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成功するのに重要な「やり抜く力」を身につける方法とは?

スキル

    近年、「仕事の成功」と因果関係のある「能力」についての研究結果が頻繁に紹介されています。その研究の多くが、仕事の成功に必要なのは学力やIQテスト、先天的な能力ではないことを示しています。

    昨年のヒット作、『「学力」の経済学』では、学歴と将来の経済的成功とに因果関係はなく、「自制心」や「やり抜く力」のような非認知能力(目に見えにくい能力)のほうが影響していると指摘しており、話題になりました。

    『GRIT やり抜く力』でも、まさに人生の成功にはGRIT=やり抜く力が必要であることを、さまざまな研究結果から紹介してくれています。99%を占める、私たちのような平凡な能力の持ち主でも、天賦の才能を持ち合わせた1%の人たちに「やり抜く力」によって対抗できる!…だとしたら、それはそれは痛快なことではありませんか。

    丸善・ジュンク堂「企業研究」書籍 2016年10月ランキング(2016年9月26日~2016年10月25日までのデータ)

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    「知能」と「功績」に関連性はない

    本書の著者アンジェラ・ダックワースさんは、ペンシルバニア大学心理学部の教授です。近年、アメリカの教育界で重要視されている「GRIT」研究の第一人者としてすでにかなり知られた人物のようです。

    彼女はハーバード大学で神経生物学を専攻、優秀な成績で卒業後、マッキンゼーで経営コンサルタントになります。その後、公立中学校で数学の教師に転身。その際、授業内容の飲み込みの早い子が必ずしもよい成績を修められるわけではないことに気づきます。それよりも、欠席もせず、授業中によそ見もせず、ノートをきちんと取ってよく質問した生徒のほうが成績がよかったのです。

    この気づきをした彼女は、大学に戻って心理学を学び、人間の能力と成功の秘訣についての研究を重ねます。その集大成が本書というわけです。

    彼女はまず過去の研究結果を調べ、スタンフォード大学の心理学者キャサリン・コックスが1926年に、偉業を成し遂げた301名の歴史上の人物たちの特徴を調べた研究結果を見つけます。その研究によれば、対象者のうちもっとも知能が高かったのは、19世紀イギリスの哲学者ジョン・スチュアート・ミルで、幼少時の推定知能指数は190でした。一方、対象者のうち幼少時の推定知能指数がもっとも低かった人々は100から110の間で、一般の人をわずかに上回る程度だったのです。

    ちなみに物理学者、数学者のアイザック・ニュートンは中間あたりに位置し、幼少期の推定知能指数は130。これは現在の子どもたちが優等生向けの「特別進学クラス」に選別されるのに”最低限”必要なIQなのだそうです。

    こうして全員の知能指数を割り出した結果、偉大な功績を収めた歴史上の人物たちは、一般の人々にくらべて知能が高いことがわかったものの、「功績の偉大さ」で比較した場合、「知能指数の高さはほとんど関係なかった」というのです。301名を「功績の偉大さ」で上位10名と下位10名にランク付けし、幼少期の平均知能指数を割り出してみたところ、前者が146で後者が143でした。この結果から、「知能」と「功績」の関連性はきわめて低かったと結論付けているのです。

    「動機の持続性」こそが「やり抜く力」の正体

    写真提供:honto運営『ホンシェルジュ』元記事より

    写真提供:「hontoビジネス書分析チーム」元記事より

    知能が理由ではないのだとしたら、偉大な人とふつうの人との決定的な違いは何なのでしょうか。彼女はここで、「動機の持続性」だと述べています。あるいは「情熱の持続性」と言い換えてもいいでしょう。すなわち、これが「やり抜く力」です。

    気をつけなくてはいけないのは、この「やり抜く力」というのは、「ものすごくがんばる」というのとは少し違うということです。本書でも「ものすごくがんばるだけではやり抜く力があるとはいえない。それだけでは不十分」、「好きになるだけでなく、愛し続けないといけない」と語っています。

    実は、私たちが天才と思っている人たちも同じようなことを言っています。米大リーグで数々の安打記録を打ち立てたイチロー選手は、著書で「ちいさいことを重ねることが、とんでもないところへ行くただひとつの道」と語っています。また、堀江貴文さんも『ゼロ』という著書のなかで「何事も成功するのに必要なのは才能じゃなく、1の積み重ねだ」という意味のことを述べています。

    実は「天才」すらも、コツコツと小さなことを一つひとつ積み重ねることで、「天才」たりえるのかもしれませんね。

    「大きな目標を持つ」ことで「やり抜く力」がつく

    このように書くと、「情熱の持続か…、それが一番難しいんだよな」という声が聞こえてきそうです。たしかに一時は熱心に取り組むことができても、なかなか持続しないのが仕事への情熱というものですよね。

    ではその「情熱の持続」はどうすれば身につくのか。それが読者の一番の興味となるところでしょう。それについても本書はいくつかヒントを与えてくれています。

    たとえば、「最後までやり抜く習慣をつける」ことです。スポーツの練習なら、昨日先生に怒られたからとか、競争に負けたからとか、朝練で早く起きるのがつらいからという理由でやめてはならない。こういう些細なことを完遂する経験から、やり抜く力が育まれていくのだというのです。些細なことをやり抜くことで、そのうち、大きな事柄も最後までやり抜くことができるようになるというわけです。

    「やり抜く力」をつける、もうひとつの方法を挙げるとすれば、「大きな目標を持つ」ということです。本の中でひとつの寓話が語られています。

    ある人がレンガ職人に「なにをしているんですか?」とたずねた。すると、三者三様の答えが返ってきた。

    1番目の職人は「レンガを積んでるんだよ」。
    2番目の職人は「教会をつくっているんだ」。
    3番目の職人は「歴史に残る大聖堂を造っているんだ」。
    「やり抜く力」がもっとも強い人はどの人でしょうか。そう、答えは3番目の職人です。著者は次のように述べます。

    「1番目のレンガ職人にとって、レンガ積みはたんなる仕事にすぎない。2番目の職人にとって、レンガ積みは「キャリア」。3番目の職人にとって、レンガ積みは「天職」を意味する。」

    「多くの人は3番目の職人のようになりたいと思いつつ、実際のところ、自分は1番目か2番目だと思っている」

    多くの人は、天職はどこかにあって、それを自分で見つけるものだと思っています。しかし実は、自分の見方しだいでいまの仕事が天職にもなるのです。そのためには自分の仕事を見つめ直して、「この仕事はどんなふうに人びととつながっているのだろう? 世の中の役に立っているのだろうか?」などと問いかけてみることだと、著者は述べています。とても示唆に富む至言だと思います。

    このように本書では「人生の成功は先天的な知能ではなく、やり抜く力が強いかどうかで決まる」→「やり抜く力とはいったいどんなものか」→「やり抜く力はどうやったら強化できるのか」という論理構成となっていて、なぜ「やり抜く力」が大事なのかが、大変わかりやすく書かれています。

    本書は、自分の人生を見つめ直したい人、仕事でいまいち殻が破り切れない人、部下をのびのびと成長させたい人。そして子どもをもつ親にも教育の指針として、役に立つ本なのでしょう。

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    本と電子書籍のハイブリッド書店「honto」による、注目の書籍を見つけるための分析チーム。 ビジネスパーソン向けの注目書籍を見つける本チームは、ビジネス書にとどまらず、社会課題、自然科学、人文科学、教養、スポーツ・芸術などの分野から、注目の書籍をご紹介します。 丸善・ジュンク堂も同グループであるため、この2書店の売れ筋(ランキング)から注目の書籍を見つけることも。小説などフィクションよりもノンフィクションを好むメンバーが揃っています。

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