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【キャディCTO 小橋昭文】「成果を上げる」は正しい自己認識から。アメリカ育ち、Apple出身エンジニアのセルフコントロール術

働き方

グラフで見る「パフォーマンスとコンディション」の関係性

“心・技・体”ベストバランス

エンジニアがいい仕事人生を歩むために、「心と体のコンディション」と「仕事のパフォーマンス」にはどんな相関関係があるのだろう? 高いパフォーマンスを発揮するエンジニアの経験談から「心・技術・体」のベストバランスを学ぶ!

前回のグリー藤本真樹さんに続き、今回はキャディの小橋昭文さんにフォーカス。

2歳からアメリカで過ごし、20代前半まではロッキード・マーティンやAppleでエンジニアとして超ハードワークをこなしていた小橋さん。

キャディのCTO、そして31歳となった現在は、「ハイパフォーマンスを発揮するためのコンディション管理」についてどう考えているのだろうか。

キャディ株式会社 最高技術責任者 小橋昭文さん

キャディ株式会社 最高技術責任者
小橋昭文さん

1990年生まれ。スタンフォード大学・大学院で電子工学を専攻。在学中から航空機や軍事機器の開発製造会社ロッキード・マーティン・米国本社で勤務。ソフトウェアエンジニアとして大量の衛星データの解析に従事。米クアルコムにて半導体セキュリティ強化に従事した後、Apple米国本社で電池の持続性改善や、『AirPods』のセンサー部分の開発をリード。2017年11月にキャディの創業に参画し、現職に至る

パフォーマンスは右肩上がり、コンディションは転機の後にやや下がる

キャディ株式会社 最高技術責任者 小橋昭文さん

仕事のパフォーマンス(赤)と、心身のコンディション(水色)をグラフ化してもらった

――小橋さんの「パフォーマンスとコンディションの変化」のグラフを見ると、パフォーマンスは基本的に右肩上がりで、コンディションには波がありますね。

体力とマインドを総合的に見た状態をコンディションとすると、私はまだ30代に入ったばかりということもあり、常に高い状態ではありますね。きっと年齢を重ねるごとに、「1回の徹夜で1週間ダウンする」みたいなことが起こりやすくなるんだと思います。

転機の後にコンディションが少し下がるのは、転職や起業をほぼピークの状態でしているから。新しい環境に入った時はテンションが高いですが、その後順応するまでの期間は悩むことも増えるので若干低くなり、その後また上がっていくイメージです。

かたや「パフォーマンス=事業インパクト」と考えると、常に成長していますし、CTOの今が一番高いのは当然ですよね。

また、若いうちは能力のなさを体力で補っていましたけど、年齢を重ね、経験を積むうちに、頭脳勝負で成果が出せるようにもなりました。今は体力を抑えることも、忙しい時に体力と能力を掛け合わせてさらにパフォーマンスを上げることもできる。

そういう意味でも、パフォーマンスは右肩上がりですね。

――2017年にキャディを起業して、そこからの変動はありますか?

事業フェーズが変わるごとに、多少の波はあります。転職や起業の後にパフォーマンスが下がるのと同じ理由で、新しいフェーズを迎えたタイミングでパフォーマンスが落ちやすいというのはありますね。

例えば、創業期は会社が生きるか死ぬかの状況で、かつ技術者は私一人しかいません。つまり私が手を動かすことがパフォーマンスに直結し、止まったら全てが終わる。

一方で約50人の開発メンバーがいる今は、私が手を動かすよりも、みんなの生産性が上がることの方が事業の成果につながります。必然的にパソコンと向き合う時間よりも、人に向き合う時間が増えていく。そうなると、自然と働き方も変わるじゃないですか。

キャディ株式会社 最高技術責任者 小橋昭文さん

振り返ると、開発メンバーが5人を超えたあたりから「どうやってチームワークができるか」の整理が必要になったと思います。さらに10〜15人になると複数チームができ、チーム内に加えてチーム間の連携が出てくる。15〜20人で新しい組織ができ、企業文化や組織規格、評価制度を整理するなど、マネジメントの重要性が増していったなと。

それぞれのフェーズで必要なスキルは全く異なるので、それに応じて学び、試行錯誤しながら慣れなければいけません。基本的には常にパフォーマンスを出せていたと思いますが、新たなフェーズに適応するまでの期間は多少落ちるかなと思います。

パフォーマンスを上げるポイントは「事実の認識」と「自家発電」

――小橋さんにとって、パフォーマンスを上げるための自己管理とは何ですか?

良くも悪くも、「実態と向き合うこと」だと思います。

例えば在宅勤務でパフォーマンスが落ちているのであれば、まずは「パフォーマンスが下がっている」事実を自分で認識すること。

原因を考えた時に、環境を改善して解決することもあれば、一日中子どもが隣にいて集中できないなど、どうにもできない事情もあるでしょう。それでも現状を冷静に捉え、今の状況でどこまでパフォーマンスが出せるのか、見極めることが重要です。

――それができると何がいいのでしょう?

まずは人から「できていない」と言われた時にショックを受けません。言い訳にしてしまうのはよくないですが、状況が自己認識できていれば「改善できるか」「そのために何が必要か」は自分で判断できる。マネジメントから解決策が提案しやすくなるメリットもあります。

特に入社や異動で新しい環境に入るタイミングは注意が必要です。私がいつも新入社員に言っているのは「最初の数週間で圧倒的なアウトプットは求めていない」ということ。

なぜならば、絶対にキャッチアップが必要だからです。新しい人や技術など、慣れるのには当然時間がかかる。別の場所でどれだけ実績をあげていようと、キャッチアップを疎かにすると、後でしわ寄せが来ると考えています。

逆に、「今はキャッチアップの期間だ」と認識できれば、できないことを「できない」と認めやすくなりますよね。今の自分に必要なことを考え、情報を取りに行くこともしやすくなるでしょう。

個人、組織ともにそういう共通認識を持つことが、お互いにとってストレスのないオンボーディングにつながると思っています。組織も部署やプロジェクトが変わることに対して、スイッチングコストがかかることを認識しなければいけません。

キャディ株式会社 最高技術責任者 小橋昭文さん

――この場合の「できない」はネガティブな意味ではなく、環境が変わったから当たり前。ここでも「実態と向き合う」ことが大切だと。

一方で「体調が悪い」「持病がある」「気持ちが上下しやすい」など、心身のコンディションの問題もあります。忙しさから睡眠不足におちいるのは宿命ですしね。

ただ、それもやはり認識することだと思うんですよ。

お腹が弱いのであれば、その事実をまず理解する。お腹を壊さない人に比べて働く時間は短くなるので、パフォーマンスは相対的に低いと言えるかもしれない。それなら勤務時間が減る分をどうやってカバーするのか。

厳密にゼロサムで考える必要はありませんが、頭脳勝負で考える必要はあるでしょうね。

――自分の現状を認識すれば、その中での戦い方はおのずと限られてきそうですね。

あとは、自分のモチベーションを自家発電できることも重要です。特にコロナ禍の2年間は在宅勤務が増え、どうしても人との接点が減りましたから。

特に若い方の場合、何をすればいいのか分からなかったり、詰められてしゅんとなってしまったりと、迷走しやすいもの。「偉い人になりたい」「こんなものが作れるようになりたい」「家業を継ぐために勉強したい」など、目標を決めることが自家発電の第一歩になるのではないでしょうか。

その上で、マネジャーがメンバーを理解する必要があると思っています。その仕事が「会社のためにどう役立つのか」と「本人のためにどう役立つのか」の両方を話すよう、キャディでは心掛けていますね。

もちろん会社としてやってほしいことと、個人がやりたいことが完全に重なるわけではありません。それでも本人の意思にその仕事がどの程度沿っているのか、共通認識を持つことが重要だと思います。

パフォーマンスが下がろうと「若い頃は超仕事する」でもいい

――小橋さんは体調管理のためにどのようなことをしていますか?

極力自炊するようにしています。というのも、私は外食をすると体調が悪くなりやすいんですよ。

あとは運動。基本的にはランニングで、体力がない時は歩いています。10キロくらいは走ったり歩いたりしますね。最近はちょっとサボり気味ですけど、本当に忙しい時は割と運動していました。

――忙しい時の方が運動するんですか? 一般的には忙しくなると運動はおろそかになる気が……。

体を動かすことはストレス発散になるし、寝付きも良くなるじゃないですか。悩んでいると同じことをぐるぐる考えて寝付けなかったりするので、疲れていても睡眠の質を上げるために意識的に運動をしています。

――そういった体調管理はいつ頃から意識しているのでしょう?

十代の頃からです。周りにスポーツをやっている人が多かったので、流れで私もやるようになりました。意識的に始めたことではないですが、特に若手の頃は労働時間や自分の負荷を上げやすいので、より重要かもしれません。

同時に、マネジャーが「なぜ時間内に終わらないのか」を追求することも時には必要なのだろうと思います。私も時々「これ以上の残業は許しません」というスタンスを取ることがありますね。

――やはり息抜きは必要ですか?

そう思います。いくらプログラミングが楽しくても、ずっとやっていれば目が疲れたり、何を書いているか分からなくなってきたりすることってあるじゃないですか。いったん一歩下がって一服した方が結局パフォーマンスは上がりますよね。

あとは単純に、仕事は基本的にストレスがかかります。ストレスが溜まっていると自己認識することも、ストレスを体力的にも精神的にも発散することも、どちらも大切です。

そしてうまく息抜きをするにも、ストレスを自覚するにも、自分が集中できる状況やストレスを感じる環境などを知ることがポイントになります。

例えば私の場合、就業中でも通知は全部オフにしていて。集中力が途切れるのがストレスなので、インシデントは携帯が鳴るように設定し、他のメッセージは自分でSlackを見に行くようにしています。その分反応が遅くなって、社内のメンバーから嫌がられている面もあるのですが(笑)

キャディ株式会社 最高技術責任者 小橋昭文さん

「PCは二台持っていて、仕事とプライベートで使い分けています。プライベートでPCを使うときに仕事を思い出さないよう、完全にスイッチしていますね」(小橋さん)

――ここでも「事実の認識」がポイントですね。

一方で、「若い頃はとにかく仕事をする」でもいいと思います。パフォーマンスはどんどん下がりますが、勤務時間8時間と16時間では、やはり後者の方が学びは多いはず。私も20代の頃は1日4時間くらいの睡眠で仕事をしていた時期があり、めちゃくちゃ寝不足でした。

1日のどのくらいの時間をキャリアに使うかで、当然その後は変わってきます。重要なのは「自分の時間を何のために使っているのか」を理解すること。

人にはそれぞれ事情や優先順位があります。「超多忙であれ」と言い、仕事に膨大な時間を割いているイーロン・マスクの家庭状況はそれほど良くなさそうですが、それをどう捉えるかは個人の判断ということです(笑)

――小橋さんはアメリカ生活が長いですが、日本とアメリカで自己管理に違いはありますか?

日本企業はほとんど知らないので比較は難しいですし、アメリカも地域によって異なる前提ですが、休むことに対して、日本では後ろめたさがあるような気がします。「休ませていただきます」と言う人が多いじゃないですか。

――たしかに「お休みをいただきます。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」みたいなやりとりはよく目にしますね。

迷惑をかけていることへの気遣いがあるように感じていて、だからこそ日本企業には結束感があるのかなとは思いますが、休む権利はあるのになとも思ってしまいますね。

それに「周りのために自分を犠牲にしても、結局周りのためにはならない」というのが私の主張です。

仮にパフォーマンスが低い中で家庭をないがしろにして無理をしたとしても、家庭状況が悪化して離婚につながり、精神的に消耗してさらにパフォーマンスが下がり……となるのであれば、さっさと休んだ方がいい。

緊急事態や繁忙期は仕方がないけど、家庭や人間関係など、しわ寄せがいく前に防げることは防ぎましょうね、というのが私の考え方です。

――改めて、コンディション管理をおろそかにする弊害は何だと思いますか?

短期目線になることじゃないでしょうか。目の前のことを優先するあまり、長期的に物事を見にくくなりますよね。

船で例えると、長期的な目標は北に行くことだけど、東に寄り道しないといけない場面もある。その時に東に向かいつつも北を目指すことにつながっていればいいですけど、短期的な「寄り道」にとらわれて東に進んでしまったら、目標の北には永遠にたどり着きませんから。

取材・文/天野夏海 撮影/野村雄治 編集/河西ことみ(編集部)

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