DAO(分散型自律組織)
中央管理者をもたず構成員によって自律的に運営される組織形態
DeFi(分散型金融)
既存の金融機関などを介することなく、ブロックチェーンを使って各種金融サービスを実現しようする非中央集権的な金融の仕組み
トラストレス
信用を担保している中央集権的な主体がないこと。単一のサーバーやデータベース に依存せず、多数の参加者がネットワーク上の取り引きを検証、承認する仕組み
NFT(非代替性トークン)
唯一無二であると証明されたデジタルデータ。ブロックチェーン上で取り引きされる
Thirdverse CEO・國光宏尚「Web3も、クラウドやスマホと同じ道をたどる。それでも君は傍観者でいるの?」
昨今、国内で巻き起こっているWeb3狂騒曲を横目に眺めつつ、Web3へのスタンスを決めかねているエンジニアも多いのではないだろうか。
イノベーションは常に摩擦と隣り合わせだ。Web3もまた、巨大な可能性を秘めながらも、現状は参入障壁やリスクもあると言わざるを得ないのが現状。
そして、そんなWeb3の世界で国内のビジネスをリードしてきたのが『メタバース上にサードプレイスを創る』をビジョンに掲げるThirdverseだ。
同社はメタバースやWeb3がバズワードになるずっと前からその可能性に着目し、世界を変える技術だとして疑わずに歩んできた。
いま、Web3に飛び込むのか、はたまた静観するのか。判断に迷ったとき、エンジニアはどう解釈していくべきか。Thirdverse およびフィナンシェ 代表取締役CEOの國光宏尚さんに聞いた。
スマホもクラウドもSNSも……新技術への批判は「もはや宿命」
——Web3への関心が高まる一方で、批判や疑問の声も上がっています。かねてよりWeb3に期待をかけ、開発に携わってこられた國光さんは現状をどう見ていますか。
今のWeb3への反発や懐疑心は、充分に予想の範囲内です。
歴史を振り返ってみれば、クラウドやスマホが出てきたときだって「こんな使いにくいものが流行るわけがない」という意見は多々ありました。
特にクラウドへの批判は記憶に新しい。初期のクラウドは事実として安定していなかったこともあって、「こんな技術をインフラに使うのはありえない」と考える人も多かったのです。おそらくは、電気や自動車が登場した時にも同じような批判はあったでしょう。
しかし結果はどうでしょう? “安定性”という弱点を乗り越えたクラウドは無事に主流の座を奪い、スマホはどんどん普及してメジャーになった。
それはなぜか。クラウドやスマホが「必ず社会を変える」と期待し、課題を解決する方法を探ってきた人々がいるからです。
脆弱性やリスクをはらむのは新たな技術の宿命です。しかしそこで立ち止まっていては進歩がない。
課題を「乗り越えるべき壁」と捉え、エンジニアとしての情熱を持って飛び込む人がいてもいいはずです。
だからこそ僕たちは、Web3やメタバースがバズワードになるずっと前から「Web3こそが社会を変える」と確信し、情熱を傾けてきました。
個々の議論への思いはあれど、大枠として「Web3に賭けたい」と感じたからこそ、飛び込む判断をしたわけです。
——業界の外からWeb3談義を垣間見ていると、どうも議論が錯綜しているように見えてしまいます。
Web3に関する議論がややこしいのは、「イデオロギーとしてのWeb3」と「技術としてのWeb3」が切り分けられていないためだと感じます。
まず、「イデオロギーとしてのWeb3」とは、ビッグテック(巨大IT企業)に支配されない自由なインターネットを取り戻そうという思想のことです。
今やビッグテックは経済活動だけでなく、国政にも影響を及ぼすほどの力を持ってしまいました。
例えば、Twitterはトランプ元大統領のツイートを不適切であると判断し、アカウントを停止しました。トランプ氏個人への賛否はわきへ置き、「いち民間企業が大統領(当時)の公式アカウントを差し止めた」事実だけをフラットに見れば、恐ろしいことが起こってしまったのだと理解できるでしょう。
今やSNSをはじめとしたデジタルツールは社会のインフラです。それなのに、民間企業の胸先三寸で「あなたは社会から排除します」と決められてしまう。
Web3を思想として支持している人は、こうした構造を問題視し、非中央集権的なインターネットを取り戻そうと考えています。DAOやDeFi(※)も、根幹にあるのはこの思想です。
それに対して、「技術としてのWeb3」を語るには三つのキーワードを押さえておく必要があります。
すなわち、トラストレスで自律的に動くdecentralizedなネットワーク、NFT、DAO(※)です。詳しい説明は割愛するとして、どれも特定の権威者(政府や銀行、そのほか信用機関など)を置かず、システムによって信頼性を担保しようとしているところが特徴です。そして、一部はすでに社会実装されはじめています。
説明が長くなってしまいましたが、Web3の議論はこのような前提を踏まえてなされるべきです。
最近では詐欺行為などが横行し、負の側面に注目が集まっていることは否定しません。
しかしWeb3のような思想が出てくること自体に不思議はないし、技術自体は可能性にあふれているはず。そこをフラットに見てもらえたらと思いますね。
BtoBエンジニアには無関係?「いいえ、違います」
——Web3の大枠は理解できましたが、テクノロジーとしての社会実装がどこまで進んでいるのか、そして今後進み得るのかが知りたいです。
イノベーティブな技術が世の中に浸透していく流れは昔から変わらず、決まっています。まずはプロトコル(通信ルール)ができ、それを取りまとめるプラットフォームが誕生する。
プラットフォームが整ってくると、サービス、アプリケーションが乗っかり始めるといった具合です。
そして、サービス、アプリケーションが浸透する順番もだいたい決まっている。最初に飛びつくのはゲーム業界です。新しいもの好きのクリエーターとITリテラシーの高いゲーマーが一緒になって、可能性を模索していくんですね。
こうしてユースケースが溜まり、キャズムを超えると音楽や映像など広義のエンタメやコミュニケーションサービスがやってくる。
その後、eコマースやフィンテックが立ち上がり参入して、ビジネスの土台となる経済圏が形成される。
そして、BtoB SaaSなんかも生まれて、おそるおそるアカデミック(学術界)が加わる。最後にガバメント(政府)が参加して、イノベーションは終焉を迎えます。
Web3やメタバースに関して言えば、発展途上ながらもプラットフォームが誕生し、サービス、アプリケーションが出てきたかな、くらいの段階。
ゲームの中にもいくつか有名どころが出てきて、これから盛り上がっていくのを感じています。
今はキャズムを超える前の、最も面白いタイミング。キラーコンテンツが現れれば、一気にマーケットが大きくなり、それを狙った事業者が参入してくるはずです。
この成長曲線を体感できるのは今だけ。ぜひ傍観者としてでなく、当事者として勢いを感じてほしいですね。
どうせなら「勝ち馬」に乗って汗かこうよ
——Web3領域に参入するには、現時点でどのような知識が必要ですか?
まずはWeb3領域で登場する基本的な要素に対する知識でしょうか。例を挙げるとブロックチェーン、仮想通貨、スマートコントラクトなどですね。これらを概念的にでも「こういうものなんだ」と知っているだけでも大きいです。
技術面で言うならWeb3の技術の中で最もポピュラーなのは、スマートコントラクトの記述言語であるSolidityでしょうか。
それから、UnityやUnrealEngine、Blenderといった3D制作プラットフォームへの知識。メタバース空間では、Web2.0とは比べものにならないほどの3Dコンテンツが必要になりますから。
これらに加えて、英語が話せれば言うことなし。円安の影響も考慮すると、海外であれば提示年収が1500万円以上の募集も多数見かけます。
仮に語学が不得手でも、Web2.0向けの開発よりは高めの報酬が期待できるはずです。
Web3と言っても、(スマートコントラクト以外)プロダクト開発に限って言えばWeb2.0のプロダクトと同じ技術での開発です。自分がエンジニアだったら、Web2.0等で積み上げた基礎技術をそのまま使いながらWeb3特有の経験もでき、さらに年収アップも期待できる、とても魅力的な機会だと感じると思います。
——「イノベーションがどこまで進むか読めない以上、参入するのはもう少し待ってから」とためらう人もいるのでは。
エンジニアのキャリアについて考えるなら、結局のところ、「いつ参入するか」の判断に帰結します。
アーリーアダプターとして早期に参入するのか、レイトマジョリティーと言われようが、納得がいくまで慎重に見極めるのか。
もちろんそれは自由ですが、「収入」という分かりやすい指標を掲げるならば、早期に参入する方が圧倒的におすすめです。
エンジニアの給料を含め、経済は需要と供給で成り立つもの。イノベーション早期は「需要はあるが、エンジニアの供給が極端に少ない」状況になりがちなので、市場価値はおのずと高くなります。
事実、スマホの黎明期にアプリ開発者になった人々はかなりの高収入を得たはずです。これは、一つの判断材料になるでしょう。
——高い収入は魅力であるものの、やはり不安な気持ちが残ります。
不安な気持ちが生まれるのは、キャリア形成を会社にゆだねているからです。
日本には職業選択の自由があるのだから、自分が会社に貢献するだけでなく、会社が自分に与えてくれるものを冷静に見極めればいい。
それこそ、ブラックなSIerで疲弊するくらいなら、Web3の領域で汗をかくほうがよほど未来につながるはず。いつの時代も、「勝ち馬に乗る」はキャリア戦略の基本ですから。
>>>Thirdverseにご興味のある方はぜひ採用HPもご覧ください
https://www.thirdverse.io/ja/careers.html
文/夏野かおる、撮影/桑原美樹、取材・編集/玉城智子(編集部)
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