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「民泊」拡大で注目のSQUEEZEに、Pythonコミュニティで活躍する関根裕紀氏がジョイン。新CTOが考える次の一手とは?

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    SQUEEZE代表取締役社長CEOの舘林真一氏と、CTOに就任した関根裕紀氏

    (写真左から)SQUEEZE代表取締役社長CEOの舘林真一氏と、CTOに就任した関根裕紀氏

    外国人旅行者の急増や2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催へ向けて、民泊・バケーションレンタル事業への注目度が高まっている。Airbnbのようなホームシェアリングサービスが台頭し、国内では今年8月「国家戦略特別区域を定める政令」が改正され、一部の地域では民泊に関する条例の整備も進み出した。ビジネス面で、今後さらなる需要増が見込まれる有望なマーケットの一つだろう。

    その活性化の一翼を担っているのが、2014年9月設立のスタートアップSQUEEZEである。

    同社が開発・運営する民泊の不動産オーナー・企業向けサポートサービス『Mister Suite』は、AirbnbやHomeAwayをはじめとした主要な宿泊マッチングサービスにも対応しながら利用者を伸ばしている。そして今年10月19日、SQUEEZEの新CTOに関根裕紀氏が就任した。

    複数のスタートアップでエンジニアとして活躍してきた関根氏は、『Pythonエンジニア養成読本』を共著で執筆したり、『PyCon JP 2015』で副座長を務めるなど、日本のPythonコミュニティの中で名の知れた存在だ。

    このタイミングで同社に関根氏がジョインした背景には、『Mister Suite』がPythonで開発を進めている(開発環境の詳細はコチラに記載)ことに加えて、民泊事業において技術面でのイノベーションが必要なタイミングという理由があった。

    民泊産業の発展には「オペレーションシステムの進化」が急務

    バケーションレンタルに必要なプロセスをトータルサポートする『Mister Suite』

    バケーションレンタルに必要なプロセスをトータルサポートする『Mister Suite

    SQUEEZEが運営している『Mister Suite』とは、民泊における各種オペレーションを分業体制に落とし込み、世界中の在宅ワーカー、カメラマン、ハウスキーパーを各モジュール間でつなぎ合わせることによって、膨大にある民泊業務を回していく、いわば新しいクラウドワーカーのプラットフォームである。

    増加する民泊業務に対して、専属の登録スタッフが力を合わせることで、訪日外国人の受け入れ体制を構築している。個人が各々のライフスタイルに合った働き方を選択し、空き時間で必要な作業のみをこなせるような体制を取ることで、「新たに仕事を創出する」というのも同社のビジョンの一つである。

    「そもそも何をやれば物件を貸し出せるのか分からない」、「海外からの問い合わせに対応できない」といった人のほか、ホスティングの運用面まで手が回らない物件オーナーや、空室対策として民泊事業に参入したいという不動産会社などを対象に各種サービスの提供を行っている。

    同社CEOの舘林真一氏は、このサービスを運営していく上で必要となるシステム面での要諦をこう語る。

    ゴールドマンサックス証券シンガポール支社やトリップアドバイザーのシンガポール支社で経験を積んだ後に起業した舘林氏

    ゴールドマンサックス証券シンガポール支社やトリップアドバイザーのシンガポール支社で経験を積んだ後に起業した舘林氏

    「利用者は訪日外国人がほとんどで、時差を考えると宿泊の問い合わせから予約、チェックインまでのやり取りは24時間対応が基本となります。また、チェックアウトから次の利用者のチェックインまでの間に部屋の清掃を済ませておくなど、オーナーさまだけでは手が回らない部分をこちらでサポートするサービスとなっているため、各種オペレーションをスムーズに進行させるシステムが必要不可欠なのです」(舘林氏)

    メールや電話での問い合わせ対応は主に英語となるため海外在住の登録スタッフが、清掃作業などは国内の登録スタッフがそれぞれ対応している。同社のシステムは、こうしたスタッフ=クラウドワーカーの使い勝手も考慮したものでなければならない。

    加えて、膨大な客室を一括管理するためのシステムも提供しており、開発陣に求められる能力は非常に高いものとなっている。高性能な業務システム並みの設計と、機能開発の素早さが求められるのだ。

    「問い合わせやブッキングに始まって、実際に利用してチェックアウトするまでに必要な機能は膨大にあります。『Mister Suite』のようなサービスのオペレーションシステムは、改善すべきことがまだまだ山積みなのです」(関根氏)

    会社設立から1年あまりでサービスを急拡大させてきたため、これまでのシステム開発はスピード優先で「都度対応が中心だった」と舘林氏。つまり、システムの細部にもそれぞれ部分最適が必要であり、その上で全体最適をできるだけ早く実現しなければならないという状況なのだという。

    新CTOの最重要ミッションは優先順位を定めたスピーディな開発進行

    前職のアライドアーキテクツでは海外向けサービスの開発経験もある関根氏

    前職のアライドアーキテクツでは海外向けサービスの開発経験もある関根氏

    そこで、経験豊富な関根氏に白羽の矢が立ったわけだが、さらなるサービス進化の糸口として、価格設定時のフォロー機能も開発していきたいと舘林氏は続ける。

    「オーナーさまが最も頭を悩ませるのが価格設定です。宿泊料金はシーズンやニーズによって変わるものですが、どう価格を設定すれば高い稼働率を保てるかが分からないという声が非常に多い。そこで、この課題に関してもソフトウエアによって価格設定の自動化を進めています」(舘林氏)

    宿泊費設定を自動化するには、膨大な量のデータを分析し、シーズンごとのニーズや周辺エリアでのイベントといった“変数”を加味する精度の高いアルゴリズムの開発が必須だ。

    「舘林とはコミュニティ活動を通じて以前から面識があり、Pythonや開発プロセスについて何度か意見交換をしていました。『Mister Suite』の開発についても多少話を聞いていたので、それぞれのエンジニアが何にどう取り組んでいるかはある程度理解しています。正式にジョインしてから日は浅いですが、今は膨大にあるタスクの中でどれを優先すべきかを洗い出し、早々に着手すべき順番を決めたいと考えています」(関根氏)

    民泊事業は、海外企業や大手不動産会社の参入など、マーケットの急拡大に伴って競争の激化が確実だ。SQUEEZEが打ち出すビジネスモデルをさらに強固なものにし、スケールしていくことを視野に入れると、オペレーションシステムの高速化と情報共有のための基盤整備をさらに加速させていくのが競争優位につながるだろう。

    関根氏がCTOとしてジョインし、開発面で陣頭指揮を執るのは、まさに今でなければならなかったというわけだ。

    「競合他社では問い合わせ対応やブッキングなどのオペレーションに多くの人員を割いたり、人海戦術でこなしているところもあります。一方、当社はあくまでもテクノロジーで戦っていきたい。ですから開発陣の強化によって強みをさらに伸ばし、これから台頭する複数の宿泊サイトのチャネルマネジャー、そしてクラウド人材のインフラを提供して国内外にシェアを広げていきたいですね」(関根氏)

    ちなみに民泊事業をスケールさせるには、既存の大手旅行会社や不動産企業との協業も一つの手だが、「そういった業務提携は考えていない」と舘林氏は語る。『Mister Suite』を一大プラットフォームに育てていくためには、特定企業の“色”を付けずに独自進化していくのがベターという考えからだ。

    関根氏を開発リーダーに迎え、日本発のシェアリングエコノミーにおけるホスティングインフラとして世界を視野に事業拡大を目指すSQUEEZE。急拡大するマーケットの行方とともに、その存在をどれだけ確かなものにしていけるか、今後に注目だ。

    取材・文/浦野孝嗣 構成/秋元祐香里(編集部) 撮影/竹井俊晴

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