DX到来でエンジニア採用にも変化が。東京電力グループが「2022年は電力業界の変革元年」と語る理由
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今、エネルギー業界に注目が集まっている。世界情勢の変化により原油をはじめとする資源価格が高騰。一般家庭の電気料金や物価高にも波及し、連日ニュースに取り上げられている。昨冬は電力需給の逼迫も話題になった。
さらに電力自由化やDXが進んだことで、電力業界もこれまでにない変化の時代を迎えている。
実際、国内の電力供給を支える現場では、技術者たちが取り扱う領域が広がり、それに対応するための採用ニーズも高まっている。
激動の電力業界の現状と、エンジニア採用の変化について、業界最大手の東京電力のシステム開発・運営を担うグループ会社、テプコシステムズの新泰典さんと藤田健介さんに詳しく話を聞いた。
DXが進む電力業界。目指すは「国際情勢に左右されない」システム
――昨今、電力業界はこれまでになく注目を集めていますが、ここ数年で業界に特に大きな影響を与えたトピックスは何だと思いますか?
新:直近のことで言うと、「電力自由化」でしょう。これまでも段階的に自由化の領域が広げられてきましたが、2016年4月についに一般のご家庭も電力会社を自由に選べることになりました。
その流れの最終段階として、2020年4月には発電部門と送配電部門を法的に分離することが義務付けられたため、少し前までは当社でもそれに関係する案件を扱うことが多かったですね。
電力自由化により、電力業界はこれまでとは全く違う競争環境にさらされることになりました。そこでわれわれも危機感を持ちながら、取り組んでいるところです。
2018年に経済産業省が「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」を発表し、企業がデジタル化を推進する動きが活発になっていますが、これは電力業界でも同様。データの収集・活用などにITを導入する流れが一気に進みました。
――電力自由化により、これまで以上に競合他社も増え、業界全体のDXも進んだ、と。
新:その通りです。また2022年4月には、東京電力が長期的な電力の安定供給とカーボンニュートラルの両立に向けた事業構造の変革を発表しました。
直近では、ウクライナ危機や災害の影響などを受け、さまざまな資源価格が高騰していることが話題に挙がりますよね。
東京電力では、化石燃料への依存度を下げ、ゼロエミッション火力や水力などにエネルギー源を分散化していくことで、こうした国際情勢に左右されにくい供給体制を整備しようとしているのです。
この取り組みはもちろん環境保全にも寄与するもの。グループ会社として、私たちもこの改革に全力で貢献したいと思っています。
――そうした業界の変化は、皆さんの仕事にどのような影響を与えているのでしょうか。
新:電力のDX化という文脈では、ご家庭に設置されているスマートメーター(電力量計)から、随時データを収集し処理する機能が新たに加わりました。これまでは検針日毎に1日1回データを取得していたのですが、直近では全てのご家庭を対象に30分に一回更新できるように精度を高めています。
自由化に伴って、その膨大なデータを他の電力会社にも供給しなければいけなくなったので、当社ではその基盤づくりやデータの取り扱いに関するシステムなどを担当するようになりました。
カーボンニュートラルに関してはまだ実験段階ですが、地熱や太陽光を利用して電力を地産地消するという構想があります。
これは、都道府県単位よりももっと小さい範囲で電力を融通する仕組み。
ヒートポンプや蓄電池などさまざまな手段を検討中で、実現すれば環境保全はもちろん、防災にも役立ちます。ここでもICT技術を駆使したシステム化やデータ分析が要となってくるので、当社の技術者たちが実現に向けて活躍してくれるでしょう。
中途採用増による“良い化学反応”にも期待
――業界全体の変化は、エンジニア採用にどんな影響をもたらしたのでしょうか。
新:業界全体でエンジニアの中途採用ニーズが高まっていると感じます。実際に当社でも、これまでは新卒採用中心の体制でしたが、今年は部署によっては中途採用人数を昨年度の倍近くに増やす方針です。
藤田:当社はこれまで東京電力と一体となって業務に取り組んできたため、常に安定した量の仕事がありました。その安定を求めて入社してくれる新卒が多かったんですよね。
ただ近年、先ほどお話ししたような電力業界の変化に伴い、東京電力側もこれまで手をつけてこなかった領域に挑戦するようになりました。
DXが不可欠な事業も多いですから、当社もこれまでの体制ではサポートしきれないわけです。そのためここ数年で、「中途も新卒もマストで大幅に増やす」という流れに一気に変わりました。
数年前までは中途社員自体が少なかったので、これから中途比率が増えることによる良い化学反応が起きることを期待しています。
――藤田さんご自身も、当時はめずらしかった中途社員として入社されたんですよね。SES企業から転職されて、電力業界で働くやりがいをどのように感じていますか?
藤田:私が入社して一番強く感じたのは、想像していたよりもずっと大規模な案件に携われるということです。電力は人々の生活に不可欠な分野ですし、東京電力グループだとなおさら影響範囲も広いですから。
SIerなどでも大きい仕事はあると思うのですが、大規模な案件の一部を担当している例が多いですよね。でも、私たちは東京電力からのビッグプロジェクトを直接受注するので、その比ではないと感じています。
エンジニアといえばモノづくりというイメージが強いと思いますが、当社ではモノづくりにとどまらず「プロジェクト全体を動かしている」感覚が強い。そこが面白さだと思いますよ。
――特に印象的だった大規模案件はありますか?
藤田:電力自由化に伴い、2020年4月までに東京電力の託送業務(※東京電力が所有する送配電網を、発電事業者や他の電力小売り事業者が利用すること)を刷新するプロジェクトのPMになり、社内外600人超のメンバーをまとめることになりました。
具体的には、自由化で電力業界に参入してきた企業さまに、その会社と契約しているご家庭の電気使用量のデータを収集して分析し、提供するシステムと仕組みをつくるプロジェクトです。
東京電力の管轄地域にはおよそ3千万軒のご家庭があります。3千万軒に設置されているスマートメーターから、30分単位で電力値のデータが飛んでくるので、その膨大なデータを処理するんですよ。
実は東京電力はそれまでにも一度、他社にシステムの刷新を依頼していたのですが、電気使用量データのお知らせ遅延などシステムの不具合が発生し、多くの企業さまや需要家の方々にご迷惑をおかけしてしまったという経緯がありました。
当然、二度目の失敗は許されません。そうした状況で担ったプロジェクトでした。
新:500人以上の規模のプロジェクトは、これまでも数年に一度はあるものでした。ですが藤田が担当したのは、国から「2020年の4月まで」と期限が決められているものです。短い期間でこれだけ大規模な案件は会社としても初めてだったと思います。
――絶対に失敗できない、後ろ倒しも許されない中で、それだけの人数をまとめるのは非常に難易度が高い仕事ですよね。
藤田:正直なところ、ものすごいプレッシャーは感じていました。でも、この業務にやりがいを感じてくれるメンバーが周りにもいたので、乗り越えられましたね。今振り返ると、このプロジェクトを経験できてよかったです。
「2022年はニューフロンティア元年」求められるのは自分から動く姿勢
――電力業界全体も、テプコシステムズにとっても、今がまさに変革の過渡期ですね。
藤田:そうですね。当社でも今年4月に、今後10年を見据えて社内の改革を主導するために「ニューフロンティア推進室」という部署が発足し、私は副室長を担当することになりました。
全社的に今年を「ニューフロンティア元年」とし、さまざまな変革をしていくスタートラインに位置づけています。
例えば東京電力からの案件を、システム開発よりもさらに前の戦略を立てる段階から関わっていきたいと考えています。
そして東京電力以外の企業との取引も増やしていきたいですね。これは東電から独立するという意味ではなく、当社として「自立したビジネスモデル」を確立するためです。
――10年後を見据えた改革が始まったばかり。そこにはどのようなエンジニアの活躍が求められますか?
新:自然とスピード感を求められる仕事が増えてきていますから、新しいことに目を向け、自分で考えて動いていく方が合っているのではないかと思います。できるできないは別として、まずはその姿勢がある方と一緒に改革していきたい。
藤田のような、変革を好んでガツガツ行動してくれるエンジニアの方をもっとたくさん仲間にしていきたいですね。
藤田:新さんみたいに、チームメンバーの意見も尊重して後押ししてくれる上司がいるからこそですよ!
当社のように、人々の生活を支える大規模なプロジェクトに参加でき、事業を動かすという実感は他ではなかなか得られない経験のはず。今後も業界変化の波を乗りこなしながら、「これからのテプコシステムズ」をつくっていきたいですね。
>>株式会社テプコシステムズ【東京電力グループ】の転職・求人情報
取材・文/まゆ 撮影/吉永和久 編集/大室倫子
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