本連載では、圓窓代表・澤円氏が、エンジニアとして“楽しい未来”を築いていくための秘訣をTech分野のニュースとともにお届けしていきます
エンジニアの人材流出に対して経営者は何をする? 転職のメカニズムと共に考える【連載:澤円】
株式会社圓窓 代表取締役
澤 円(@madoka510)
立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、日本マイクロソフトに転職、2020年8月に退職し、現在に至る。プレゼンテーションに関する講演多数。琉球大学客員教授。数多くのベンチャー企業の顧問を務める。
著書:『外資系エリートのシンプルな伝え方』(中経出版)/『伝説マネジャーの 世界№1プレゼン術』(ダイヤモンド社)/『あたりまえを疑え。―自己実現できる働き方のヒントー』(セブン&アイ出版)/『未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」 』(プレジデント社) Voicyアカウント:澤円の深夜の福音ラジオ オンラインサロン:自分コンテンツ化 プロジェクトルーム
皆さんこんにちは、澤です。
今回のテーマは、「エンジニアの転職とマネジメントの関係」です。
最近、こんな記事が話題になりましたね。
>>「ITエンジニアは転職した方が収入が増えるバグ」、数字からも明らかに 生涯年収に1000万円の差
これ、「ITエンジニアは転職した方が収入が増えるバグ」って表現されていますが、大きなバグを抱えているのは、人材が流出してしまう企業側の評価制度とマネジメント能力ではなかろうかと思っています。
転職のメカニズムを考える
まず、転職のメカニズムについて考えてみましょう。
「年収アップのために転職をする」というのは多くの人の転職動機でしょう。
しかし、「転職すれば必ず年収が上がる」かといえば、そんなことはありませんよね。
「外部から来たから必ず今の年収よりも高く払いますね」と採用側が約束しなくちゃいけない理由は何もありません。
「期待値に対する妥当な金額」を提示したら、それが今の年収を上回るパターンが多いかも、ってだけの話です。
つまりは「その人の値段」が今いる会社と転職先の会社で差があるということになります。
転職先で期待通りの活躍をしたのであれば、元いた会社は「安く買い叩いていた」もしくは「活躍できる環境が提供されていなかった」ということになります。
「安く買い叩いていた」というのは「人材マーケットに照らし合わせてフェアな給与設定をしていなかった」という可能性があります。
「いやいや、うちの会社の規模ならこれが妥当なんですよ」という経営者や人事担当者がいるのも、もちろん納得です。
ただ、従業員が「自分はもっと高い給料で雇われるだけの能力がある」と知っている場合で、かつ転職を思いとどまってもらうためには、条件を変えるしかないでしょう。
一番直接的なソリューションは、給料を上げることです。
とはいえ、給与テーブルの問題、職位の定義、他の社員とのバランスなどを考えると、そう簡単にいかないかもしれません。
となれば、「よりよい環境を提供する」という方法があります。
「あなたは、能力が高いので、給与そのままで副業をもっとできるように働き方の柔軟性を提供します」という方法です。
これは、今の時流にも乗っていますし、かなり分かりやすいアプローチではなかろうかと思います。
というのも、人材流出を防ぐだけではなく、今後の会社経営で不可欠なものが手に入るからです。
今後、会社経営者が求めるのは「外の物差し」
会社経営で今後絶対に必要なものの一つが「外の物差しを持っている人材の獲得」です。
終身雇用がしっかりと機能していた時代であれば、他の会社や業界のことなど知らなくても、自社内だけのスペシャリストになれば給料も年々増加していくことが約束されていました。
しかし、終身雇用が崩れた今、従業員は転職することに精神的ハードルを感じなくなってきており、ましてやエンジニアであれば他社でも通用する汎用スキルを持っている場合が多いでしょう。
でも、優秀なエンジニアを獲得するには、給与の問題がこれまたクローズアップされてきます。
「外から取ると高いから、今いる人に安く頑張ってもらわなくちゃ」と考える経営者は、どんどんエンジニアからそっぽを向かれる時代です。
そんな時に役に立つ考え方が「転職までしなくても外で活躍してもいいよ」という柔軟性を提供することです。
どうせ繋ぎ止めることが難しいなら、「ゆるく繋がっておいてもらう」という考え方にシフトすれば、「給料はそのままで、かつ外の世界を知って人材として成長してもらう」という、一石二鳥な結果が得られるかもしれないのです。
「外の世界を知ってしまったら、それこそ出ていってしまうのではないか」と心配する人もいるでしょう。
でも、「外の世界を知る手段」がこれだけ満ち溢れている今、それを止めることは不可能です。
実際、この記事も誰でもスマホで見られるわけですし、情報統制でどうにかなる世界ではないのです。
であれば、自由を提供する代わりに会社に残ってもらうという契約にした方が、経営判断としては合理的ではないでしょうか。
歴史ある大企業の経営者は、多くの場合転職経験がありません。
また、外の世界を知る手段もかなり限られている場合が多いようです。
経営者同士の情報交換はしているでしょうけれど、これは抽象度が高すぎたりしてそれほど役に立っていない印象です。
ボクは今多くの会社で顧問などさせてもらっていますが、「外から見て自分の会社はどう見えているのか」という質問を必ずと言っていいほど投げかけられます。
それだけ、外の物差しを持つ経営者の方々が少ないということでしょう。
ちなみに、日本の経営者の多くは超優秀です。
なので、ちょっとした柔軟性を持てば、優秀な人材の流出を防ぎつつ、しっかりとした経営判断をするための材料をさらに多く手にすることができると思います。
さて、今回はどちらかといえば経営者に読んでもらいたい内容を書きました。
もし「労働条件を変えてくれるなら、もうちょっとこの会社にいてもいいかな」って思った方は、この記事を経営者やマネジャーの人たちにシェアしてみてください。
どんな反応をするかを見極めて、今の会社で引き続き働くのか、それとも転職をするのか決めてもいいでしょう。
あ、転職するならエンジニアtypeさんの提供する情報をぜひ参考にしてくださいね!
自分に嘘をつかない、
無理はしない。
だから、可能性が広がっていく。
マイクロソフトを卒業して、
自分らしく生きる僕が大事にしていること
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