企業の「使い分け」ニーズにも即応できるのが差異化に~富士通クラウド製品開発・技術支援部隊の舞台裏
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普及期から成熟期へ。エンタープライズITにおけるクラウド利用は、徐々にだが着実にフェーズが変わっている。
企業向けシステムを構築するSI・ベンダーはもちろん、ユーザー企業の情報システム部門でも、近年は「クラウドファースト」を前提にIT戦略を再考するようになった。
ただ、大規模かつ複雑な基幹システムを持つメガカンパニーや、グローバルに拠点を持つ国際的企業ともなると、その取り組み内容は若干異なる。
例えばMicrosoft Office 365のような業務アプリケーションはパブリッククラウドで運用しつつも、顧客情報や個人情報といったシステムの堅牢さが求められる部分はオンプレミスかプライベートクラウドで管理するなど、使い分けのニーズが根強く残っているのだ。また、パフォーマンスやコスト管理の面で、プライベートクラウドとパブリッククラウドの併用が適しているという業務もある。
こうした多様なニーズを汲みながら、企業ITインフラのプライベートクラウド化を支援しているのが、富士通のプラットフォームソフトウェア事業本部だ。
場合によってはISV製品との連携も。「組み合わせの妙」で最適解を導く
同部門はこれまで、製造・流通・金融などあらゆる業種の大企業数100社を対象にクラウドソフトウエアを提供してきた。
さらに今春は、富士通が2015年5月に発表したデジタルビジネスプラットフォームのプライベートクラウド基盤製品『FUJITSU Integrated System PRIMEFLEX for Cloud』(以下、PRIMEFLEX)を基軸に、今まで以上に顧客の要望に即したクラウド環境を構築する専門チームを発足。この専門チームで部長を務める鈴木久智氏によると、「各ベンダーがさまざまなクラウドサービスを提供している中、『PRIMEFLEX』の特徴はまさに使い分けニーズに細かく対応できる点にある」と言う。
安易にパブリッククラウドへ“載せ替える”のではなく、顧客の要望をかなえる最も効果的なクラウド環境を構築する――。この視点で動く鈴木氏率いる専門チームは、導入戦略の策定から要件定義、実装までを丁寧にサポートするべく
【1】プロモーション・拡販(いわゆるプリセールスのチーム)
【2】技術支援(顧客ごとに最適なクラウド環境を具現化するチーム)
【3】サービス(実装チーム)
の3つにメンバーの役割を分けている。それぞれが担当範囲の知識・スキルを深めつつ、連携しながらソリューション提供を行うためだ。
中でも、技術支援は事業の肝となる「クラウドの使い分け」の部分に大きく関与する部分。技術支援担当の中島一嘉氏は、業務で求められるスキルをこう語る。
「スキル面では仮想化技術やクラウドについての知識が問われますが、最も重要なのがお客さまの課題を発見し、解決策をご提案することができる課題解決能力です」(中島氏)
システム構築で欠かせない各業界の顧客ニーズは拡販チームと連携しながら把握していく一方で、技術面では他社製品についても調べながら最適な組み合わせを模索する。実際に、某セキュリティソフト企業のソリューションと連携させるようなプロジェクトも手掛けてきた。
そのため、自社製品のみならず他社のソリューションについてもアンテナを高く張って情報収集していくことが求められると鈴木氏は語る。そして中島氏も、技術の組み合わせこそがクラウド活用を有効にする重要なポイントだと続ける。
「我々のチームには、単一の製品でカバーし切れない部分までカバーしていくことが求められます。例えばクラウド上でCI(継続的インテグレーション)の環境構築をする際にも、さまざまな自動化ソフトを使ってどこまでやれるか? などを徹底的に調べます。ですから我々の仕事では、幅広い技術知識をキャッチアップしていく姿勢が欠かせません」(中島氏)
チームメンバーのバックグランドを多様なものにすることが生存戦略の一つ
このように業務範囲は多岐に渡るが、現在は5名程度の小規模なチームで技術支援を行っているため、積極的に中途採用を行っているそうだ(※他、2016年11月時点でプロモーション・拡販チームは6名、サービスチームは5名体制)。
その採用で重視しているのは、技術面と同様に「組み合わせの妙」だと鈴木氏は言う。
「技術支援のメンバーはバックグランドもさまざまです。中島はもともとクラウド基盤ソフトウエアの評価・検証をしていましたし、他には長年ミドルウエア開発をやってきた者や、仮想化技術の一つであるハイパーバイザーのコミュニティで活動している者などもいます。それぞれ異なる専門知識を持つ人同士の組み合わせで付加価値を生んでいくために、チーム構成は多様であるべきと考えています」(鈴木氏)
中途採用でもクラウドの専門家以外に、サーバ/ストレージ/ネットワークで構成された仮想化基盤の設計開発経験者や、オープンクラウド(OpenStackなど)について詳しい人、IT基盤のRFP(提案依頼書)作成もしくは回答の経験豊富なエンジニアなどを求めている。
では、こうした体制づくりと並行して、これから同チームが注力していきたいと考えている事柄とは何なのか。一つは特定の業界・業種に対して共通して使えそうな機能のオファリング(課題解決メニューの策定)を進めることで、もう一つは海外企業へのクラウド導入支援だと鈴木氏は説明する。
オファリングに関しては、少数精鋭のチームで顧客企業を支援していく上で必要不可欠であることに加え、2つめの目標である海外企業支援の際にも役に立ってくる。
「技術的には国内企業へのクラウド導入と同じことでも、海外企業にサービス提供をする際はその国ならではの商習慣やお国柄などを知らなければうまくいきません。海外企業とのやり取りをした経験のあるエンジニアも採用できればと考えています」(鈴木氏)
技術のみならず、人材面でも多様さが普及のカギを握る富士通のクラウド活用。自社製品や特定のソリューション提供に縛られることも多いエンタープライズ開発の世界で、顧客ニーズに応じた最適解を提供したいと考えているエンジニアにとっては、挑戦のしがいがある場所といえるだろう。
取材・文・撮影/伊藤健吾(編集部)
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