全社でAWS知識格差をなくすには? マクロミルCCoE組織立ち上げリーダーに聞く“初めの一歩”の踏み出し方
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AWSなどのクラウドサービスは、いまやなくてはならないインフラだが、その「活用」となると課題を抱えている企業も多い。続々と発表される新機能やアップデートをキャッチアップし、全社で活用法を統一するのは至難の業だ。
そこで近年、注目を集めるようになったのが、企業内のクラウド活用を推進する組織、CCoE(Cloud Center of Excellence)。
DNPやNTTドコモ、KDDIのほか、マーケティング・リサーチ企業のマクロミルも、2020年にCCoE組織の立ち上げを発表。社内エンジニアのクラウド活用のレベル引き上げを狙う。
同社CCoEチームのリーダーに抜擢された岡澤哲也さんは、「社内すべてのエンジニアがAWSを使いこなし、自走できる状態をつくりたい。目標はこの組織を、いちはやく解散すること」だと話す。
クラウド利用のレベルを全社で引き上げていくために、まずは何から取り組むべきなのか。岡澤さんに、これまでのベストプラクティスを聞いた。
コスト高騰、サービスの質低下のリスクも? エンジニアの「AWS知識格差」が課題に
オンプレミスで運用していたシステムをクラウドへ移行する動きは、ますます加速している。マクロミルでも、2014年頃からAWSの運用を本格的に開始し、現在ではほぼすべてのシステムがAWS上にある。
ただ、移行を進めていく中で浮かび上がってきた問題があったと岡澤さんは言う。
「マクロミルのシステムはクラウド移行により一部を除きほとんどAWS上で動いています。そのため、当社のエンジニアにとってAWSの知識は必須と言える状況です。
しかし、社内には数多くのシステムがあり、それぞれにひもづくAWSもおのずと設計方針や構築方法が違い、使われ方もさまざまでした。例えば、オンプレからクラウドへストレートコンバージョンで移行したものもあったり、一からシステムを構築したものもあったり。
結果、何が起こったかというとAWSを上手く活用できている部署とそうでない部署、AWSに詳しいエンジニア、そうでないエンジニア……と情報や知識にデコボコができてしまいました」
また、クラウドにすればシステムの運用コストは安くなると思われがちだが、実は「一概にそうとは言えない」と岡澤さん。
クラウドならではの思想や設計方法をよく理解せずにシステムを作ってしまうと、むしろ高くついてしまうばかりか、サービスの質に悪影響を与えることもある。
マクロミルにおいても、AWSへの移行が進む中で、クラウドにくわしいエンジニアや経営層からはそれらの問題点を指摘する声が上がっていた。
AWSは、コンピューティング・ストレージ・データベースをはじめとするさまざまなサービスから構成され、年間約2000もの新機能が追加されている。それらを網羅し、全社に共有するのは、いかなる開発組織においても至難の業だ。
「そこで、AWS利用にまつわる相談窓口や基準・ルール作り、各部門に点在する知見やノウハウを全社に展開するために、AWSにくわしく関心の高い有志を集めてCCoE組織を立ち上げました。2020年からスモールスタートし、2021年秋から本格的に活動を開始しています」
AWS格差解消のための第一歩は、エンジニアが欲しい情報に効率的にたどり着ける“道しるべ”づくり
CCoE組織の活動は、手探り状態からのスタートだった。そんな中、岡澤さんたちが最初の一歩として着手したのが、エンジニア向けの学習支援プログラムの作成だ。
「CCoE組織が掲げるゴールを達成するためには、やらなければいけないことは山積みでしたが、最初に取り組むべきは、エンジニアの教育だと考えました。
AWS公式の教育コンテンツもあるのですが、いかんせん内容が膨大で日本語も複雑なので、いざAWSについて勉強しようと思っても、どこから手を付けていいのか分からず立ち止まってしまうエンジニアも多いと感じていたので。
そこで手始めに作ったのが、『Macromill AWS Training Trail』というAWSクラウド学習支援プログラム。『参考になるホワイトペーパーはここにあるよ』『まずはこの動画コンテンツを見よう』という感じで、AWS初心者のエンジニアでも、『欲しい情報』に効率的にたどり着けるような道しるべを作って社内に展開しました。
社内技術の標準化を実現するためには、すべてのエンジニアが「学びたい時にスムーズに学べる体制」を作ることが大切だと岡澤さんは言う。
「『Macromill AWS Training Trail』を作成した後も、社内向けにAWS学習を促進するための講座を開催するなど、社員が自発的にAWSについて学びたくなるカルチャーづくりに注力しています。
CCoEチームの活動を開始してから、『部署の人からAWSについて質問されることが増えた』と現場レベルで情報交換されるようになったり、『AWS関連の資格を取得した』と報告してくれる社員も増え始めたり、少しずつ効果が出始めていると思います」
第二幕は、自走できるエンジニアが育つカルチャーの醸成
CCoEチームを立ち上げてから約2年がたった今、AWS学習のための環境は整いつつあるが、「全社で『AWSを使いこなす自走力が備わった』と言える状態まで、まだまだ先は長い」と、岡澤さんは言う。
それは自らAWSを学び使いこなすだけでなく、システムに対する考え方をクラウドを前提とした開発思想にフィットさせなければならないからだ。
「クラウドへの移行で大きいのは、単にシステム設計の仕方が違うことだけでなく、仕事へのアプローチや文化そのものが変わってしまうことにもあります。
例えば、オンプレミスのシステムであれば、自前の設備が壊れないように細心の注意を払ってシステムを構築しますが、クラウドにおいては『障害が起きる可能性を前提として、起きたときにいかにサービスを止めないかを重視した設計』が重視されるようになります。
意識やカルチャーといった形のないものにアプロ―チし、組織をアップデートさせていくプロセスは、CCoEという新しい組織だからこそ味わえる醍醐味で、私自身のモチベーションにもなっています」
CCoEチームが目指すのは「解散」
CCoEとしての役割は教育だけでなく、設計のレビューや社内の相談窓口としても機能している。岡澤さんは「まだ道半ば」と前置きしながらも、AWSを使った設計の指針を組み立てているところだという。
その成果もあり、マクロミルはAWSの先進的な取り組みをしている企業として、CCoEに所属しているチームメンバーがイベントに登壇し、事例紹介を行うこともある。
例えば、リサーチデータの二次利用や分析基盤を構築するにあたって、AWS Lake Formationというデータレイクの新サービスを利用したシステムを構築。プレリリースの段階から設計を始めて、日本でもいち早く新サービスを活用した。
ただ、岡澤さんは「CCoEというチーム一つで、組織全体をすぐに変えられるとは思っていない」ともいう。
マクロミルに在籍するエンジニアが、チームや自身にとって必要な知識を自力で調べて、業務に活用できるようになるような体制――いわば「自走するエンジニア文化」をつくっていくことがCCoEの役割だと考えているからだ。
岡澤さんは「最終的なゴールは、CCoEの解散です」と言い切る。
「社内のすべてのエンジニアがAWSを使いこなし、各システムやチームが自走状態になること。この状態まで到達できれば、CCoEの存在意義はほぼなくなりますから」
昨今のクラウド技術の進歩は速く、エンジニアは新しいサービスを組み合わせて、より生産性の高い開発をすることが求められている。
タフな開発現場でも、自ら知識を増やすことができ、開発現場で迷うことが少なくなれば、「エンジニアリングは楽しめるはず」だと岡澤さんは言う。
「CCoEとしては今後もエンジニアに対し、AWS活用に向けての一歩を踏み出すための入口を拡充していく予定です。
また、マクロミルでは今回お話ししたクラウド活用に限らず、全社的にテクノロジードリブンで、テクノロジーR&D活動なども積極的に行っている会社です。技術ファーストな思想や仲間、環境を武器に、先進的な取り組みには果敢に挑戦していきたいです」
取材・文/高田秀樹 編集/栗原千明、玉城智子(ともに編集部) 撮影/桑原美樹
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