電線トラブルをAI解析。送電点検はドローンで。“古典的”から脱却した東電グループのシステム開発
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日本を代表する巨大企業・東京電力が今、先端技術を活用したさまざまな新しい取り組みを行っていることをご存知だろうか。
例えば『テプコスナップ』は、電線の切断や電柱の傾斜といった事故を住民が通報する際、現場写真を投稿してもらうためのシステム。これまでは「電線が切れている」と通報を受けて担当者が現場へ急行しても、実際に切れているのはNTTの回線だった、といったことが起きていた。『テプコスナップ』では現場出動前にシステムで現地の状況を確認し、問題個所が自社の設備なのかどうか、急ぎの対応が必要かが事前に分かるようになった。
さらに、AIの画像解析を行い、電線種別の自動判別にも取り組んでいるという。
山などの高い場所に走っている送電線の点検にはドローンの自動飛行システムが使われている。従来は、作業員が送電線に体を乗り出したり、高倍率スコープで撮影したり、ヘリコプターから撮影したりといったやり方が一般的だった。しかし、こうしたやり方には危険がともなうし、労力も掛かる。そこで、対象物検知センサーを搭載したドローンが自動飛行しながら、最適な画角で送電線の異常を撮影するシステムを導入。点検作業の大幅な効率化とコスト低減を実現している。
先端技術を用いてこうした新たな事業アイデアを形にしているのは、東京電力のグループ会社・テプコシステムズのエンジニアだ。電力の安定供給を至上命題とし、「巨大システムの保守・運営」という色が強かった同社のエンジニアの仕事は、ここへきて広がりを見せている。
その旗頭と言えるのが、2018年6月に新設されたDXソリューション部、通称『tepsys labs(テプシスラボ)』。今回は『テプコスナップ』の開発にも携わったエンジニアに話を聞き、インキュベーションセンターであるtepsys labsから次々に新しい事業が生まれている背景を探った。
徹底した顧客志向とモダンな開発手法でアイデアを次々に事業化へ
長きにわたり首都圏への安定的な電力供給を担ってきた東京電力グループだが、他の大企業の例に漏れず、DXは喫緊の課題となっている。特に、2011年の福島第一原子力発電所事故や2016年の電力自由化を経たことで、既存ビジネスの改善・効率化と新たなビジネスの創造を両輪で進める必要性が高まっている。
こうした状況を受けて、今までにない手法や新技術を活用し、グループ全体のDXを推進することを目指して立ち上げられたのがtepsys labsだ。データ分析チーム、社内のDXを担うチーム、社外(主なクライアントは東京電力グループ企業)のDXを担うチームの三つからなり、現在エンジニア20数人を中心に活動している。
主にクライアントから持ち込まれた課題を起点に、アイデアを具体化し、早期適用し、事業化を実現するまでをワンストップで担う。設立からの3年間で事業化までこぎ着けた案件は大小合わせて7個に及ぶという。
入社12年目のプロパーエンジニアで、自ら志願して異動してきたというKさんは、tepsys labsがアイデアを次々に事業化できる理由を次のように語る。
「われわれエンジニアはどうしても技術面に意識が行ってしまうものですが、tepsys labsで大切にしているのはお客さま視点です。どうやったら課題が解決できるだろうかと徹底して顧客志向を貫いていることが、アイデアを事業にできる大きな要因になっていると思います」
徹底した顧客志向の追求は開発のスタイルにも現れている。ユーザーインサイトを汲み取るデザイン思考、計画から設計・開発・テストまでを小さなサイクルで繰り返し回すアジャイル開発、開発担当者と運用担当者の連携を強化したDevOpsなど、これまでのテプコシステムズのシステム開発にはなかったモダンな開発手法を貪欲に取り入れている。
グループの「教育機関」としての役割も担う
Kさんはtepsys labsに異動するまで基盤システムの開発や運用に携わってきていた。こちらは「東電グループのシステム開発」と聞いて多くの人がイメージするであろう、ウォーターフォールで行う大規模開発。「細かくマニュアルが定められており、それに頼って開発できる世界だった」という。
当然、tepsys labsにも立ち上げ直後はモダンな開発手法に関する知見はなく、初期のプロジェクトである『テプコスナップ』の開発は手探りで進めなければならなかった。
「セキュリティー面一つとっても、従来であれば会社のインフラに乗っかっていれば何も気にしなくてよかったところ、配慮しなければならないことが次々に見つかる。確たる正解が分からない中で進める開発は慣れるまでは大変でした」
DXを進めるためには、システムを開発する側であるテプコシステムズ社内はもちろんのこと、東電グループ全体のテクノロジーへの理解も進まないと難しい。初期はクライアントである東電側と共に理解を深めたそうだ。
「アジャイル開発で進めるというと、事業化までの開発期間が短くなって、あっという間にできるものだと思われたり。その度に一個一個説明して、誤解を解くところから始めなければなりませんでした」
こうした経緯もあり、tepsys labs内に、東電グループ全体の教育機関の役割も設置した。テプコシステムズの社内向け研修プログラムの監修に加えて、本社社屋のワンフロアに「TELaKO屋(寺子屋)」と銘打ったイベントスペースを設置。メンバーが講師となってグループ企業の社員向けに定期的に講座を開講し、DXやデータ分析、先端テクノロジーに関する正しい知識の浸透に努めている。
徐々に広がる「新しいことに挑戦する空気」
新しいものを生み出すtepsys labsの動きは加速しており、クライアントからの相談が起点になるパターン以外に、エンジニア側から技術起点で提案するケースも増えているという。IoT技術を使って社内の会議室やトイレの混雑具合を表示するシステムはその一例。また、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、フリーアドレスで働く社員がいつ、どこで作業していたかを追跡するシステムなども開発し、試験運用している。
tepsys labsのTELaKO屋などを通じた啓発活動も実ってか、DXに関する相談案件は右肩上がりに増えているという。こうした中、tepsys labsに漂い始めた「新しいことに挑戦する空気」を、今後はラボの外にも広げていくことが重要であるとKさんは考えている。
「テプコシステムズのエンジニアには、これまではどちらかというと、緻密に計画を立てて粛々と、そして絶対に失敗しないように開発を進めることが求められてきました。それももちろん大切ですが、これからはそればかりでもダメ。正解が見えない中でも新しいことに挑戦する空気をどんどん広めていきたいですね」
別の言い方をするなら、テプコシステムズには今、tepsys labsに限らずあらゆる部署に新しい挑戦ができるチャンスがあるということ。正解がない中で道を切り拓いていくようなチャレンジがしたいエンジニアにとっては、非常に面白いタイミングであると言えるのではないだろうか。
取材・文/鈴木陸夫 撮影/赤松洋太
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