してもらえるようなものを作り、周囲からの信頼を築いたことが、圧倒的な成長につながったとのこと。
「結果的にサーバーサイド、フロントエンド、モバイルアプリ、バッチアーキテクチャなど、フルスタックにいろいろとやりたいという思いにマッチした新領域の仕事を経験することができました」
SREって何? 状態から自社サービスを守り支えた話
社会人3年目、「百聞は一見にしかず」を座右の銘とする橋本さん。ECサイトを経営している企業と決済の役割を果たしている企業をつなぐ役割を果たすGMOペイメントゲートウェイに入社し、アプリケーション部門を志望していたものの、配属されたのはサービス・インフラ部門だった。
「キャリアは100%思い通りにいかない」と少々落胆したが、実際に仕事を始めてみたら、「SREの楽しさに気づいた」と橋本さんは言う。
橋本さんが考えるSREとは「信頼性に責任を持つソフトウエアエンジニア」。トラブルを起きにくくして、いつでも動くサービスを作る、サービスを提供する上で欠かせない役割だと言う。
「意外とSREが自分に向いていたと思った理由はいくつかありますが、新しいものに抵抗がなかった、面倒な作業がすごく嫌いといった自分の特性に加えて、会社が自分の提案を認めてくれ、テンポ良く仕事が進められたことも大きかったです」
そして今後、橋本さんが成長曲線を描く上で指針にしている考え方が「櫛型キャリア」だ。これは、自分の強みとなるキャリアの軸が複数本ある状態を指す。
就活の時に聞いた「1本の軸があるT型キャリアではよほど突出していないと難しい。これからは櫛型キャリアが必要だ」というビジョナル竹下氏の言葉を意識して、キャリアを形成しているとのこと。
「現状、私はモニタリングを深く学んでいて、さらにインフラの知識も身に付けつつあるという状態です。また、自社サービス開発の強みとして、好きなビジネスへの関わり方を自分で選択できることが一番のメリットかなと感じています。今はT型にスキルを磨いていけているので、今後は櫛形を意識していきたいですね」
圧倒的成長を目指すエンジニアの哲学・行動を参考にしてみよう
情熱を持って仕事に取り組む5名の若手エンジニアが登壇し、各々のグロース戦略をプレゼンテーションした本イベント。開発経験ゼロで入社したメンバーもいたが、成長速度を速める行動サイクルを見つけ、それを繰り返すことで自身の不足を補いスキルアップにつなげていた。
また、自分自身のキャリアを形成する上で軸となる指針を持つメンバーも。情報が溢れ、多様な選択肢がある現代だからこそ、「自分のキャリアの指針」がより重要になってくるのだろう。ピンときたエピソードがあれば、ぜひ自身のキャリア形成の参考にしてみてはいかがだろうか。
エンジニアのキャリア形成やスキルアップについてさらなる情報を得たい人は、9月9日(水)~12日(土)まで開催中の『BIT VALLEY 2020』も、ぜひチェックしてみてほしい。
文/小林香織 編集/川松敬規(編集部)
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