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リモートワーク“いい・悪い議論”は超不毛。新時代は「コミュニケーションOS」を今すぐアップデートせよ【キャスター石倉秀明】

働き方

もう「環境」に惑わされない!

新時代のエンジニア・パフォーマンスアップ術

新型コロナウイルスの感染拡大から約1年半が経過。コロナショックをきっかけに働き方の多様化が進む中で、エンジニアには「どんなワークスタイルでも安定してパフォーマンスを発揮する力」が欠かせない。では、そんな力を磨くためには何が必要?専門家らへの取材で解き明かす

コロナ禍において「エンジニアの仕事はリモートでも対応できる」と感じられた人は多い。しかし世間では、いまだに「リモートか、出社か」の議論がまん延している。そんな現状を「ナンセンス」だと突きつけるのが、“Mr.リモートワーク”こと株式会社キャスター取締役CRO(Chief Remote work Officer)の石倉秀明さんだ。

同社は、コロナ禍以前からメンバー1000名以上がリモートワークを実施。以前エンジニアtypeが取材に出向いた際にも、「リモートは何も特別なことではない」と主張していた。

>「特別なスキルはいらない」エンジニアがリモートワークを始めるときの注意点を、メンバー700人フルリモート企業の役員に聞いた

そんな石倉さんは、世間の「リモート/出社議論」をどう見ているのか。そして今、改めて「リモートワークでの成果の出し方」とは何なのか聞いてみると、リモートに限らずエンジニアが「どこでもパフォーマンスを発揮できる力」のヒントが見えてきた。

プロフィール画像
   

株式会社キャスター 取締役CRO 石倉秀明さん(@kohide_I

大学卒業後、リクルートHRマーケティングに入社。HR領域の営業を経て新規事業や企画を担当。2009年、創業期のリブセンスに入社し、ジョブセンスの事業責任者として株式上場に貢献する。その後、DeNAに移り、EC営業統括、新規事業、採用責任者などを歴任し、16年から現職。『CASTER BIZ‎』など、さまざまなオンライン業務支援サービスを提供するキャスターのCOOを経て、現在はCROを務める。通称「Mr.リモートワーク」

みんなリモートを経験したけど、本質的な議論はできていない

コロナ禍以前のキャスターは、「全員がリモートワークをしているとても変わった会社」だと珍しがられていたんです。でも、今はヤフーやメルカリといったIT企業はもちろん、トヨタのような製造業から官庁に至るまで、当たり前のようにリモートワークを導入していますよね。

こんなふうに、多くの人がリモートで働くことを経験したのは、とても大きな変化だと思います。誰もがリモートワークに関心を持ち、議論をするようになりましたから。

ただ、ずっとリモートワークの必要性を主張してきた私から見れば、本質的ではない議論が多いなという印象です。

例えば、リモートワークを取り入れた場合のオフィスの在り方についての議論。「人に会えないのは仕事にとってマイナスだ」という意見がありますが、「リモートワーク=人に会ってはいけない」というわけではありません。人に会えないのはリモートのせいというよりは、単に新型コロナウィルスのせいですよね。

あるいは「オフィスの方がイノベーションが生まれやすかった」と言われることもありますが、もしそうであるならば、この30年の日本からなかなかイノベーションが生まれなかった事実はどう説明するのでしょうか?

つまり、前提や論点がごちゃごちゃになった言説が多くて、あまり本質的な議論が生まれているとは言いにくい状況なのです。

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そもそも、オフィスで働くこととリモートで働くことは、決して対立軸ではありません。働く場所の問題であって、「渋谷で働くのと恵比寿で働くのを比べてどちらが生産的か」という議論がナンセンスであるように、オフィスで働こうがリモートであろうが、その人の仕事の能力に変わりはないのです。

また「リモート疲れ」なんて言葉もできましたが、これもニュースで聞くような視点は少しずれているように感じます。

たしかに、リモートでずっと働いていると疲れることはありますよ。しかし、これはリモート自体のせいというより、リモートになるとオンラインミーティングなどのスケジュールを詰め込みすぎてスキマ時間が少なくなり、休み時間やダラダラした時間を取らなくなりがちで、実質的な労働時間が延びていることに原因があるのではないでしょうか。

そういう意味では、今までがサボっていた部分もあるわけですが、これは決して「リモートだから悪い」理由にはならないはずです。

特別なスキルはいらない、必要なのは「コミュニケーションOS」を変えること

なぜこのような不毛な議論が起こるのか。それは多くの会社やチームが、リモートワークと言いながら、単に会議をZoomなどに置き換えただけになってしまっているからです。

リモートワークを取り入れるということは、コミュニケーションの仕方を変えることを意味します。エンジニアtype的に言うならば、「コミュニケーションのOS」を変えなければいけません

これまでの仕事におけるコミュニケーションのOSは「聞く、話す」でしたが、リモートにおいては「読む、書く」に変わっています。つまり、空気を読んだり、雰囲気で伝えるような同期的なコミュニケーションよりも、チャットをうまく使ったり、正しく文面を読んだり、非同期的なコミュニケーションの方が大事になっているわけです。

ですから、今までオフィスでやっていたようなちょっとした相談もZoomでやろうとなった結果、一日中Zoomの画面に張り付いている、なんてことになってしまう。これも、コミュニケーションのOSという本質を考えていないから起こることです。すでに違う競技になっているのに、前と同じ競技のルールを持ち込んでしまっているようなものですよ。

キャスター

「聞く、話す」OSから、「読む、書く」にアップデートしなければいけないわけですから、前者のやり方は意識的に排除しなければなりません。

例えば「察してほしい」なんて状況は、「読む、書く」のOSでは対応できませんよね。オフィスで机を並べていれば、隣の人が忙しそうにしてたら自然と手を貸すことができますが、リモートでは他人の状況なんて見えません。でもこれは「読む・書く」のOSを使って、チャットなどに本人が「忙しくて困っている」と書き込めばいいだけです。

いわゆる日本的な職場では、「聞く、話す」OSが圧倒的に強く、「言わなくても分かってくれる関係」が重視されすぎていたと思います。これがリモート下においてはコミュニケーションにおける「甘えの構造」として浮かび上がってきましたよね。

今後はリモートであろうとなかろうと、このような「OS変換」の意識を誰しもが持っておかなければなりません。

リモート普及は、個人のキャリアにも影響を与えた

このコロナ禍によるリモートワークの普及は、個人のキャリアにも影響を与えるようになりました。

「どこでも働けるようになる」ことによる、キャリアの自由は言わずもがな。子どもができて時短になったり、地方で働きたいと思ったりしたときに、リモートワークができることでキャリアの選択肢を狭めなくてよくなるわけですから。IT系企業を中心に、そういう会社が増えたことは、とても喜ばしいことだと思います。

さらにリモートの普及は、「ヤバい会社」を見分ける指標としても役立つようになりました。リモートワークをするかどうかの判断って、その会社のリスクに対する考え方でもありますよね。

もちろん、飲食店や旅行業などリモートにそぐわない業種というのはありますが、エンジニアが働くような企業であれば、これだけ感染が危ぶまれる中で、リモートを全く導入しない会社は従業員を感染のリスクにさらしても今までのやり方を重視しますと言っているようなものですから、その会社への見方は懐疑的になります。

キャスター

また仕事の成果が可視化されやすくなったことも、リモート化がもたらした影響の一つです。

僕は仕事の成果には2種類あると考えていて、一つは「誰もが分かるような圧倒的な業績を上げる」こと、もう一つは「当たり前のことを当たり前にこなす」ことです。

これまでのオフィスワークでは、前者は分かりやすいけれど後者はそうでもないので、何も成果を上げていないのにスタンドプレーが目立つ人の方が評価されていたりすることもありました。

でもリモートワークになって、そうした「当たり前の成果」が可視化されるようになった。これは、システムが当たり前に動くことのために日々成果を上げているエンジニアの人にとっては追い風なのではないでしょうか。

今後は、「リモートだから、出社だから」といった不毛な議論に惑わされることなく、自分に与えられた役割をしっかりとこなせる人が、さらに価値を持つようになっていくと思います。「ちゃんとこなせるエンジニア」がキャリアを積み上げやすくなるわけですね。

そのためには、今までのやり方をアンラーニングして、新しい方法を学び直す。転職したりして、使用する言語や開発手法が変われば、そちらにアジャストする、アップデートするというのは、エンジニアの世界ではごく自然なことですよね。

働き方もそれと同じように考えて、アップデートし続けることが大事なのではないでしょうか。

取材・文/高田秀樹 編集/大室倫子

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