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ITコミュニティの歴史から学ぶIT業界~北海道編~を開催しました【法林浩之】

ITニュース

    法林浩之@jusがお届け!

    UNIXエンジニア温故知新

    UNIXが生まれてから半世紀。脈々とソフトウエアの進化を支えてきた技術は、どのようにして今に至るのか? そこから学べるものとは? 日本UNIXユーザ会「jus」の法林浩之さんが、イベントレポートを中心に「UNIXの今」をお届けします!

    今回は、2022年6月に行った研究会の模様をお伝えします。レポートはjus幹事の古川菜摘さんに書いていただきました。

    jus研究会札幌大会報告

    タイトル:平成生まれのためのITコミュニティ歴史講座
    講師:小岩秀和(LOCAL)、法林浩之(日本UNIXユーザ会)、古川菜摘(日本UNIXユーザ会)
    日時:2022年6月25日(土) 16:00-16:45
    会場:オンライン
    報告者:古川菜摘

    ITコミュニティの歴史に特化した講座を開催

    jusでは「平成生まれのためのUNIX&IT歴史講座」と題して、会報「/etc/wall」の内容をもとに当時の活動やIT業界の状況を説明するセッションを実施しています。

    今回はその特別編で、ITコミュニティの歴史に特化した「ITコミュニティ歴史講座」を開催しました。

    今回はオープンソースカンファレンス2022 Online/Hokkaido 内での開催ということもあり、ゲストに北海道のITコミュニティ、一般社団法人LOCALの小岩秀和さんをお招きし、小岩さんのITコミュニティでの活動についてお聞きしました。

    ITコミュニティの夜明け~北海道編~

    1998年、当時Linuxのユーザークラブが各地で誕生していた流れで、北海道にも北海道Linuxユーザーズクラブ(hlug)が設立されました。

    その後『DoLUC』に名称変更し(由来は「道楽者」だそうです)、MLやIRCでの情報交換や勉強会運営などを中心に活動していきました。

    DoLUCはたまたまIT業界外のメンバーが多かったそうで、LinuxがIT業界という枠を超えて注目を集めていたことが窺えます。

    2000年9月には道内初のOSSイベント、LLH(Let’s Linux in Hokkaido)が開催されました。現在のOSCと似たようなセミナー形式のイベントで、当時は新しい技術であったSSHを取り上げたセミナーなどがあったそうです。

    翌年には第2回が開催され、国内2例目となるライトニングトークが行われました(ちなみに国内1例目はjus関連のイベント)。

    また、会場に参加者向けのインターネット接続環境が準備されました。当時は無線LANに対応していない端末も多くあったため、有線LANケーブルも準備していたそうです。

    04年には道内のOSSコミュニティによりGODo2004というイベントが開催され、のちのOSC北海道に発展していきました。

    一般社団法人LOCALの誕生

    DoLUCの特徴として、行政との結びつきが比較的強かったことが挙げられます。

    セキュリティセミナー、社会人学び直し事業、仮想化ハンズオンセミナーなど市や学校と共同で行ったイベントも多数ありました。

    そのような活動を続けるなかで法人格があった方がスムーズな場面が多くあり、08年に任意団体としてLOCALが発足しました。

    翌年09年には、一般社団法人に関する法律が整備されたタイミングで、一般社団法人としてあらためてスタート。

    小岩さんからは、当初はNPO法人を目指していたものの行政の窓口で「もう少ししたら法整備される一般社団法人の方がいい」と言われたため一般社団法人を選んだという裏話が語られました。

    ここで他コミュニティにないLOCALの特徴的な活動を紹介します。

    LOCALでは、学生向けのイベント交通費支援を行っています。広大な北海道では移動に多くの費用がかかるため、学生にとっては非常に嬉しい支援ですね。また、LOCALには学生部という組織があり、学生が元気に活動しているのも特徴的です。

    カンファレンスネットワークの歴史

    小岩さんは20年以上、さまざまなイベントでカンファレンスネットワークに関わられてきました。ITイベント以外でも、プライベートでクラブイベントの配信に関わっているそうです。

    今まで参加された中でも一番大きなイベントは「RubyKaigi」で、11年から数年間にわたってネットワークの設計、構築、運用を担当されました。参加者が非常に多い上に一人が複数の端末で同時に接続するため、最大接続数は1000を超えていたようです。

    当初は同時接続に耐えうるネットワークの運用にあたって、機器の性能が需要に対して十分でなく、NATを自作するといったさまざまな工夫を行っていました。

    近年は機器の性能が上がったことに加え、無線LAN需要の高まりにより、カンファレンス向けの専門業者が登場したり会場備え付けの無線LAN環境の整備が進んだりしました。

    それによりコミュニティがカンファレンスネットワークに関する作業を全て担当しなくてもよくなりました。

    ちなみに小岩さんは電気工事士の資格をお持ちで、配電盤から配線するといった物理的な作業もされていたそうです。

    おわりに

    今回はLOCALのお話に加え、小岩さんがカンファレンスネットワークを長年担当されていたこともあり、カンファレンスネットワークにまつわる話題が多数飛び出した回となりました。

    ネットワーク歴史講座という回を開催しても面白いかもしれないですね。

    恒例の「平成生まれに一言」の質問では、物怖じせずにちゃんとやりたいことを言ってほしい、とのコメントをいただきました。

    長年ITコミュニティで、物理的なネットワークから人と人とのネットワークまで「場」を作ることに貢献されてきた小岩さんの、優しいお人柄が窺えるコメントでした。

    新型コロナウイルス感染症が猛威を奮い始めてから早3年、対面のイベントも少なくなって久しいですが、ITコミュニティの火を絶やさないようjusも精一杯活動していきたいです。

    プロフィール画像

    法林浩之さん(@hourin

    大阪大学大学院修士課程修了後、1992年、ソニーに入社。社内ネットワークの管理などを担当。同時に、日本UNIX ユーザ会の中心メンバーとして勉強会・イベントの運営に携わった。ソニー退社後、インターネット総合研究所を経て、2008年に独立。現在は、フリーランスエンジニアとしての活動と並行して、多彩なITイベントの企画・運営も行っている

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