いい仕事は、疲れの“保守”から。
自分メンテ研究室次々に生み出される新しい技術、コロナ禍で加速した働き方の多様化……否応なしに訪れる環境変化は、時にエンジニアをひどく疲れさせる。そこで本特集では、エンジニアが「いい仕事人生」を歩むための「心と体のメンテナンス法」を徹底研究。疲労から自分を保守する習慣をつけて、仕事のパフォーマンスを上げていこう
いい仕事は、疲れの“保守”から。
自分メンテ研究室次々に生み出される新しい技術、コロナ禍で加速した働き方の多様化……否応なしに訪れる環境変化は、時にエンジニアをひどく疲れさせる。そこで本特集では、エンジニアが「いい仕事人生」を歩むための「心と体のメンテナンス法」を徹底研究。疲労から自分を保守する習慣をつけて、仕事のパフォーマンスを上げていこう
6名のハイパフォーマーたちの事例と、3名の専門家による総論によってお届けしてきた本特集。
改めて、エンジニアがこれからも「いい仕事人生」を歩むために、心掛けておきたい「自分メンテ」のヒントをまとめた。
目次
はじめに「エンジニアの健康事情」や、心身疲労を保つための基礎知識を学ぶべく訪れたのは、ダウンロード数国内No.1のヘルスケア/フィットネスアプリ『FiNC』の運営を行うFiNC Technologies。
同社ではtoC向けアプリの他に、従業員の健康行動を支援するtoB向けクラウド型ソフト『FiNC for BUSINESS』を提供しており、ビジネスパーソンの健康事情にも精通している。
今回はCTOの篠塚史也さんに、ヘルスケアの専門家、そしてエンジニアの両視点から話を伺った。
行動を変えるのはとても大変なことで、個人の努力のみで達成するのは難しいと思います。 だからこそ、ぜひテクノロジーを活用してほしいですね。カレンダーに「この時間に食事を摂る」「この時間からはスマホに触らない」などのスケジュールを設定したり、スマートウォッチで一定時間ごとに立ち上がるためのアラートを鳴らしたり。通知通りにアクションをするだけの状態にしておくと習慣化しやすいですよ。
ヘルステックNo.1アプリ『FiNC』CTOに聞く、コンディション管理術>>「エンジニアの心身疲労」徹底解剖! ヘルステックNo.1アプリ『FiNC』CTOに聞く、コンディション管理術【専門家監修】
次に話を聞いたのは、Googleで人材開発を担当し、HRの専門家でもあるピョートル・フェリクス・グジバチさんと、約30社の産業医業務に従事してきたカリスマ産業医の大室正志さん。
グローバル企業を中心に数多のエンジニアの働き方を見てきたお二人に、それぞれの視点から語ってもらった。
実は僕、シリコンバレーで働くエンジニアを見ていて「疲れている人」ってあまり印象にないんですよ。でもこれって、彼らが働いてないっていうことではないんですね。シリコンバレーでは「ひたすら働くけど、しっかり自己管理もする」文化が根付いているんです。(中略)
そういうふうに体・感情・フォーカス・パーパスの自己管理をしやすい環境や文化が会社の中にあれば、エンジニアは多少働き過ぎたとしても、あまり疲弊しないはず。
>>シリコンバレーと日本、圧倒的な“疲労格差”はなぜ生まれる? 元GAFA人事と産業医に聞くエンジニアの疲れない働き方【ピョートル×大室正志】
ここからは、高いパフォーマンスを発揮するエンジニアの経験談から「心と体のコンディション」と「仕事のパフォーマンス」の相関関係とベストバランスを学んでいく。
一人目に登場したのは、16年以上にわたりグリーのCTOを務めている藤本真樹さんだ。42歳の彼が、CTOとしてパフォーマンスを発揮し続けるためには、どんなことを意識しているのだろうか?
熟練度があまり必要のない単純な仕事で比べると、20年前の自分よりも今の自分の方がパフォーマンスが劣ると思うんですよね。だから、経験や知見を活かしてより効率よく仕事をするか、いかに上手に頭を使って仕事をするかを考えなければいけないし、シンプルに言えば「長い経験や学びを活かさないと価値が出せない仕事をやる」という意識はしています。
【グリーCTO 藤本真樹】パフォーマンスは「上げるより、一定を出し続ける」40代、“自分の衰え”との向き合い方>>【グリーCTO 藤本真樹】パフォーマンスは「上げるより、一定を出し続ける」40代、“自分の衰え”との向き合い方
二人目は、キャディの小橋昭文さん。2歳からアメリカで過ごし、20代前半まではロッキード・マーティンやAppleでエンジニアとして超ハードワークをこなしていた小橋さん。キャディのCTO、そして31歳となった現在は、「ハイパフォーマンスを発揮するためのコンディション管理」についてどう考えているのだろうか。
自分のモチベーションを自家発電できることも重要です。特にコロナ禍の2年間は在宅勤務が増え、どうしても人との接点が減りましたから。
特に若い方の場合、何をすればいいのか分からなかったり、詰められてしゅんとなってしまったりと、迷走しやすいもの。「偉い人になりたい」「こんなものが作れるようになりたい」「家業を継ぐために勉強したい」など、目標を決めることが自家発電の第一歩になるのではないでしょうか。
>>【キャディCTO 小橋昭文】「成果を上げる」は正しい自己認識から。アメリカ育ち、Apple出身エンジニアのセルフコントロール術
三人目は、現在フリーランスエンジニアとして活躍する高木里穂さん(31歳)。高木さんは楽天やVASILY、ZOZOテクノロジーズ(現ZOZO)に勤めたのち、結婚を機にフリーランスに転身。現在はアメリカに移住し、スタートアップ3社で開発を担うとともに、プログラミングスクールのメンターも務めている。
精力的に働く彼女は、どのようにして自身のパフォーマンスとコンディションのバランスを保っているのだろうか?
「やりたくないこと」を一つの指標にしてみるのはおすすめかもしれません。やりたいことはパッと答えられなくても、やりたくないことは思い浮かぶという人は多いはず。そこから一つずつ精査してみると、見えてくるものがあるのではないでしょうか。あとは、「やりたい」と「やるべき」を混同しないことも大事だなと思っています。
「自分を褒めてモチベート」「“やりたい”で仕事を選ぶ」NY在住フリーランスエンジニア・高木里穂さんの、すり減らない働き方>>「自分を褒めてモチベート」「“やりたい”で仕事を選ぶ」NY在住フリーランスエンジニア・高木里穂さんの、すり減らない働き方
四人目は、1980年代にゲームプログラマーとしてのキャリアをスタートさせ、56歳となった2022年現在もスマホゲームの新規タイトル制作にいそしみ、現場でコードを書き続けている吉田明広さん。
彼のように年齢を重ねてもプレーヤーとして最前線で活躍するためには、常に高い成果を出し続ける必要があるはずだ。
明け方まで仕事をした後に家に帰ってからゲームをして、そのまま寝ずに会社に行く、というような、全然寝ない生活をしていた時期もありました。今では絶対にできないですけどね(笑)
でも、若いうちにそういう生活をすること自体はいいけど、それによってコンディションに影響が出てきたり、人に迷惑をかけ始めるようになったりしたら、調整した方がいいです。
>>「どうにもならないときは諦めも大事」ゲームプログラマー歴34年のミクシィ吉田さんに聞く、“外的要因”に振り回されない集中力の保ち方
五人目は、自ら経営するソフトイーサの代表取締役、筑波大学産学連携准教授、IPA技術研究室長、NTT東日本特殊局員と、4足のわらじを履くプログラマー・登大遊さんだ。
優れたアウトプットを出し続ける登さんだが、「パフォーマンスと自身のコンディションは、基本的に常に一定」なのだという。登さんはなぜ、ブレずに高いパフォーマンスを出し続けることができるのか。
そもそも私にとって人生の一番の目標は、コンピュータやインターネットなどサイバー技術の分野で、日本から世界の進化に役立つ大きな成果を出すことです。(中略)
そのような目的を実現するためには、一度や二度の失敗でいちいちめげていられませんし、本気でやらなければ達成が難しいからこそ、日々の小さな浮き沈みにはとらわれていられないと考えられます。
>>【登大遊】天才エンジニアの安寧を求めない生き方「日本で“大義”を持って働く選択は有利」
最後に登場したのは、26歳でIT会社ドリグロを仲間と起業した西真央さん。企業の代表としても活躍する彼女は、Twitter上では「西まりも」として、Flutterアプリ開発の情報を届けるインフルエンサーでもある。
経営者として、いちエンジニアとしても注目を集める彼女の「気持ちを上げていく」セルフコントロール術とは。
自分の心が致命的なほど疲れ切ってしまう前に、休む習慣を取り入れてしまうようにしているんです。多めに休んでおくに越したことはない、という考えですね。
私自身、放っておくといつまでも仕事のことを考えてしまう性格。追い立てられているからというわけではなく、仕事が楽しいのでずっと考えちゃうんですよ。
けれど、いくら仕事が好きでも、それをずっとやっているとどこかでエネルギーが切れてしまいます。それに、仕事って根詰めて考え続ければ答えが出てくるものでもない。その事実にもここ数年で気付くことができました。
>>Flutter開発・西まりもが週休3日の会社をつくった超シンプルな理由「仕事好きなエンジニアほど意識的に休む、を前提に」
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