Pythonコミュニティを地方にも~PyCon JPが初心者向けチュートリアル『Python Boot Camp』全国ツアーを展開中
プログラミング言語Pythonの普及と認知向上に取り組んできた一般社団法人PyCon JPが、2016年6月より全国各地の希望者に対して初心者向けチュートリアル『Python Boot Camp』を展開している。
同法人が2011年から約年1回のペースで開催してきた『PyCon JP』は、“Pythonistaたちの祭典”として回を追うごとに盛り上がりを見せており、今年の『PyCon JP 2016』には過去最高の720人が参加。開催の約1カ月前に前売りチケットが売り切れるという盛況ぶりだった。
ただ、『PyCon JP』のような大規模イベントは、東京を中心とする首都圏で開催されることがほとんど。地方在住のPythonistaや、これからPythonを学びたいという人は、気軽に仲間と交流する機会をなかなか得られなかった。
そこで一般社団法人PyCon JPは、2015年より地方都市で企画・実施された小規模カンファレンス『PyCon mini』をサポートするなど、東京以外でもコミュニティを活性化するべく動いてきた。
今回紹介するPython Boot Campは、さらにカジュアルに行えるよう、5~10名程度の規模で実施されている。すでに今年6月に京都、7月には愛媛、8月に熊本と3回にわたって行われており、直近では11月19日(土)に北海道・札幌市で開催される予定だ。
>> Python Boot Camp in 札幌の申し込みはコチラ
こうして地方都市での草の根活動を始めた理由について、同法人の代表理事である寺田学氏は次のように明かす。
「最近は、東京でPython関連の勉強会を企画するとすぐ100人以上の応募があるなど、Pythonistaが増えていることを日々実感しています。でも、例えば『JAWS-UG』や『~.pm』、『CSS Nite』のように地方都市でも広まりを見せているコミュニティに比べると、Pythonコミュニティはまだまだ普及の道半ばです。なので、気軽にコミュニティを広げてもらうためのきっかけづくりとして、全国各地でPython Boot Campを実施することにしました」
開催希望の地方在住者に向けて、事務局が手厚くフォロー
Python Boot Campが特徴的なのは、まず開催を希望する地方在住者による問い合わせからスタートする点だ。
PyCon JPのサイト内にある「Python Boot Camp 全国ツアーお問い合わせフォーム」へ開催希望地域とメッセージを書き込むと、内容を確認してPython Boot Campのスタッフが実施に乗り出す。
地方都市でチュートリアルを開催する際には、何よりもまず会場を確保しなければならない。それには現地で主催者として動いてくれる人が不可欠というのが希望制にしている理由だが、勉強会を一度も開催したことのないような人にとっては企画・運営すること自体なかなかハードルの高いことかもしれない。
そこでPyCon JP事務局は
■運営マニュアルとチュートリアル用テキストの提供
■チュートリアルを行う講師の派遣
■講師との事前打ち合わせなどの設定
■講師謝礼、講師・現地スタッフの経費精算
■Connpass PyCon JPでのイベント公開
■Facebook、TwitterのPyCon JP公式アカウントのでの告知
などによって実施までの一連のプロセスをサポート。運営マニュアルとチュートリアル用テキストに関しては、「Python Boot Campテキスト」としてWeb上で公開・閲覧できるようにもしてある。
「Python Boot Campでは、開発環境づくりや基礎的な文法学習から始まって、Webサイトからのスクレイピングまでひと通り学べるようになっています。チュートリアルの時間は約4時間。そもそもどんなことが学べるの? と思っている方にも、見ていただければ理解してもらえると思います」(寺田氏)
ちなみにこの「Python Boot Campテキスト」は、CCライセンス・バージョン4.0(CC BY 4.0)でコピーや複製、改変や二次使用も自由にできるよう指定されている。こうした諸々の配慮によって、開催希望者が1人で手を挙げたとしても事務局と一緒に地元でPython Boot Campを実施できるようにしているのだ。
寺田氏は、「事前の打ち合わせはSlack(チャット)で行っていますし、開催当日も半日程度の準備時間で済むよう配慮しています。事務局が全面的にサポートしていく腹積もりなので、まずは気軽に問い合わせてほしい」と語る。
開催前に準備すべき事項はPython Boot CampのWebページにも記載してあるのでぜひ見てみてほしい。
Pythonを学ぶこと以外に、「プログラマー仲間」を探すきっかけにも
最後に、PyCon JPは具体的にどんな人たちにこのPython Boot Campを利用してほしいと考えているのか。
「初心者向けチュートリアル」と銘打っているように、これからPythonを学びたいと考えている地方在住者を想定しているものの、Python Boot Campの広報活動を手掛ける筒井隆次氏は「身近にプログラマー仲間がいないことを寂しく感じているような方々にもぜひ活用してほしい」と言う。
自身も約10年前、北海道・札幌市でエンジニアとして働いていたという筒井氏は、同じ趣味・嗜好を持つプログラマー仲間と出会うのはなかなか難しいと感じていた。
「コーディングを学ぶこと自体はWeb上でもできますが、コミュニティへの参加を通じてリアルな場で情報交換をしたいというニーズはどの都市に住むプログラマーにもあるものだと思うんです。それが地元ではできないというジレンマを抱えている方々にも、Python Boot Campを企画・利用していただければと考えています」(筒井氏)
事実、すでにPython Boot Campを実施した熊本や愛媛では、自主的にコミュニティ活動へと結び付けていく取り組みが始まっていると寺田氏は話す。
「各地で開催するPython Boot Campにチュートリアルの講師として参加していただく方には、その後の懇親会も企画・参加してほしいと事務局からお願いしています。なので、参加者の方々にはぜひそこでプログラマー仲間の輪を広げていただきたいですね」(寺田氏)
プログラミング義務教育化についての話題や、スマホでアプリを楽しむ人の増加などを背景に、今、プログラミングに関心を持つ人たちは確実に増えている。PyCon JPが始めたPython Boot Camp全国ツアーの試みは、全国各地に芽生えつつある“点”を“線”にし、地域コミュニティという“面”へと進化させていく可能性を秘めているかもしれない。
取材・文/浦野孝嗣 撮影/伊藤健吾(編集部)
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