【マネジャー必見】会議参加者の多様な意見を引き出す&発展させる「おかえし言葉」とは?
会議を開いても、なかなかいいアイデアが集まらない。新人メンバーにフレッシュな意見を出してほしいのにずっとだんまり状態で、結果的にマネジャーばかりが話してしまう。そんな会議に頭を抱えているエンジニアもいるのでは?
そんな人にぜひ意識してほしいのが、「心理的安全性」のある会議の場づくり。誰もが安心して意見を出せる、会話が弾む、そんな会議をつくるための声掛けのポイントとは?
心理的安全性を軸にした組織づくりの実践家、原田将嗣さんの著書『最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55』(飛鳥新社)から一部内容を抜粋して紹介したい。
意見がバラバラなときは「組み合わせ」の案をヒアリング
心理的安全性、特に「話しやすさ」因子が高まりすぎると「まとまらないのでは?」と懸念をもたれる管理職の方もいらっしゃいます。
こんなとき、「シナジー」という考え方を頭に入れておくと、うまくいきやすいです。
「シナジー(Synergy)」とは日本語にすると「相乗効果」のこと。ふたつ以上のもの、人、事柄などが相互に作用し合い、効果や機能を高めることを表します。
職場で言えば、複数のメンバーが視点や意見を出し合い、それを組み合わせることで、ひとりだけで考えたときよりも、大きな付加価値や成果を生み出すことを指します。
もちろん、リーダーが決めたことを「こうしろ!」と周知徹底したほうが、リーダー側のコミュニケーションとしてはラクかもしれません。
けれどもリーダーですら、どうしたらいいかよくわからないことはたくさんあります。
特に重要な方針や意思決定、今後長期間にわたって影響がありそうなことは、チームみんなの視点や意見を出し合って「相乗効果(シナジー)」を目指したほうが、中長期では大きなメリットがあります。
三角形をふたつ並べた図を使って、シナジーについて説明します。
チームにAさんとBさんがいたとします。このふたりの考えで共通する部分は、下図の「共通点」(=三角形で重なり合うところ)で見れば、わずかです。
けれども、ふたりの意見を組み合わせて、建設的な議論を重ねると、互いの「違い」が明らかになりつつも、それらの「違いを生かした新しいアイデア」が生まれてくることがあります。
ふたりの視点があったからこそ、はじめて生まれるアイデアが図左側の「化学反応」です。
このようにシナジーが発揮できると、片方の意見を押しつけるのではなく、大きく広がった三角形全体の中から、最も適切なアイデアを選ぶことができます。
「たくさん意見が出たところで、組み合わせたらうまくいきそうな意見ってあるかな? 」のような声掛けが役に立つでしょう。
一方で、この「三角形のたとえ話」をすると、「まったく想像していなかった意見が出てしまうのでは?」という質問をいただくことがあります。
たしかにその通りで、異なる意見が衝突し化学反応を起こすと、「予期せぬところに話が着地する」、要は「想定外の案が出てくる」ことも珍しくありません。
「しっかり根回し」と逆の発想ですので伝統的な日本企業では敬遠されがちですが、実はこれこそが変化の激しい時代に求められる「会議」のスタイルであり、理想であり、醍醐味でもあるのです。
「最初から決定している結論」に向かって進行できるものは、メールなどで決定事項を周知すればいいのです。
「会議」を「自分ひとりでは導き出せない結論を得るための場」と捉え、混乱や衝突、想定外も楽しんで進めることが大事です。
なお、「シナジー」の反対語は「アナジー」(Anergy)といい、「ふたつの要素を組み合わせた結果、価値が下がること」を指します。
単に「共通点」に着地させたり、双方の意見をすべて取り入れて「どれを押したらいいかわからないテレビリモコン」のような妥協点に陥ってしまったりすることです。
「アナジー」でなく「シナジー」を目指していきましょう。
相手の発言の意図がわからないときは「理解したい」と伝えよう
誰もが意見を言い合える心理的安全性の高いチームでは、時に意見の衝突が起こります。
議論が白熱すると「意味がわからない」とか「君はわかってないな……」などと言いたくなることもあるでしょう。
しかし、このような発言は会議を険悪な雰囲気にし、「話しやすさ」因子を下げてしまうだけ。そこから議論が発展したり、いいアイデアを思いつく未来はあまり見えてこないですよね。
「意味がわからない」と単に否定するスタンスではなく、相手の意見の背景まで、踏み込んで聞くことが、価値あるゴールに向かって健全に意見を衝突させるために有効でしょう。
この例では「意見を言う」のように、相手がなにか行動をしてくれた時、それを受け止める言葉を「おかえし言葉」と呼んでいます。
多くのリーダーは「これやっておいてね」などと、行動の「きっかけ」はよく作ろうとするのですが、行動してくれた後の「おかえし」は不十分なことも多いのです。
このような白熱した議論の際に使っていきたい「おかえし言葉」が「理解したいから聞くんだけど、もうちょっと教えてくれないかな?」です。
ポイントは「理解したい」と伝え、相手が自分なりの意見を言いやすくすることです。
同じ機能を持った言葉には他にも、「お客さまだと思って説明してもらえますか?」「その分野の素人だと思って説明してみてもらえますか?」などがあります。
はじめは「まとはずれ」とか「突飛な意見だな」と思えるものでも、その意見が出てきている背景や着眼点、思考のプロセスなどが共有されることで、その背景を踏まえたアイデアが出てくることもあるでしょう。
なぜ意見の対立を怖がってしまうのか
心理的安全性がない状態では、なぜ意見の衝突を怖く感じてしまうのでしょうか。
それは「意見の対立」がそのまま「人間関係の対立」となってしまうから。たとえ業務上の意見が食い違っただけでも、当事者間ではつい「コトよりヒト」に目が向いてしまい、人間関係にまで影響してしまう傾向があるのです。
その結果、「○○さんにひどい指摘をされた」「○○さんと私はソリが合わない」「○○さんは、きっと私のことを嫌っていると思う」といった考えや感情が湧き、人間関係が修復不可能に……。
そんな事例は枚挙にいとまがありません。あなたももしかすると、そんなケースを見聞きしたり、当事者になってしまったことがあるのではないでしょうか?
そうしたいさかいは、もちろん組織やチームにとって、望ましいものではありません。しかし、人間関係の対立を過度に恐れ、意見の衝突を避け続けることも、仕事を進めるうえでは問題です。
例えば上司の方針の致命的な問題に気づいていても「いいと思います……」と答えるといったように、「問題に気づいている人がいるのに、言えなくなる」ことは、時に大きなトラブルや不祥事につながるような重要課題。
ですから、「トラブル防止や業績向上のため、意見を自由に衝突させることができる」けれども、それが「人間関係の対立に発展するわけではない」という、心理的安全性が担保されシナジーを生むような衝突、いわば「健全な意見の衝突」が重要なのです。
「健全な意見の衝突」は、チームの成長に欠かせない
健全な衝突とは、価値あるゴールに向かって、多様な意見が出尽くしている状態を指します。
私たちのチームの会議でも、発言をしていないメンバーに意図的に話を振っていきます。
もし「ちょっとズレているかも?」と思う意見があっても「理解したいから聞くんだけど、もうちょっと教えてくれないかな?」とこの言葉を使ってみると、たくさんの人の意見を引き出しやすくなります。
この「おかえし言葉」に加えて、均等な発言量を目指したり、比較的経験の浅いメンバーから順に意見を聞いていくと、発言が出やすくなるでしょう。
書籍情報
『最高のチームはみんな使っている 心理的安全性をつくる言葉55』(飛鳥新社)
いつものひと言を変えることで……会話が増える、チャレンジが始まる、チームが変わる!心理的安全性のある職場づくりに役立つ言葉の言い換えを具体的な事例とともに紹介。
>>詳細を見る
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